この記事では、ノートン 360とZERO ウイルスセキュリティを、6つの切り口で比較します。
実はこの2製品は、今あるセキュリティソフトの中で最も対極に位置すると言えます。ノートン 360は総合セキュリティソフトらしさを突き詰めた1本。一方で、ZERO ウイルスセキュリティは機能を絞ってシンプルさを極めた製品です。
この2製品を、性能や機能、使い勝手の点からじっくりと比較。それぞれ適したユーザータイプを探ります。
【結論】ノートン 360とZERO ウイルスセキュリティはどちらがおすすめ?
先に結論からお伝えすると、それぞれのセキュリティソフトは、以下のようにおすすめできるユーザーが異なります。
ノートン 360がおすすめのユーザー
- セキュリティ対策で幅広い機能を利用したい方、必要な方
- ノートン独自の機能に魅力を感じる方(ダークウェブモニタリング機能、独自バックアップ機能等)
ZERO ウイルスセキュリティがおすすめのユーザー
- セキュリティソフトにかかるコストをできるだけ抑制したい方
- セキュリティに関する基本機能のみで十分な方
ノートン 360とZERO ウイルスセキュリティの違いを6項目で比較
では、具体的にノートン 360とZERO ウイルスセキュリティを、機能、使い勝手など6つ項目で比較します。比較する6項目は、以下の通りです。
- ウイルス検出能力
- セキュリティ機能
- 料金と利用可能台数
- 軽さ
- ユーザービリティ
- サポート
ウイルス検出能力
まずは、ウイルス、マルウェアの検出能力を第三者機関のテスト結果をもとに比較してみましょう。セキュリティソフトの評価を行ない続けてきたドイツの検査機関・AV-TESTのデータをお借りします。
【ノートン】
Real-World Testing | reference set | |
2023/10 | 100% | 100% |
2023/9 | 100% | 100% |
2023/8 | 100% | 100% |
2023/7 | 100% | 100% |
2023/6 | 100% | 100% |
2023/5 | 100% | 100% |
【ZERO ウイルスセキュリティ】
Real-World Testing | reference set | |
2023/10 | 96.2% | 99.9% |
2023/9 | 100% | 99.9% |
2023/8 | 98.1% | 100% |
2023/7 | 98.6% | 99.9% |
2023/6 | 97.9% | 99.9% |
2023/5 | 98.5% | 100% |
※ZERO ウイルスセキュリティの結果は同製品のセキュリティエンジンである「K7 SECURITY」の結果を用いています
このテストは基本的な防護能力を測るものですが、対照的な結果が出ています。
ノートン 360が2023年4月までの半年のテストですべて満点を記録したのに対し、ZERO ウイルスセキュリティは両テストとも何度も100%の検出能力を示すことができませんでした。Real-World Testingの2022年12月分のように、少々成績の落ち込みが大きめに出ている評価もあります。
この項目では、非常に高いスコアを記録したノートン 360の防護性能が光ります。
セキュリティ機能
続いて、それぞれの製品が備えるセキュリティ関連のプラスαの機能を比較してみます。
セキュリティ機能 | ノートン | ZERO ウイルスセキュリティ |
パスワードマネージャー | 〇 | △ (オプション) |
セキュアブラウザ | 〇 | ― |
バックアップ機能 | 〇 | △ (オプション) |
独自VPN | 〇 | ― |
Webカメラ保護 | 〇 | ― |
ダークウェブ監視 | 〇 | ― |
ペアレンタルコントロール | 〇 | 〇 |
データの完全消去機能 | ― | △ (オプション) |
両者の特徴が、分かりやすく表れた結果になりました。
「総合」セキュリティソフトであることを突き詰め、現存するセキュリティ製品の中で最高レベルの機能を盛り込んだノートン 360。
それに対し、機能を絞り込み、徹底的にスリム化を進めたのがZERO ウイルスセキュリティです。
ただ、通常であればノートン 360が優勢という表現で終わるところですが、ZERO ウイルスセキュリティに関しては製品のコンセプトがそもそも異なります。
その点も踏まえつつ、両者の特徴を簡単にまとめました。
ノートン 360の特徴
ノートン 360の特徴は「セキュリティ系機能の豊富さ」にあります。
間違いなく、現存する一般向けセキュリティソフトの中でもっとも多機能な製品です。「ノートン」のブランド名で総合セキュリティソフトの製品ジャンルを開拓したノートンライフロック社の意地が垣間見られますね。
幅広い防護範囲・機能を必要としているユーザーや、どんな機能が必要かはよく分らないけれど、とりあえず安全策を採っておきたいユーザーには、真っ先に導入を検討してもらいたいソフトです。機能面の不足という点において、ハズレを引いたと後悔することはまずありません。
ダークウェブモニタリング機能、独自のクラウドストレージを活用するバックアップ機能は、ユニークで強力。バックアップはマルウェアなどによるデータ破壊に対する究極のセキュリティ機能にもなりますから、活用できればデバイス保護のための常に強力な武器になります。
ちなみに、ノートンのバックアップ機能はかなりしっかりしています。データ保全のための通常のバックアップツールとしても、しっかり働いてくれますよ。
ZERO ウイルスセキュリティの特徴
ZERO ウイルスセキュリティは、本体のセキュリティ機能を基本部分のみに大胆に絞ることで低コスト化を実現した製品です。機能的には、セキュリティソフトというよりも以前の「ウイルス対策ソフト」に近いかもしれません。
