富士通は、2007年度の経営方針説明会を開催、売上高営業利益率を2009年度に5%(06年度は3.6%)とする、2007-2009年度の新たな中期目標を示した。中核である「テクノロジーソリューション」分野の同利益率を2006年度実績の5.2%を同年度に7%まで伸ばし、全体の牽引車として、現状での強力な部分をさらに増強する。それとともに、海外売上高比率をを36%から40%超に引き上げることを目指す。黒川博昭社長は「2007年度は富士通が変わる年にしていきたい」と語り、この分野の軸となっているサービス事業を「飛躍させたい」としている。

富士通の黒川博昭社長

新中期目標

2006年度の「テクノロジーソリューション」の営業利益は1,636億円で、対前年度比105億円の増だった。内訳はサービスが1,561億円、サーバーなどシステムプラットフォームは75億円で、サービスはSIの利益率が改善、アウトソーシングの拡大が順調であったことなどで同276億円増と大きく前進した。一方、システムプラットフォームは次世代アーキテクチャーの投入が遅れたことと、PCサーバーの「プライムクエストが思ったより伸びなかった」(黒川社長)ことなどで、サーバー事業が苦戦、同170億円の減収となった。

デバイスソリューションは190億円で、同104億円の減だった。同社では「LSIは大手顧客の所要変動への対応が不十分だった。市場の変化、顧客動向に柔軟に対応できる体質強化が課題」としている。ユビキタスプロダクトソリューションは416億円、同68億円の伸長だった。HDD、携帯電話、パソコンで黒字を継続できたことが貢献した。

2004から2006年度までの3年間は、競争の激化による価格低下の波にさらされたが、同社は、不採算事業の分離、コスト抑制策などを講じるとともに、営業部門とシステムエンジニア陣との一体化などの事業態勢の改革を進めた。その結果、サービス事業の営業利益は2004年度の866億円が1,561億円に成長した。ただ、連結営業利益の推移をみると、2004年度は1,601億円、2005年度は1,814億円、2006年度は1,820億円で、営業利益率も2004年度から順に、3.4%、3.8%、3.6%と横ばいだ。

好調なサービスとは対照的に、システムプラットフォームは不振で、この分野の営業利益は2004年度には440億円だったが、2006年度は1/5以下の75億円にまで減少している。デバイスソリューションは同じく、2004年度が290億円であるのに対して、2006年度は190億円に下降している。この2つの部門が同社の大きな課題であるのは明白だ。

それでも、この3年間で「財務体質は良くなった」と黒川社長は評する。営業外損益の推移では、2004年度は711億円の損失、2005年度はこれが554億円、2006年度は348億円と赤字幅は縮小した。また、商品在庫などの棚卸資産残高は2004年度は4,785億円、2005年度は4,087億円、2006年度は4,123億円となっているほか、月当たりの在庫回転数は2004年度が0.71、2005年度は0.88、2006年度は0.93と年々改善、同社は「評価できる」(黒川社長)としている。

04-06年度のセグメント別業績推移

2006年度の業績

2004年度から2006年度までの3年間、同社は顧客からの信頼回復を主眼としてリストラ的な構造改革を避け、業績の悪い部分を改善することを優先した。その結果、同社によれば、営業赤字の子会社数は2003年には31社だったが、2006年には15社にまで減らした。この3年間は、いわば、健康体を取り戻す時期であったのに対し、これからの3年間は「成長とリターンを拡大する」ことに力点が置かれる。

今回の中期方針の重点施策として同社はまず、「システムプラットフォームの健全化」を掲げる。そのためには、製販一体化による商品開発プロセスの革新、商品の絞り込みによるリソースの有効活用、迅速化などにより「強い商品」の開発を目指す。黒川社長は「この3年間では、市場をリードできるような商品が出てこなかった。顧客が喜んで使ってくれるような商品を企画し、他社より半歩先んじるように」と社内に檄を飛ばしている。また、サーバーは種類を現在の1/3に減らす意向だ。

デバイスソリューション分野では、基盤ビジネス能力の拡充による収益力強化、フロントラインの改革による営業力強化、90nm以下の先端技術のビジネス拡大と収益確保を掲げ、2007年度は売上高8,200億円(前年比573億円増)、営業利益300億円(同109億円増)を目標としている。

次に「テレコムビジネスの構造改革」も柱の一つとなる。ここでも製販一体化が図られ、営業部門と通信プロダクト企画/開発機能を統合、この5月に「テレコムビジネスグループ」が発足した。黒川社長は「富士通のテレコムビジネスは、本来(の力)からいえば、こんなものではない」と述べ、「残念ながら、営業と企画が別々に動いていた」ことが負の要因と指摘、「製販一体化で世界を相手にきっちり戦う」と宣言した。

「サービスビジネスの飛躍」では、アウトソーシングビジネスをいっそう拡大させ、2006年度は4,600億円だった売上(国内)を2009年度には6,800億円に伸長させる計画だ。また、コンサルティング能力の強化を進め、「顧客といっしょに業務目線で解決していける」(同)「フィールド・イノベーター」を育成する。これは、営業、経理、マーケティング、調達などの部課長級の人材を教育し、「ITのごりごりの技術」よりは「フィ-ルドを観察して問題を抽出する能力」を養成するもので、「まず400人、さらに増やす」(同)方針だ。

一方、ユビキタスプロダクトソリューションでは、HDD事業は高品質ブランド維持による既存ビジネスの拡大、ヘッド・媒体における新技術での競争力確保、エンタテインメントなど非PC市場の拡大を図る。PC事業は、海外市場の拡大、PCと携帯電話の融合を見据えた商品開発の推進、高付加価値製品での収益確保と低価格によるボリューム確保などを挙げる。携帯電話事業では、無線テクノロジー優位性の追求、プラットフォーム共通化でコスト競争力を向上させる――などの策を考えている。