The New York Timesは、リベラル系メディアということもあるが、女性の人権、とくにアフリカやアジア、中東でいまだに平然と行われている女性差別の実態を記事としてひんぱんに取り上げている。スーダン・ダルフールで続く武装化集団「ジャンジャウィード(Janjaweed)」によって虐待された女性たちを(おそらくライフワークとして)取材し続けているNicholas Kristof氏など、すぐれたジャーナリストも何人も在籍している。したがってQUATATION OF THE DAYに選ばれるフレーズも、そういった記事から引用されたものが比較的多い。

今回のQUATATIONは、アフガニスタンでつづく"伝統" - ほとんど人身売買といっていい - から女性たちを守ろうと奮闘するNGO関係者が発したひとことだ。

Women's rights was a very new word for them. But now we're openly saying it.

-- Nabila Wafez

女性の権利は彼らにとってまったく耳慣れない言葉だった。だがいま、私たちはオープンにそれを口にしている。

オリジナルはこちら → Afghan Women Slowly Gaining Protection

記事で紹介されている少女は現在17歳、11歳のときに41歳の聖職者のもとに1,200ドルで嫁がされた。その金は薬物中毒者の父親が作った借金の返済に充てられることになる。年端もいかない少女が金銭と引き替えに他家に嫁として出されることは、しかし、アフガニスタンの"伝統"だそうで、いまもその習慣はなくなっていない。この少女の妹は1年前、9歳で400ドルと引き替えに結婚させられ、6歳の末の妹もまもなく同じ運命をたどることになるという。

嫁ぎ先で2年間、ひどい虐待を受け続け、たまらなくなって逃げ出した。警察に保護された彼女は女性シェルターに引き取られる。その後、裁判で夫は「もう殴らないから」と彼女の返還を求め、裁判所もそれに応じた。だが、やはり虐待は繰り返され、ふたたび彼女はシェルターに逃げ込み、いまもそこにいる。

ドイツのNGO団体「medica mondiale」は世界各地で戦争被害にあった女性や子どもたちのケアを行っている。発言者のWafezさんはアフガニスタンでプロジェクトマネージャを務めており、アフガンでの女性支援活動が、少しずつではあるが、やりやすくなってきているという。少なくとも2003年までは、女性がひとりで公道に立っているだけで、刑務所に放り込まれた。いまはシェルターに連れて行ってくれるだけ、警察もマシになったようだ。シェルターの話を公然とできるようになっただけ、ずっと前よりも進歩している、というのが今回の発言の主旨。

前とは違って"現在ではあたりまえ"なことを示す現在進行形

2つめの文でWafezさんは現在進行形を使っている。現在進行形は「目下、進行中のことをあらわすときに使う」と中学英語で習ったはずだが、ここでは別に現時点で作業していることを言っているのではなく、「ここ最近においてその状態が続いている」ことを強調するために使っている。前は女性の人権の話などできなかった、でもいまは、いつでもどこでも、私たちは女性の人権について話している - 現在形でBut now we openly say it.と言うよりも現在進行形を使ったほうがよりアクティブになる。

現在進行形ではなく過去進行形だが、第2回で取り上げたA・ロッドのセリフの中に、we weren't taking Tic Tacsという部分があったが、当時のA・ロッドは「(振り返ればいつも)Tic Tacじゃなくてクスリばっかりヤっていた」ということになる。