BitTorrentは22日、都内のホテルを会場に「BitTorrent Conference 2007」を開催した。
BitTorrent代表取締役社長 脇山弘敏氏 |
まず挨拶を行なった日本法人の代表取締役社長 脇山弘敏氏は、日本法人であるBitTorrent株式会社の設立発表が約1カ月前の9月25日に行なわれたばかりということもあって、日本国内での同カンファレンスは初のことだが、実は全世界でもまだ開催されたことはなく、これが世界で初めての開催となったと紹介した。
米ハリウッドとも提携する「BitTorrent」
米BitTorrent President and Co-founder Ashwin Navin氏 |
続いて米BitTorrentの共同設立者兼PresidentのAshwin Navin氏が、同社のビジネスと技術の概要を紹介した。同氏は特に日本市場の特徴が同社のビジネスに有利な面を備えていることを強調した。たとえば、ブロードバンド環境が整備されている点や、日本のユーザーがエンターテイメント用途などにも広くインターネットを活用している点などだ。日本市場をよく研究していることは、「Winny」に関して繰り返し言及されたことからも窺える。同氏は「18カ月前に生じた課題であるP2P技術の濫用に対する懸念はまだ市場に残っているが、一方でBitTorrentには大きなチャンスがある」とし、技術面での匿名性の確保を強く打ち出したWinnyとは異なり、BitTorrentでは集中化されたインフラに基づき、説明責任を果たせる形でサービスが構築されているとした。この一例として、米国ではハリウッドの映画会社を含む55社のメディア企業とパートナーシップを結んでコンテンツ配信を行なっているという実績を紹介し、P2Pに対する「不正コピーの温床」というイメージがBitTorrentには当てはまらないことを強く訴えた。
日本市場でのコンテンツ配信サービスに期待
続いて登壇した米BitTorrentのChief Scientistでオリジナルの「BitTorrent」の開発者でもあるBram Cohen氏は、同氏がBitTorrentプロトコルを開発した背景などを語った。
米BitTorrent Chief Scientist and Co-founder Bram Cohen氏 |
同氏は、BitTorrentで実装したP2P技術を「必ずしもユニークなものではなかった」としつつも、インターネット上で個々の端末(Peer)の接続部分の帯域は有効に活用されていないことと、Peerの信頼性が低いことを踏まえ、問題点を回避しつつ帯域を有効に活用するための手法としてBitTorrentプロトコルを開発し、効率よくPeerを管理することに成功したという。プロトコルが完成したのは2002年末で、2003年にはトラフィックが目立って増えるなどの成功を収めたが、一方で著作権違反のコンテンツの不正配布に利用されるなどの「居心地の悪い思い」もしたという。
同氏は、不正コンテンツ流通に対しては「賢くないこと」としたが、一方で不正流通のためのツールというイメージがあったため、ハリウッド等から信頼されるまでにはかなりの苦労があったとも語った。また、同氏は日本の環境について、ブロードバンド環境が米国以上に普及していることでPeerの接続帯域幅に余裕があり、広帯域を安価で利用できる点と、コンテンツ・ホルダーが自社で配信を手がけようとした場合、負荷分散のためにデータセンターを複数拠点に設置するための「コロケーション・コスト」は米国より高いとの分析を示した。BitTorrentはPeerの帯域を活用することによってCDN(Contents Delivery Network)的なサービスを低コストで提供でき、市場のポテンシャルとしては米国以上に期待できるというのが同氏の見解だ。