この記事では、ESET HOME セキュリティ エッセンシャルとノートン 360を、6つの切り口で比較していきます。
ESETシリーズは、セキュリティソフトでは比較的新しめの製品。これに対し、ノートンシリーズはこのジャンルのソフトとして最古参クラスの歴史を持つセキュリティソフトです。そういった意味で対象的なこの2本がどんなユーザーにマッチするのか、そのあたりを確認してみましょう。
新しい製品は悪い意味でのレガシーを引きずることが少なく、古い製品は中身やルック・アンド・フィールの一新で苦戦することもあります。この2製品はそのあたりがどうなっているのかも注目点です。
【結論】ESETとノートンはどちらがおすすめ?
先に結論からお伝えすると、それぞれのセキュリティソフトは、以下のようにおすすめできるユーザーが異なります。
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルがおすすめのユーザー
- 一般的なセキュリティ機能と高い防護能力を最高のコスパで利用したい方
- 軽快な動作のセキュリティソフトを求めている方
ノートン 360がおすすめのユーザー
- セキュリティ対策で幅広い機能を利用したい方
- ノートン独自の機能に魅力を感じる方(ダークウェブモニタリング機能、独自バックアップ機能等)
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルとノートン 360の違いを6項目で比較
では、具体的にESETシリーズとノートン 360を、機能、使い勝手などの以下の6つ観点で比較していきます。
- ウイルス検出能力
- セキュリティ機能
- 料金と利用可能台数
- 軽さ
- ユーザービリティ
- サポート
ウイルス検出能力
※参照元:AV-TEST
まずは、ウイルス、マルウェアの検出能力からです。第三者機関であるAV-TESTの結果を参照すると、以下のような結果が出ています。
※ESETは2021年をもってAV-TESTへの参加を停止していました。ですが2023年に入って1,2月は久々にAV-TESTによる評価が行なわれましたのでそのデータを記載します。
【ESET】
Real-World Testing | reference set | |
2023/2 | 98.3% | 100% |
2023/1 | 98.9% | 100% |
【ノートン】
Real-World Testing | reference set | |
2023/4 | 100% | 100% |
2023/3 | 100% | 100% |
2023/2 | 100% | 100% |
2023/1 | 100% | 100% |
2022/12 | 100% | 100% |
2022/11 | 100% | 100% |
上記のテスト結果を見る限り、ESETもノートンも優秀な成績を記録しています。
特に、ノートンの結果は、評価対象の製品すべての中でも頭一つ抜けている印象です。AV-TESTの2つの評価、「Real-World Testing」、「reference set」ともすべて満点、100%の検出を記録しています。
ノートンと比べてしまうとESETのテスト結果が数値的にはわずかに見劣りしてしまうのですが、実際の成績としては十分です。実用上、全く問題のない防護能力を備えていると考えて良いでしょう。
ユーザーから見ると、「いずれのソフトも検出能力を心配する必要はない」と言えますね。
セキュリティ機能
続いて、それぞれの製品が備えるセキュリティ関連のプラスαの機能を比較してみます。
セキュリティ機能 | ESET | ノートン |
パスワードマネージャー | △ (上位版のみ) |
○ |
セキュアブラウザ | 〇 | ○ |
バックアップ機能 | ― | ○ |
独自VPN | ― | ○ |
Webカメラ保護 | 〇 | ○ |
ダークウェブ監視 | ― | ○ |
ペアレンタルコントロール | 〇 | 〇 |
