米IBMは4月12日(現地時間)、3Dスタッキングを用いたチップ製造でブレイクスルーとなる技術を開発したと発表した。「Through-Silicon Via」と呼ばれる新技術ではチップのダイ上に小さな孔を空け、そこに金属を満たすことで上下2つのチップをサンドイッチ状に挟んで直接接続させる。これにより、従来の2Dによるチップ配置とは異なり長い配線が必要なくなるため、パフォーマンスや省電力、サイズの面で大きなメリットになるという。同社ではこの技術について「ムーアの法則の限界を打ち破るもの」と表現している。

今回発表されたThrough-Silicon Viaの技術は、たくさんの小さな穴を開けた薄いシリコンウェハを用意し、2つの異なるチップを垂直方向に接合するための接着剤の役割を与えるもの。この穴には金属が流し込まれており、チップの接着と同時に2つのチップの回路同士をバイパスさせるための経路にもなる。

たとえばプロセッサとメモリなど、2種類の異なるチップどうしを接続させる場合、従来のような配線の取り回しを考慮することなく、直接/高速に結びつけることが可能になる。IBMによれば、配線距離にして1000分の1、配線量にして100倍の効果が得られるという。接続に利用するチップは従来の製造工程のものをそのまま利用でき、同社ではすでにThrough-Silicon Viaを使ったチップの動作に成功しているという。2007年後半にはサンプル品の製造を始め、2008年には実際の製品の生産に取り掛かる計画だ。

当初の用途は、無線通信用チップ、Powerシリーズ、スーパーコンピュータのBlue Gine用のプロセッサなどを想定している。同技術の利用により、無線利用時の消費電力低減とバッテリ寿命増加の効果が得られるほか、HPCやスーパーコンピュータ用途でのパフォーマンス向上が期待できるようになる。

Through-Silicon Via技術の用いられたチップ間接合に用いられる薄型ウェハ。光を通してみると、反対側が透けて見える