ブラザー工業は19日、グリッド技術を応用したBtoB向け次世代コンテンツ配信システム「Einy(アイニー)」の提供を開始した。サーバの強化や回線増強を行わずに、映像などの大容量コンテンツを多数のユーザーに配信できるようになるという。

「Einy」のロゴ。物理学者アルバート・アインシュタイの名をもとにした造語だという

Einyはふたつのコア技術を持つ。ひとつは、クライアント端末がバケツリレー方式でデータを中継するIPストリーミング放送システム「Einy Broadcast」。各端末をツリー構造で結ぶことで、30段で10億ユーザーの同時視聴を可能にする。負荷が分散されるため高性能サーバは必要なく、低コストでインターネット放送局を開設できるようになる。ネットワーク参加やコンテンツ利用のための認証システムおよびDRM(著作権保護技術)といった、コンテンツセキュリティも整備されている。

もうひとつのコア技術が、複数のコンピュータをネットワーク経由で結ぶグリッド技術を応用したIPオンデマンド配信システム「Einy On-Demand」。配信サーバを用意せずに、各端末間でキャッシュを利用する形で視聴などを可能にする(キャッシュデータは暗号化される)。特定の管理者以外はデータを配信できないため、不特定多数のユーザーによって違法データが放流される心配はない。

IPストリーミング放送システム「Einy Broadcast」のイメージ

IPオンデマンド配信システム「Einy On-Demand」のイメージ

同社はEinyによるニーズに応じた4種類のソリューションを用意。エッジサーバに実装する「Einyエッジ・ソリューション」、Einy対応アプリケーションを提供する「Einyウェブ・ソリューション」、既存デバイスに組み込む「Einyエンベッディド・ソリューション」、Einyサービスを提供する「Einyセンターサービス」を提供する。

本サービスは様々なデータの配信に利用できるが、低コスト化が課題だった映像配信分野での利用が見込まれている。例としては「学習塾での講義映像や社内での研修映像の配信といった利用も考えられる」(同社)。10月2日~6日に開催される「CEATEC JAPAN 2007」では、Einyのデモが行われる予定だ。