ノートン 360は、シマンテック社改め「ノートンライフロック社」の主力セキュリティソフトです。
ノートンシリーズはセキュリティソフト業界の老舗でもあり、今回取り上げるノートン 360は、現在の主流である「総合セキュリティソリューション製品」の先駆けでもあります。
今回は、そんなノートン 360の性能や機能について、実機を用いて検証していきます。
個人的なお話になりますが、著者が本格的にネットを利用するようになって最初にお世話になったウイルス対策ソフトがノートンシリーズでした。その後何かのきっかけで他社製品に乗り換え、その後はしばらくこの製品に直接触れる機会がありませんでした。
多分、10年越しぐらいの久々のノートン先生。どのように変わっているのか楽しみにしながら検証・評価をしていきたいと思います。
セキュリティソフトの老舗!ノートン 360の特徴
ノートン 360をはじめとするノートンシリーズの元祖である「ノートン アンチウイルス」が登場したのは、1990年。インターネットが一般化する前から、ウイルスなどと戦ってきた実績のあるシリーズです。
長く幅広いユーザーに使われ続けてきたこともあり、親しみを込めて「ノートン先生」などと呼ばれることも多々あります。
そんなノートンシリーズの現在の主力製品である、ノートン 360の特徴は以下の通りです。
- 総合セキュリティ製品としても老舗
- 個人情報流出をチェック
- 大切なデータを強固に守る
総合セキュリティ製品としても老舗
ノートン 360のブランドは、セキュリティソフトがまだ「ウイルス対策ソフト」だった頃に立ち上げられ、今の総合セキュリティソフトの概念に繋がる幅広い機能を搭載した製品の先駆けでした。
当時は、マルウェアの具体的な概念やフィッシングサイトなどのネット上の脅威に関する認識もユーザーに浸透しておらず、ネット利用上のリスク=ウイルスのイメージが強かったと思います。
そんな中、ノートンシリーズはより幅広い方向からの防護を提案していたのです。
個人情報流出をチェック
ノートン 360には、最近その名を聞く機会が増えてきた「ダークウェブ」に流出してしまった個人情報をチェックする機能「ダークウェブモニタリング」が搭載されています。
ダークウェブとは、検索エンジンなどを経由してアクセスできる「表」のインターネットとは異なり、通常の手順では見えないアンダーグラウンド、いわば「裏」のインターネットのことです。
個人情報や犯罪に繋がる情報など、表のインターネットに流れるとすぐに対処されるような色々な意味で危険度の高い情報は、最近ではダークウェブでやりとりされるケースが非常に多くなりました。
ノートン 360なら、設定した個人情報がダークウェブに流出していないかの監視を行なってくれます。
大切なデータを強固に守る
ランサムウェアなどによる攻撃で大切なデータが失われることを防ぐのに最も有効な手段の一つは、しっかりデータのバックアップを取ることです。ただし、バックアップ先がいつもデバイスに繋がっているような状態は、攻撃に対して脆弱な状態だと言わざるを得ません。
その点、ノートン 360にはノートン独自のクラウドストレージを使って大切なデータを外部にバックアップする機能が搭載されています。
また、ランサムウェアによる攻撃などからローカルストレージを守る機能も当然搭載されています。
万が一、ノートン 360を運用した状態でマルウェアに感染した場合には、ノートンのスタッフによる強力なサポートが受けられるサービスもあり、本当の意味で非常に多彩な角度からの防護力を持つ「セキュリティソリューション」に成長しています。
ノートン 360利用者の口コミ
続いては、実際にノートン 360を利用しているユーザーの評判を、Twitterの口コミを参考にご紹介していきます。
良い評価・悪い評価どちらも2つずつピックアップしてみました。
良い口コミ
まずは、良い評価の口コミから。
Lifebearってカレンダーアプリ使ってるんだけど、ノートンから個人情報漏洩した可能性がありますって通知が2月に来てた??
