1日、稚内北星学園大学東京サテライト校(秋葉原)においてオープンSOAセミナーが開催され、SCA(Service Component Architecture)テクノロジーが詳しく紹介された。同イベントは、IBM、BEA、OracleといったSCAを牽引する大手ベンダーのトップエンジニアたちの口から、直接SCAについて詳しく語られるというもの。次世代SOAプラットフォームをいち早く理解しようと、多くの参加者が詰めかけた。

SCAは、SOAの視点とコンポーネント指向の利点を組み合わせ、多種多様なシステムをコンポーネント化し、シームレスに結合するためのプラットフォーム。詳しくはこちらの特集記事をご覧いただきたい。

今回来日したのは、SCAの仕様策定を中心的に進めている、OSOA(Open SOA)の中心メンバー。OSOA Collabolation(OSOAの協力ベンダー)に所属するIBM/BEA/Oracleといった大手ベンダーのトップエンジニアたちだ。

来日したOSOAのメンバーたち

こうした豪華なメンバーによって、SCAの概要や仕様策定プロセス、細かい技術仕様の部分まで詳しく解説が行われた。今回筆者も講演者の一人として参加していたが、幸運にもメンバーのうちの二人にインタビューを行う機会が与えられた。SCAは、その技術的な側面が多く語られがちであるが、そういった点だけではなく「なぜSCAが必要なのか」といった疑問などに対して多くの示唆を得られるインタビューとなった。以下に、その内容の概略をお伝えしたいと思う。

今回のインタビューに応じてくれたBEAのEdward Cobb氏(左)とOracleのJeff Mischkinsky氏(右)

OSOAについて

OSOAはすでに多くのベンダーからの協力を得ており、その成果物であるSCA/SDOはオープンソースによる実装も進められている。このように、設立当初から多くのステークホルダーにとって良好な関係を築きつつ、OSOAを発足できた理由を聞いたところ、「多くのベンダーで、SOAは既に重大な関心事だったからだ」と言う。

SOAが抱える、ビジネスとしての大きな可能性をさらに広げるには、ベンダ間で協調すべきところは協調すべきだとしている。特に重要なのはOSOAが進めている仕様策定作業と、OASISへの標準化提案。これについては、「技術の標準化は、その技術に対する信頼感の向上と、相互運用性も確保されるという点で顧客にとって大きなメリットがある。そのため、標準化を行うことによってマーケットが拡大するという、非常に重要な効果がある。そういう点を重視してOSOAではベンダー同士は協調関係にあり、成果物は共有財産となる。ベンダーとしては標準に準拠した製品を作成する一方で、スケーラビリティや可用性、使い勝手などの面で競争を行う」と述べている。

SCAについて

SCAについては、筆者としてはまずそのメリットが顧客に伝わりづらいと常々感じていた。そこで、「SCAの利点を、『SCAに興味はあるがほとんど知識のない顧客に対してアピールするように』教えてほしい」という尋ね方をしたところ、「SOAは既に多くの企業にとって重要なビジネスの基盤として認識されている。SCAは、SOAを実現する上での技術的な共通基盤だ」という答えが得られた。

これについてはOracleのJeff Mischkinsky氏から、「Oracleは近年多くのM&Aを行ったが、それらの結果を統合するのが非常に大変だった。SCAにより、ミドルウェアの標準化が行われるようになれば、そうした問題をスマートに解決できる」という、貴重な具体例を聞かせていただいた。

SCAはSOAを容易に実現するための技術的な標準プラットフォームであり、ビジネスの場でどう生かされるかは顧客次第、という柔軟性を備えているというのが総合的な見解だとのことである。SCAは一見するよりもはるかに簡単な技術であり、その設計を行うための新しいロールなども必要なく、従来のエンタープライズアーキテクトであれば十分取り扱えるという。

最後に、SCAの更なる普及と発展のためには何が必要かを聞いたところ、とにかくプロダクトの数を増やすことが重要だと答えた。すでに多くのベンダーがSCAに対応した製品のリリースを予定しており、数年のうちにSCAの潮流が本格化し、採用事例も増えることが予想される。両氏は、今回のような教育セミナーや、認知度を上げるためのイベントも非常に重要だと述べていた。

読者諸兄もSCAの波に乗り遅れないよう、今回のようなイベントやセミナーに積極的に参加してはいかがだろうか。