そのため、製品単体の機能に焦点を当てると、他ソフトに対して優位点となるポイントがほぼありません。
その代わり、ZERO ウイルスセキュリティには「圧倒的低コスト」という大きなメリットがあります。
本体価格が安いうえ、更新期限がないため、導入したデバイスを破棄するまで追加料金なしで使い続けることが可能です。
ただし、インストール先のデバイスは、変更できません。例えば、PCを買い替えた際、新しいPCに既存ライセンスを乗り換えて使用することはできません。デバイスを買い替えた際は、ZERO ウイルスセキュリティのライセンスも新規で購入する必要があります。
料金と利用可能台数
ノートン 360とZERO ウイルスセキュリティの価格と利用可能台数は、以下の通りです。
【ノートン 360】
スタンダード | スタンダード | デラックス | プレミアム | |
料金(税込) | 4,780円/1年 | 4,980円/1年 | 7,680円/1年 14,480円/3年 |
7,980円/1年 15,980円/3年 |
利用可能台数 | 1台 | 2台 | 3台 | 5台 |
【ZERO ウイルスセキュリティ】
料金(税込) | 2,970円/無制限 | 5,480円/無制限 | 7,980円/無制限 |
利用可能台数 | 1台 | 3台 | 5台 |
※ZERO ウイルスセキュリティのパスワードマネージャー、バックアップ、ファイルの完全消去機能はそれぞれ1,650円
ノートン 360には、機能の違いなどで合計4つのプランがあります。
このシリーズの基本機能を持つスタンダード版が台数違いで2プラン、それに加えてペアレンタルコントロール機能、ダークウェブモニタリング機能を追加したデラックス版、そこからさらに独自クラウドストレージの容量を増量したプレミアム版というバリエーションです。
やや複雑なノートン 360の料金プランに対し、ZERO ウイルスセキュリティのプランはこれ以上ないほどにシンプルです。1台、3台、5台という利用可能台数の違いがあるのみ。ZEROシリーズは「更新料0円」のため、利用可能年数は無期限です。
軽さ
ノートンとZERO ウイルスセキュリティの動作の軽さを、AV-TESTの「Performance」テストをもとに比較してみます。両者の結果は、以下の通りです。
【Performanceテスト結果】
テスト項目 | ノートン | ZERO ウイルスセキュリティ |
Webサイト表示性能低下 | 23% | 30% |
アプリのDL性能低下 | 1% | 1% |
アプリ起動性能の低下 | 6% | 4% |
アプリのインストール性能低下 | 31% | 7% |
ファイルコピーの性能低下 | 2% | 2% |
両者の性能の傾向は対照的なカタチになりました。Webアクセス性能が低めでアプリのインストール性能が高いZEROウイルスセキュリティに対し、アプリのインストール性能が低めのノートンです。ノートンのWebアクセス性能はテスト対象になったソフトの平均と比べると平均程度ですが、対ZEROウイルスセキュリティでは良好な成績となりました。
価格面を考えると、ZERO ウイルスセキュリティの健闘が光ると言って良い結果かもしれませんね。ただ、使用頻度が高いWebサイトの表示性能はノートン 360の方が上です。より軽く感じられる可能性があります。
ユーザビリティ
正規のプログラムをマルウェアと判定してしまう誤検出などをチェックする「Usability」テストの結果も確認しておきましょう。
誤検出などのセキュリティソフトが招く問題が多いほど、ユーザビリティが低い=使いづらいと考えられます。
【Usabilityテスト結果】
テスト項目 | ノートン | ZERO ウイルスセキュリティ |
Webサイトの誤ブロック | 0 | 0 |
正規のソフトの誤検出 | 0 | 0 |
ソフトインストール時の誤警告 | 0 | 1 |
ソフトインストール時の誤検出 | 1 | 0 |
2022年に少し防護能力に乱れが出たノートンですが、2023年はいつも通りの高い防護能力を示しました。2023年になってからは誤検出がゼロです。
ZERO ウイルスセキュリティはこの評価をより苦手としているようです。この半年間のテストでは比較的安定した挙動(誤検出1件のみ)を示していますが、それ以前はもう一つと言った結果でした。
つまり、この観点ではノートン 360の方が優秀です。
サポート
ノートン、ZERO ウイルスセキュリティそれぞれのサポート内容は、以下の通りです。
ノートン | ZERO ウイルスセキュリティ |
・電話(10時~21時) ・チャット(24時間) |
・電話(10時~18時) ・メール(24時間) |
ノートン 360の電話対応では、リモートサポート(PC遠隔操作)も受けられます。
また、ノートン 360をインストールしたデバイスがそのままでは駆除できないマルウェアに感染した場合には、ノートンの専門家による「ノートンプロテクションプロミス」サービスも受けられます。さらに、万が一、専門家による対処でも問題が解決しなかった場合に対しての、返金保証もあります。
対して、ZERO ウイルスセキュリティの電話対応時間は少し短く、リアルタイムチャットの窓口がありません。代わりに、電子メールによるサポートが受けられます。
トラブル対応時にはリアルタイムに応答可能な電話やチャットの方が、状況のニュアンスを伝えやすいケースが多いです。このため、電話対応時間が長く、チャットによるサポートが受けられるノートンの方が、サポート体制が充実していると言って良いでしょう。
ノートン 360とZERO ウイルスセキュリティおすすめはどっち?