漏洩したかもなのは2年前だけど
えぇーーーーーん— 胡蝶 (@csckm_) July 31, 2021
こちらのツイートは、ノートン 360のダークウェブモニタリング機能が有効に働いたケースだと思われます。カレンダーサービスのLifebearは過去に個人情報流出事故を起こしていますが、ノートン 360を利用していたおかげでユーザーがそれに気づくことができました。
ついにAndroid版ノートン 360に
SMSセキュリティが追加された! pic.twitter.com/fE1L3qnlA3— takaya ⊿??????? (@futakaya46) July 27, 2021
現在、スマートフォンにおけるフィッシング系リスクの多くが、SMS(ショートメッセージ)からやってくるようになりました。宅配業者を装って個人情報を引き出そうとする攻撃も、このタイプのものが多いです。
ノートン 360のスマホ版がSMSに対応してくれるのは、非常に大きな安心に繋がりますね。
悪い口コミ
続いて、悪い評価の口コミです。
ブルースクリーンが解決しても重くて仕方ない。
最終手段でノートン 360を削除した。
自動延長停止の手続きに手こずった。
今はWindows Defenderがあるのでウイルスソフトは必要ない。
かなり軽くなった。— りなも@mix (@shin16_dynamo) July 27, 2021
「Windows 10にはWindows セキュリティ(旧Windows Defender)があるから有償製品いらない」論は、どの有料セキュリティソフトの口コミにも登場します。
現在のWindows セキュリティは確かに基本防護能力に関しては非常に優秀な製品になりましたので、Windows セキュリティの機能の範囲のみで間に合う環境であれば有料製品は不要、というのは間違いではありません。
ただし、Windows セキュリティは基本機能のみのセキュリティソフトですので、その守備範囲で足りない場合には有料製品を検討する必要があります。
ノートン 360でセキュアVPNつけるとプロフィールも見れなくなるしモンストも開けなくなるし色々とゴミなんだが??????
— Beats by Youngnoel ???? (@youngnoel_beatz) July 17, 2021
こちらは、独自VPNを利用した時に「アクセス元のIPアドレスが日本以外のものに見える」ことが原因のトラブルではないかと思います。
ネット上のサービスによってはアクセス元を特定の国に限定していることがありますので、独自VPNも万能な機能ではない、と言うことですね。もちろんこれはノートンに限らないお話です。他のセキュリティソフトの独自VPNでも同様のトラブルが起こる可能性があります。
動作の軽さと使い勝手を実機検証で評価
続いて、PCの実機を使ったテストでノートン 360の軽さ・使用感を検証していきます。
今回も、エントリークラスのWindows 10ノートPCにインストール。各種のテストを行なっています。
使用したPCは、ローエンドクラス。CPUにはデュアルコアで1.8GHz動作のCeleronを採用。メインメモリは4GB。内蔵ストレージはSATA3接続の250GB SSDとなっています。
Web巡回やオフィススイートの利用などは全く問題なく行えますが、本格的な3Dゲームや動画編集、高解像度写真のフォトレタッチはちょっとキツイぐらいのパワーです。
スキャン性能
まずは、動作の軽さ/重さを確認するためにスキャン性能を確認していきましょう。
- 各種データ10GBほどを詰め込んだテスト用フォルダのスキャン
- PC全体のフルスキャン
2つのスキャンを実行して、Windowsセキュリティと性能の比較を行なっていきたいと思います。
カスタムスキャンの結果
最初に、カスタムスキャンをした結果を確認していきましょう。
↓↓ノートン 360:26秒↓↓
↓↓Windows セキュリティ:51秒↓↓
検査した項目数はノートン 360の方がやや少ないですが、処理にかかった時間は半分以下。かなりの高速さを発揮しています。
フルスキャンの結果
次に、フルスキャンの結果です。
↓↓ノートン 360:1時間40分29秒↓↓
↓↓Windows セキュリティ:29分51秒↓↓
フルスキャンでは、ノートンの方がWindows セキュリティよりも大幅に長い時間を要しました。
