新しい技術や製品に対して常に関心を持ち、いち早く試す人を「アーリーアダプター」という。これまで、このアーリーアダプターは市場拡大の鍵とされてきた。しかし韓国のLG経済研究院の発表によると、最近の市場ではこれとは逆の新しい消費者層「スローアダプター」が浮上してきているという。同院によるとスローアダプターは「単純で大衆的な好みを持ち、新しい経験やサービスにも少しずつ関心を見せる」人たちを指す。

LG経済研究院によると、スローアダプターの増加に伴い「激しい競争を勝ち抜く企業の条件も変わってきている」という。優れた技術を採用した製品や、緻密なサービスなどが重視されていた過去に比べ、最近では単純さや気軽さなどが重視されているというのだ。

その一例として挙げられているのが、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「PSP」と任天堂の「ニンテンドーDS」だ。両製品は2004年に販売されたポータブルゲーム機だが、販売台数ではニンテンドーDSの方が好調だ。

これについてLG経済研究院では「DSはPSPに比べ安価で、コンテンツ内容や操作もずっと簡単だ」と述べ「複雑なゲームに頭を痛めるために高価な対価を支払うより、気軽に楽しめるゲームを安く買う方がましと考える、大衆消費者の好みを正確に読み取った任天堂の戦略が功を奏した」と分析する。

このほか「もごもご」「Twitter」といった、気軽で簡単に利用できるマイクロブログの存在も挙げている。韓国ではSNSのCyworldが大流行したが、ここでユーザが利用するミニホームページは見た目に華やかな反面、アバターなどを飾るといった手間もある。その点マイクロブログなら、その時々の気分をさっと書きとめるだけと簡単だ。

これらの成功の秘訣について、LG経済研究院は「既存の製品やサービスが、あまりに複雑でマニア中心のものだったために、距離感を感じていた消費者たちの心理をつかんだ点」と分析する。

確かに精通していない分野の製品が高機能すぎたり、使い方が難しそうだったりすると、果たして使いきれるのか購入前に気後れする経験をした人は少なからずいることだろう。これに加えてLG経済研究院では「大部分の消費者は、新しいことに没入し探求する時間がない」と、時間的な要因も挙げている。難しい製品にお金と時間をかけるより、気軽に楽しめる安価な製品を求めるというわけだ。

高機能な上級者向け、手軽に使える大衆向け、という製品の区分は以前からあったのかもしれないが、最近では「スローアダプター向け」という要素が無視できない状況となってきているようだ。