日本オラクル 常務執行役員 製品戦略統括本部長 三澤智光氏

日本オラクルは5日、エンタープライズアプリケーション管理システムの最新版「Oracle Enterprise Manager 10g Release 4」の提供を開始した。今回行われた機能追加/強化のポイントは「"トップダウン"アプローチの強化」「Javaアプリケーションの詳細診断」「Oracle Enterprise Linuxのパッチ管理自動化」の3つ。同社常務執行役員 製品戦略統括本部長 三澤智光氏は「単なるDB管理ツールとは異なる、OS、ミドルウェアからアプリケーションまで提供できるオラクルならではの製品。現時点でこれだけの機能をこの価格(37万5,000円/1プロセッサ)で提供できるベンダはほかにない」と自信を見せる。

三澤氏は、「現在、企業が投資するITコストのうち、8割が運用コストで、設計や開発にかかる分は残り2割と言われている。この8割のコストを7割、6割…と下げていけば、企業はより戦略的なIT投資が可能になる」と現状を分析、Enterprise Manager 10gR4はその運用コストを「システムのライフサイクルを自動化/効率化」することで大幅に下げることが可能だという。

では「システムのライフサイクルを自動化/効率化」するために強化された3つのポイントについて見てみよう。

"トップダウン"アプローチの強化

ボトムアップ型の管理ツールや、製品ごとにばらばらの管理ツールの場合、問題が発生しやすいソフトウェアレイヤを一貫して管理することが難しいと言われる。障害原因の特定にも時間がかかり、個人のスキルや経験に頼ったメンテナンスから脱却しにくい。これは「もともとメインフレームに適用していた管理システムをオープンシステムに無理に合わせようと」(三澤氏)することから起きるという。

これに対しEnterprise Manager 10gR4は、アプリケーション→ミドルウェア→データベース→OSと、上位レイヤから下位に(トップダウンで)辿っていきながら障害原因を特定/自動分析する機能をもつ。10g Release 3までは、対象アプリケーションが「E-Business Suite 11i/12i」「Siebel CRM 7.8以降」だったが、今回より新たに「Oracle Business Intelligence Enterprise Edition」「Oracle Forms 6i」が加わった。

トップダウン型のメリットはレイヤを横断しながら問題診断を自動化できる点と、それによる安定したシステム稼働、運用コスト削減にある。同社は今後、Enterprise Managerにおいて「システムの検証や障害対応の自動化も図りたい」(三澤氏)としている。

BI環境が対象アプリケーションに加わったことが本製品の最大の強化ポイント

問題発生のアラートが出てから、原因特定/分析まで、あっという間

Javaアプリケーションの詳細診断(Oracle Application Diagnostics for Java)

Enterprise Manager 10gR4では、JVM上でメモリリークやパフォーマンス低下を招いているJavaオブジェクトや、データベースとJavaにまたがるボトルネックなど、Javaアプリケーションの障害原因を自動分析→特定が可能になっている。前バージョンではアプリケーションサーバレベルまでしか分析できなかったが、深い階層構造にあるオブジェクトレベルまで分析できるようになったため、顧客サイドにおいて問題の原因特定までが可能になった。また、Oracle Application Serverのほか、WeblogicやWebSphere、JBoss、Tomcatなどの他社アプリケーションサーバもサポートする。

オブジェクトレベルでトラブルの原因を自動で突き止められる

Oracle Enterprise Linuxのパッチ管理自動化

前バージョンまでは、Oracle Application ServerおよびOracle Databaseに対してパッチ適用の自動化がなされていたが、今回よりOracle Enterprise Linuxへもパッチ管理自動化が適用された。これにより、ミドルウェア、データベース、OSにわたってパッチ適用が自動化されることになり、パッチ適用工数を大幅に減らすことが可能になった。

なお、Oracle Unbreakable Linuxサポートサービスの契約ユーザは同機能を無償で利用できる。

価格は1プロセッサあたり37万5,000円から、5日現在、対象プラットフォームはLinuxおよびWindows(32ビット)で、今後徐々に対象を増やしていく予定だという。またSAPやMS Exchange Serverなどにも対応する。

OSからアプリケーションまで、ソフトウェアレイヤすべてにかかわるソリューションを一貫して提供できるところにオラクルの強みがある。Enterprise Manager 10gR4でもそのメリットを生かし、「システムの安定稼働と運用コスト削減」を両立させる製品として、統合管理ツールの市場においてさらなるシェア拡大を狙いたいところだ。