データの完全消去機能 | ― | ― |
セキュリティ関連機能の豊富さの観点では、ノートンがESETを上回るスペックを実現しています。
と言うか、今のノートン 360の機能は、現存するすべてのセキュリティ製品と比較しても頭一つ以上抜けているほどの多機能ぶりです。この点での比較では、まずノートンを超えられる製品はありません。
現在考えられるセキュリティ機能を一通り全部使いたい方は、ノートン 360を選ぶのが最も確実です。
とは言え、ESETも総合セキュリティソフトを十分に名乗れるだけの機能は保有しています。
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルの特徴
単に機能数の面で比較するとESET HOME セキュリティ エッセンシャルはノートン 360のサブセット的なポジションになってしまいます。
ですが、ESETも今のセキュリティ製品における一般的な機能はカバーしており、その範囲の機能をより高いコストパフォーマンスで手にできることができる点が、ESETのメリットです。手頃な範囲の機能を使いこなしやすいのは、ESETの方でしょう。
加えて、ダッシュボードのユーザーインタフェースの使いやすさもESETの美点です。ソフトの使いこなしにも有利に働いてくれるはずです。
ノートン 360の特徴
ノートン 360の特徴は、やはりその「セキュリティ系機能の豊富さ」。間違いなく今のセキュリティソフトの中でもっとも多機能な製品です。ノートンのブランド名で総合セキュリティソフトと呼べる製品ジャンルを開拓した、メーカーの意地かもしれませんね。
幅広いセキュリティ機能を必要としているユーザー、どんな機能が必要か見えてないけれどできる限り安全策を採りたいユーザーには、真っ先に導入を検討してもらいたいソフトです。
特に、ノートンのダークウェブモニタリング機能、独自のクラウドストレージを活用するバックアップ機能はユニークで強力です。バックアップはランサムウェアなどによるデータ破壊に対する究極のセキュリティ機能にもなり得ますから、活用できれば非常に強力なデバイス保護のための武器になります。
料金と利用可能台数
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルとノートン 360の料金と利用可能台数は、以下の通りです。
【ESET HOME セキュリティ エッセンシャル】
料金(税込) | 4,950円/1年 6,600円/3年 |
6,160円/1年 8,250円/3年 |
7,480円/1年 9,900円/3年 |
利用可能台数 | 1台 | 3台 | 5台 |
【ノートン 360】
スタンダード | スタンダード | デラックス | プレミアム | |
料金(税込) | 4,780円/1年 | 4,980円/1年 | 7,680円/1年 14,480円/3年 |
7,980円/1年 15,980円/3年 |
利用可能台数 | 1台 | 2台 | 3台 | 5台 |
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルには、利用可能台数と利用可能年数のバリエーションに応じて6つのプランが存在します。そして、いずれのライセンスも、機能に違いはありません。
また、Chatwork社の特約店サイトにて最大21%割引のディスカウントを行っており、3年5台版が7,800円(税込)で購入可能です。
それに対して、ノートン 360には機能の違いなどで合計4つのプランがあります。基本機能を持つスタンダード版、その機能に加えてペアレンタルコントロール機能・ダークウェブモニタリング機能を追加したデラックス版、そこからさらに独自クラウドストレージの容量を増量したプレミアム版の3つのプランです。
また、「デラックス版で料金節約のためにも1台用のライセンスが欲しい」といった対応はできません。製品構成が微妙に分りにくく、プラン選択も少し難解に感じるかもしれませんね。