ノートン 360は、総合セキュリティソフトの機能面では最高峰の製品です。一方のZERO ウイルスセキュリティは、機能を絞り込むことでコストを徹底的に抑えることに成功しました。
まさに、対極のコンセプトを持った2製品です。
ノートン | ZERO ウイルスセキュリティ | |
ウイルス検出能力 | 〇 | △ |
セキュリティ機能 | ◎ | △ |
料金と利用可能台数 | △ | ◎ |
軽さ | 〇 | 〇 |
ユーザビリティ | ○ | ○ |
サポート | 〇 | △ |
両者の特徴を踏まえ、それぞれのソフトがマッチするユーザータイプをまとめます。
ノートン 360がおすすめの方
ノートン 360の強みは、やはりそのセキュリティ系機能の豊富さにあると言えるでしょう。このソフトがあれば現在のセキュリティ機能はほぼすべてカバーできます。幅広い防護能力に魅力を感じる方、ノートンオリジナルの機能が必要なユーザーはぜひ検討してください。
また、どんな機能が必要か見えていないけれどとりあえず安全策を採っておきたいと言うユーザーにもマッチします。
機能の豊富さだけでなく、安定した高い防護能力と誤検出の少なさも今のノートンの特徴。価格面をクリアできるなら、非常に多くの方におすすめしたい製品です。
ZERO ウイルスセキュリティがおすすめの方
ZERO ウイルスセキュリティの強みは、圧倒的な低コストです。販売価格自体が全セキュリティソフトの中でも最安クラスのうえ、「更新料0円」という極めて強力な特徴があります。
基本的な防護機能プラスα程度のセキュリティ機能で十分な方にとっては、低コストで購入・維持できるZERO ウイルスセキュリティは魅力的な製品と言えるでしょう。
機能面の少なさは否定できないため、コストパフォーマンスというよりも「絶対的低コスト」を重視したいユーザー向けの製品です。
ただし、パスワードマネージャーなど最近注目度が高まっている機能を追加すると、ある程度のオプション費用がかかってしまいます。また、更新料が0円なのは、あくまで最初にインストールしたデバイスのみが対象であり、デバイス買い替え時には再度新しいライセンスの購入が必要になります。
この2点を事前に理解したうえで、購入してください。
セキュリティソフト乗り換え時の手順
ライセンスを更新して同じセキュリティソフトを使い続けるのではなく、セキュリティソフトを変更する際は注意が必要です。
具体的には、新しいセキュリティソフトをインストールする前に、以前使っていた製品のアンインストールをしておきましょう。アンインストールをせずに新しいセキュリティソフトをインストールしてしまうと、干渉しあって動作が重くなる、削除しあって不具合が起こるといった問題が生じてしまいます。
新規でセキュリティソフトを導入するのではなく、今のセキュリティソフトから乗り換えを行う際は、必ずそれまでのソフトをアンインストールしてから新しいソフトをインストールするようにしましょう。
まとめ
やや高価格で超多機能なノートン 360と、機能を非常にスリムに絞り低価格を実現したZERO ウイルスセキュリティ。
特徴が両極端の2製品ですので、選ぶ際に迷うことも少ないかもしれません。
ノートン | ZERO ウイルスセキュリティ | |
ウイルス検出能力 | 〇 | △ |
セキュリティ機能 | ◎ | △ |
料金と利用可能台数 | △ | ◎ |
軽さ | 〇 | 〇 |
ユーザビリティ | ○ | ○ |
サポート | 〇 | △ |
最後に、それぞれのソフトがどんなユーザーにおすすめかという点を簡単にまとめておきます。ご自身のニーズに合った方を選んでください。
ノートン 360がおすすめのユーザー
- セキュリティ対策で幅広い機能を利用したい方、必要な方
- ノートン独自の機能に魅力を感じる方(ダークウェブモニタリング機能、独自バックアップ機能等)
ZERO ウイルスセキュリティがおすすめのユーザー
- セキュリティソフトにかかるコストをできるだけ抑制したい方
- セキュリティに関する基本機能のみで十分な方
機能と料金のバランスを重視してセキュリティソフトを選びたい方には、ESET HOME セキュリティ エッセンシャルがおすすめ。ある程度のセキュリティ機能が豊富で、軽く、誤検出も非常に少ないソフトです。