学生から社会人まで教育熱心な韓国。ブロードバンドおよびデジタルデバイスの普及率が高いという環境もあいまって、最近ではeラーニングで学習する人が増えている。

最新の「2005 eラーニング事業実態調査」(韓国電子取引振興委院)によると、昨今のeラーニング市場拡大に伴い、事業者の売り上げは伸びる一方だ。またこうした市場の成長可能性を見て、他の事業と兼業しながらもeラーニング事業に参入する事業者も増えている。

2003~2005年における分野別の韓国のeラーニング市場の売り上げ(単位:万ウォン)

2004年と2005年における分野別の事業者数。eラーニング専業者と軒業者により区分している

趣向を凝らした学生集め

eラーニング市場の競争が激化するにともない、より多くの学生を集めようとさまざまな工夫がこらされるようになった。有名教師による講義映像の配信や豊富な映像数などはすでに基本で、最近では学生に楽しさを与え関心を引くような工夫もなされるようになってきた。

塾ごとに「名物先生」が出てくるのはeラーニング上でも同様だ。オンライン教育サイトのVITAEDUでは、オフラインの塾でも評判の容姿端麗な女性教師を集めた「内心連合クラス」を結成。韓国で進学/就職する際に大変重要視される内申書を良くするための指導はもちろん、基本的な小論文などに至るまで、まとめて教えている。

またオフラインの塾およびeラーニングサービスを提供しているmegastudyでは、Webサイト上で指導教師が直接企画し出演もしている動画配信を行い人気を集めている。流行音楽をBGMにした先生の活動風景を伝えるものや学習法の指導、学生たちへの応援メッセージなどその内容はさまざまだ。

現在韓国ではユーザーが直接撮影し、編集した動画が人気だが、こうした流行とあいまってmegastudyの動画も好評のようだ。

高速通信に合わせたeラーニング

2007年に入ってからはHSDPAやWiBroといったインフラが、全国およびソウル全域でのサービスを開始するなど、自宅だけでなく外出先でもeラーニングで学べる土壌が整えられた。それとともにモバイル端末向けにeラーニングサービスを開始する事業者も増えている。

SK Telecomの「edu10」サービスメメニュー。「人気の講義」「新規の講義」「学年別の動画講義」などのメニューが並んでいる

2007年3月末からHSDPAの全国サービスを開始したSK Telecom(以下、SKT)では全国900以上の塾と提携し、携帯電話で講義映像が見られる「Edu10」サービスを開始した。

従来「モバイルによる講義映像の対象は高校3年生の、大学入試にのみ限定されていたが」(SKT)、このサービスでは中学1年~高校3年生までを対象に、通常の科目だけでなく小論文や内申書指導などまで、幅広い主題を扱っているのが特徴だ。

講義映像を1回ダウンロードするごとに2,000ウォン(約255円/1円=0.1278ウォン)が付加され、動画は3カ月間保存される。動画は1つあたり10分程度だ。高速なHSDPAサービスを利用してもらうため、SKTではさまざまな動画系のコンテンツを発表しているが、eラーニングという実用的なコンテンツもそのひとつとなっている。

一方、eラーニング専門企業のcreduでは、KTのWiBroサービスに対応したPDA用にeラーニングサイトをオープンした。ここでは外国語/経営/教養といった3つの分野にわたって100以上の講義映像をストリーミング配信している。

社会人に向けた内容のもので、利用料は1つの講義あたり1,000~2,000ウォン(約127~255円)程度だが、基本的に全15~19編のシリーズとなっている。

eラーニング市場の拡大により、多様な形でのサービスが登場している韓国。学ぶ側にとっては大変勉強しやすい環境になったといえる。ユーザーがより積極的にeラーニングに取り組むようになれば、さらに多様なサービスが登場してきそうだ。