ノートン 360も公式HPにて定期的に割引キャンペーンを実施していますが、料金面に関してはESET HOME セキュリティ エッセンシャルの方がかなり割安です。
3年5台版の割引価格7,380円(税込)という金額は、ノートン 360デラックス版の約半額。1台あたりの年間費用は492円(税込)と非常にコスパに優れています。
軽さ
続いて、ESETとノートンの動作の軽さを、AV-TESTの「Performance」テストの結果をもとに比較していきます。両者の結果は、以下の通りです。
※ESETの数値は2021年12月のものです。
【Performanceテスト結果】
テスト項目 | ESET | ノートン |
Webサイト表示性能低下 | 21% | 26% |
アプリのDL性能低下 | 7% | 2% |
アプリ起動性能の低下 | 7% | 5% |
アプリのインストール性能低下 | 15% | 29% |
ファイルコピーの性能低下 | 2% | 2% |
ESETは、どの項目のテスト結果も比較的落ち込みが少なくなっています。ただこのときのテストはWebサイトの表示性能がふるわず、ちょっと「らしくない」結果になっていました。
ノートン 360の方も2023年に入ってからの性能テストの結果がもう一つふるいません。
どちらの製品もこの項目では比較的良好な性能を示していますが、利用機会の多いWebサイトの表示速度においてはESETにやや分がある傾向です。その意味では、ESETの方が軽さを体感しやすいかもしれません。
ユーザビリティ
正規のプログラムをマルウェアと判定してしまう誤検出などをチェックする「Usability」テストの結果も確認しておきましょう。
誤検出など、セキュリティソフトが招く問題が多いほど、ユーザビリティが低い=使いづらいと判断できます。
※ESETの数値は2021年12月のものです。
【Usabilityテスト結果(直近半年間の合計値)】
テスト項目 | ESET | ノートン |
Webサイトの誤ブロック | 0 | 0 |
正規ソフトの誤検出 | 0 | 0 |
ソフトインストール時の誤警告 | 0 | 0 |
ソフトインストール時の誤検出 | 1 | 0 |
ESETは、ユーザービリティテストで非常に優秀な成績を残し続けています。2021年12月までの半年分のAV-TESTの評価では、誤検出などのエラーを一度も起こしていませんでした。久々に行なわれた2023年1,2月のテストでは1件だけの誤検出を出しています。
ノートンの方は2023年4月にかけてのテストでは誤検出を一件も出しませんでした。以前はノートンには誤検出の多さというマイナスイメージがつきまとっていましたが、今はそういった弱点をほとんど克服できているようです。
誤検出の観点では、どちらの製品も十分に安定していると言って良いでしょう。
サポート
ESET、ノートンそれぞれのサポート内容は、以下の通りです。
ESET | ノートン |
・電話(9時~17時 営業日のみ) ・Webフォーム(24時間) |
・電話(9時~21時) ・チャット(24時間) |
ESETサポート窓口の休日は、キヤノンITSのESETサポートページにあるカレンダーにて確認してください。
Webフォームの受付自体は24時間365日OKで、実対応はサポートセンターの営業時間内になります。
一方、ノートン 360の電話対応では、リモートサポート(PC遠隔操作)も受けられます。
また、ノートン 360をインストールしたデバイスがそのままでは駆除出来ないマルウェアに感染した場合には、ノートンの専門家による対処が受けられる「ノートンプロテクションプロミス」サービスもあります。さらに万が一、専門家による対処でもダメだった場合には返金保証もあります。
ノートン 360の方が電話の対応時間も長く、万が一の時のノートンプロテクションプロミスのサービスもかなり強力です。サポートに関してはノートン 360のほうが使いやすいでしょう。
ノートン 360とESET HOME セキュリティ エッセンシャルおすすめはどっち?
