NECは、中堅企業向けERPソリューション「EXPLANNER(エクスプランナー)シリーズ」の販売をいっそう拡大することを図り、営業力、支援面など事業体制を強化、パートナーとの協業もさらに進展させるとともに、新たな商品を追加した。今回の施策で同社は、国内だけでなく、近年の需要が旺盛で、高い成長が見込まれる中国市場にも重点を置く方針で、市場の潜在力が大きい中堅向けERPの掘り起こしを進め、2007年度は300億円の売上を目標としており、2009年度までの3年間では1,200億円を目指す。

国内の営業体制強化の点では、この4月に組織改変しているグループ企業のNECネクサソリューションズで、100人規模のEXPLANNER営業・サポート体制を確立、さらには、日本コンピューター・システムに50人規模のEXPLANNERサポート体制を新たに整え、EXPLANNERを扱う60社以上の販売店がシステム構築する場合に、ノウハウを提供するほか、SIを支援し、顧客がEXPLANNERを早期導入しやすい土壌をつくり、システム品質の向上も実現させる。

中国では、製造業顧客を中心とする事業強化に向け、パートナー企業との協業や現地法人の体制を増強、NECソフトの中国開発拠点であるNEC軟件(済南)有限公司が新たにEXPLANNERの一部開発を担う。同社では今後、この拠点を、アジア圏全体を視野に入れたEXPLANNER開発の中核に発展させる考えであり、さらに拡充していく方針だ。サポートの点では、中国でのSI事業で実績のある神戸ウェーブと協業、上海や天津などを拠点に、日本企業の中国拠点や現地企業のEXPLANNER導入のシステム構築や運用を支援する意向で、100名体制で開始し、順次拡大する。

新たに加える製品は以下の通り。

「プロセスパフォーマンスモニタリングサービス」は、EXPLANNERにより収集される各種業務プロセス上の実績データを統合し、リードタイムなどを評価、分析、それを基に今後の業務改善提案を行う。IDSシェアー・ジャパンのBPM製品「ARIS (Architecture of Integrated Information System アリス)」とEXPLANNERを連携させる。

「EXPLANNER/BM」は、原価低減や研究開発など企業内の各種プロジェクト活動をTOC/CCPM(Theory of Constraints; 制約理論 Critical Chain Project Managemen; クリティカルチェーンプロジェクト管理)の手法を取り入れた、「プロジェクトバッファーコントロール」により、プロジェクト期間の大幅な短縮を目指す。TOCは制約条件――企業活動の中で最も弱い部分に着目し、そこを集中的に強化・改善することにより、労力の最小化と、成果の最大化を実現させようとするマネジメント手法で、CCPMはTOCの考えに基づき、全体最適の視点から開発されたプロジェクト管理手法だ。

「プロジェクトバッファーコントロール」は、プロジェクトの進捗を「あと何日で終わることができるか」という予測による残日数で把握し、納期を守れる安全度を計測、これを「バッファ=ゆとり」として集約する。プロジェクトメンバー全員で「ゆとり」を共有し、「ゆとり」を見積もることで、プロジェクト内外でチームワークを築くという発想であるという。経営者やマネージャは「ゆとり」の残り具合で全体を管理することで、組織全体でのリソースを調整、最適なリソース配分が可能になり、組織を横断してリソースを融通しあうことなどにより、組織全体の効率化を進め、工期全体の短縮につなげる。

そのほか、卸売市場向け基幹業務パッケージ「EXPLANNER/Vf」は、2009年度の市場法改正に対応している。鋼材卸・加工業向け基幹業務パッケージ「スタースチール」は、鋼材特有のロール材/残材料管理、鋼種/寸法/長さ/重量管理、残材料・二級品在庫の引当て機能などをもっている。

NECが「EXPLANNERシリーズ」の刷新と事業強化をまず打ち出したのは、2006年5月だった。その時点で同社は、2006年度で100億円の売上げを目標としていたが、これは達成できたという。ERPソフト市場全体(導入金額)の伸びは2005年度が前年度比8.1%増、2006年度は同8.9%増(見込み)、2007年度は同8.2%増と予測されているが、なかでも中堅企業向けは2005年度が同13.4%増、2006年度が同10.6%増(見込み)、2007年度は10.0%との見通しで、市場全体の成長率より高い。(出典: ノークリサーチ「2006年度 中堅・中小企業向けERP市場の実態調査報告」)

しかし、NECはまだ、この領域での浸透は十分ではない。「社数ベースで4%程度」(同社の岩波利光 執行役員常務)だが、同社は「いまの調子で行けば、2009年度には20%ほどになる」(同)とみている。営業要員は800人をおよそ1,000人に、開発・サポート陣は300人を700人と倍増させることで、増大するビジネスチャンスを確実に捕捉すれば、高成長は可能とみている。

また、販売店は60社を今年度中に100社に増やす。一方、中国では、管理ソフト市場の売上高のうち、50.9%がERPで、2005年度の実績は30.41億元(約450億円)、前年度比で26.8%増だ(以上、GCCRMの調査による)。この市場では2009年度までに50億円の売上を目指す。

NEC 岩波利光 執行役員常務