日本オラクルは、「ボーダレス時代の金融機関の新たな企業価値 - 質的向上と競争力の強化」をテーマに、金融業界向のセミナー「金融サミット」を開催、提携による再編、国際化による外資系や異業種からの新規参入など、激動が続いている金融機関の情報システムがいま直面している課題や、同社が提案するそれらの打開策などについて解説した。米Oracle フィナンシャルサービス・グローバル・ビジネスユニット グループ・バイス・プレジデントのドン・ルッソ氏は「金融機関における質的向上と競争力の強化 - オラクルの金融業界向けグローバル戦略」と題し、講演した。
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米Oracle フィナンシャルサービス・グローバル・ビジネスユニット グループ・バイス・プレジデントのドン・ルッソ氏 |
米Oracleでは、2007年6月に金融機関専門のビジネスユニットを発足させた。米ニューヨーク市に本部が置かれ、1万2,000人の従業員が勤務している。8,500社の顧客を持ち、金融機関のフロントオフィス業務での同社ユーザーは100万に上る。グローバル銀行、保険会社、証券会社のそれぞれトップ10社、投資信託会社、国際証券取引所のトップ5のうち4社がOracleアプリケーションを採用しているという。
米Oracleの子会社であるi-flex solutionsは、金融サービスソリューションのプロバイダーで、 同社の金融サービス業界についての専門知識や実績、経験を活かしたバンキングプロセスのリポジトリ「i-flex Process Framework for Banking(iPFB)」を擁している。「125カ国、750行以上の顧客を持ち、250種類以上のライブラリのある安定した技術」(ルッソ氏)であるという。またリテール、消費者、法人、投資、インターネットを使用したものも含め多様な銀行業、資産管理、投資家サービスのための総合的なバンキング製品スイート「FLEXCUBE」も用意している。
ルッソ氏は「金融業は膨大なデータを扱い、最も複雑なレポートを必要とする。まずこの業界向けのシステムを構築しておけば、他の分野にも適用できる。顧客が成功するよう支援し、より競争力が増すようにしていきたい。単にソフトウェアを販売するというだけでなく、ビジネスプロセスの統合を進め(標準に準拠した、多様な分野の最適な製品を組み合わせる)Best of Breedのソリューションを提供する」と話す。
同社の金融機関向け戦略は、顧客との緊密な関係、競争力を確立するための差別化サービス、コスト効率性の向上、法令順守/規制への対応、危機管理の4つを基礎的要件と捉えている。これらに立脚したソリューションは、プロセス主導の基盤を軸に導入、運用のコストを低減化するとともに円滑な相互運用を実現。規制を含め、市場環境の高速な変化に迅速に対応することが求められる。ルッソ氏は「これらの実現のためにはすべてビジネスプロセスを統合化することが重要になる」と指摘、その鍵となるのはSOAだとする。
同社のSOAの中核となるのは「Oracle Application Integration Architecture(AIA)」だといえる。AIAは基本的に開発フレームワークであり、さまざまなサービスを連携させ、統合的な運用ができるようにする。同社はi-flex、Oracle E-Business Suite、Siebel、PeopleSoftの機能を組み合わせ、銀行が管理部門から営業部門に至るまでのビジネスを効率化し、パフォーマンスを最適化することを図っている。たとえば「FLEXCUBE」による口座開設機能などは、AIAで事前定義される。AIA具現化の手段としては、複数アプリケーションを接続するためのデータ連携、アプリケーション固有のメッセージと共通オブジェクトのメッセージの相互変換などができる「PIP(Process Integration Packs: プロセス統合パック)」があるが、「PIPで顧客が個別開発した資産との統合も可能」(同氏)となる。
財務会計、分析の点では、以下のような機能を重要な要素と考えている。
- 主要な取引情報や参照情報の詳細を保管する会計情報アーキテクチャにより、これらの情報を財務レポートのために複数の切り口で集約する。
- 取引データへのリアルタイムでのアクセスを実現する顧客行動検出エンジンで、部門にかかわらず現実の情報に基づいた顧客ベースの決定を下すことを可能にする。
- 企業の危機要因、リアルタイムの経営実績、法令順守状況の監視、管理、あるいは検知を目的とする共通サービスとは別の集約/分析エンジン。
同社は「より包括的な企業の合併・買収」を推進したことにより、BI、ERP、CRMをはじめ、幅広い分野にわたる業務アプリケーション、システムを入手し、製品体系を整えてきた。これによりBIダッシュボード、分析サーバ、収益性/リスク・エンジンなどを同社の基幹であるデータベースと有機的に結びつけて、把握することができるようになっている。ルッソ氏は「企業全体で収益性、パフォーマンス、リスク管理、法令順守、これらの4つを1つの共通ビューでみることが可能だ」と述べるとともに、「プロセス主導のかたちで、オープンスタンダードに準拠した技術を利用して、パートナーといっしょになって進んでいきたい」と強調した。