ノートン 360、ESET HOME セキュリティ エッセンシャルは、どちらも非常におすすめできる総合セキュリティソフトです。
機能レベルではノートン 360が非常に優秀で、全セキュリティ製品の中でもトップクラスの高機能ぶりを誇ります。一方で、ESET HOME セキュリティ エッセンシャルは機能的にスリムな分、料金面のアドバンテージがあります。
ノートン 360が持つすべての機能が必要なユーザーはかなり限られるはずですので、一般的なユーザーにはコスパの良いESETの方が合うかもしれません。
ESET HOME セキュリティ エッセンシャル |
ノートン 360 | |
ウイルス検出能力 | 〇 | 〇 |
セキュリティ機能 | 〇 | ◎ |
料金と利用可能台数 | ◎ | △ |
軽さ | 〇 | 〇 |
ユーザビリティ | 〇 | 〇 |
サポート | △ | 〇 |
機能的にはノートン 360が極めて多機能で優秀ですが、その分価格が高め。ESET HOME セキュリティ エッセンシャルは機能面ではノートン 360に負けるものの、価格が安く1台1年あたりのコストの低さは非常に優秀です。
これらの観点から、それぞれのソフトがマッチするユーザータイプをまとめます。
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルがおすすめの方
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルは、以前は「軽さ」の点で他のセキュリティソフトよりもアドバンテージを持った製品でした。
しかし、現在はどのセキュリティソフトも軽さの面で改良が加えられているため、かつてほどの圧倒的な優位性は薄れています。ですので、現在のESET HOME セキュリティ エッセンシャルの一番の強みとして挙げられるのは、コストパフォーマンスの高さになるかと思います。
1台1年あたりのコストパフォーマンスでは常に上位に位置する製品ですから、安定した高い防護能力をできるだけコストを抑えて導入したいユーザーにはピッタリです。
また、誤検出も非常に少ないため、ゲームのアンチチートプログラムなど、ちょっとトリッキーな動作をするソフトウェアを利用するユーザーにもおすすめできます。
ノートン 360がおすすめの方
ノートン 360の強みは、やはりそのセキュリティ系機能の豊富さにあると言えるでしょう。このソフトがあれば、現在のセキュリティ機能はほぼすべてカバーできます。幅広い防護能力に魅力を感じる方、ノートンオリジナルの機能が必要なユーザーは、ぜひ検討してください。
安定した高い防護能力と誤検出の少なさも、今のノートンの特徴です。価格面をクリアできるなら非常に広い範囲のユーザーに安心しておすすめできる製品となっています。
ノートンもダッシュボードが一新され「ノートンらしさ」を残しつつ使いやすいUIが実現されています。この点も、心配無用ですね。
セキュリティソフト乗り換え時の手順
ライセンスを更新して同じセキュリティソフトを使い続けるのではなく、セキュリティソフトを変更する際は注意が必要です。
具体的には、新しいセキュリティソフトをインストールする前に、以前使っていた製品のアンインストールをしておく必要があります。アンインストールをせずに新しいセキュリティソフトをインストールしてしまうと、干渉しあって動作が重くなる、削除しあって不具合が起こるといった問題が生じてしまうからです。
新規でセキュリティソフトを導入するのではなく、今のセキュリティソフトから乗り換えを行う際は、必ずそれまでのソフトをアンインストールしてから新しいソフトをインストールするようにしましょう。
まとめ
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルもノートン 360も、安定して高い防護能力を発揮し、誤動作なども少ないセキュリティ製品に仕上がっています。
高機能かつ価格も上になるノートン 360と、必要十分な機能を備えつつコスト面を抑えられるESET HOME セキュリティ エッセンシャルとで、製品のポジショニングはしっかりと分けられていると言えるのではないでしょうか。
ESET HOME セキュリティ エッセンシャル |
ノートン 360 | |
ウイルス検出能力 | 〇 | 〇 |
セキュリティ機能 | 〇 | ◎ |
料金と利用可能台数 | ◎ | △ |
軽さ | 〇 | 〇 |
ユーザビリティ | 〇 | 〇 |
サポート | △ | 〇 |
最後に、それぞれのソフトがどんなユーザーにおすすめかという点を簡単にまとめておきますので、ご自身のニーズに合った方を選んでください。
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルがおすすめのユーザー
- 一般的なセキュリティ機能と高い防護能力を最高のコスパで利用したい方
- 軽快な動作のセキュリティソフトを求めている方
ノートン 360がおすすめのユーザー
- セキュリティ対策で幅広い機能を利用したい方
- ノートン独自の機能に魅力を感じる方(ダークウェブモニタリング機能、独自バックアップ機能等)
上記のほか、セキュリティソフトを導入したいデバイスの数が非常に多いユーザーは、利用可能台数が無制限なマカフィーリブセーフという選択肢も存在します。
また、1台のデバイスを長く利用するというユーザーは、ZERO ウイルスセキュリティ・ZERO スーパーセキュリティも有力な候補になります。