ただし、ノートン 360の検査項目数は、Windows セキュリティと大幅に上回っています。加えて、単なるファイルのスキャンのみではなく、より幅広い内容のチェックを行なっていることも分ります。
より深い検査を行なう分、処理に時間がかかっていると言うことでしょう。
ちなみにノートン 360のスキャン結果は時間などの詳細情報を画面では確認できませんが、詳細なログはテキストファイルに出力可能です。使うシーンは多くはないと思いますがこの機能があると何かと安心&便利です。
メモリ消費量
メモリ消費量は、やや多め。Windows セキュリティよりも100MB~200MBほど余分に消費する感触です。
また、フルスキャン実行時は空き容量があればかなり積極的にメモリを使うタイプの処理を行なうようです。
利用可能なメモリが3.9GBのマシンで3.6GB~3.7GBぐらいまで消費して動作します。
実際の使用感
メモリ消費量は多めに見えるノートン 360ですが、実使用感の方はかなり良好です。Windows 10起動直後のもっさり感も、軽めに感じられます。
さらに、OSが起動して定常状態に入れば、当然のようにノートンの存在を感じるシーンはほぼなくなります。
どのセキュリティソフトも同じ傾向ですが、「重い」という評判を見かけたらその発言が行なわれたタイミングをまずしっかりチェックしてみましょう。どの製品も、最新バージョンは非常に軽くなっており、重さが顔を覗かせるタイミングは非常に少なくなっていると思います。
ノートン 360の防御性能と機能について
参照:AV-TEST
ここからは、ノートン 360の防護能力・機能上の特徴を詳細に解説していきます。
セキュリティ製品評価の第三者機関であるAV-TESTの評価では、トップ級の成績の証である「TOP Product」の常連であり、直近5回の評価はすべてフルマーク。18点満点中18点を連続して獲得しています。
基本的な防護能力に関しては、文句なしの性能と言って良いでしょう。
したがって、ここでは以下の「ノートンらしい」機能について、詳しく解説していきたいと思います。
- ダークウェブをチェック
- 独自クラウドストレージへのバックアップで重要情報保護
- 超強力なユーザーサポート
- 今風のプラスαな機能群
ダークウェブをチェック
ノートン 360には、登録した個人情報がダークウェブに流出していないかを監視してくれる機能、「ダークウェブモニタリング」が搭載されています。
具体的には、以下の情報を登録することで、それらの情報が漏洩していないかをチェック。かなり幅広い個人情報に対応していることが分りますね。
メールアドレス | 最大5件 |
住所 | 最大5件 |
電話番号 | 最大5件 |
保険番号 | 最大5件 |
運転免許証番号 | 1件 |
クレジットカード番号 | 最大10件 |
銀行口座番号 | 最大10件 |
ゲーマータグ | 最大10件 |
実機検証中にダークウェブ履歴の通知を受け取る
ちなみに、著者はノートン 360インストール最中に早速この機能の有効性を確認することになりました。
ノートンアカウントのIDに使うメールアドレスが、以前、大手ソフトメーカーのWebサービスアカウント流出事故で影響を受けたものだったのです。
データ漏洩に関する通知は、以下のように行われます。
独自クラウドストレージへのバックアップで重要情報保護
ノートン 360のユニークな特徴として、クラウドストレージをセキュリティ対策に活用している点が挙げられます。ノートン 360デラックスであれば25GBの容量を利用可能ですが、これをノートン自身が行なうバックアップ先に使用しているのです。
基本的にこの領域にはユーザーが自由に触れることはできず、マルウェアなどによるデバイスへの攻撃からもほぼ完全に分離。この機能を利用して重要情報をバックアップすることにより、ランサムウェアなどによる攻撃から重要データをより確実に保護可能になります。
超強力なユーザーサポート
すべての有料セキュリティソフトにはサポート窓口が準備されていますが、ノートン 360ならさらに強力なサポートを受けることができます。
例えば、ノートンをインストールしたデバイスがマルウェアに感染してそれが駆除できなかった場合、ノートンの技術者がマルウェア駆除のサポートを行なってくれます。一般的なコールセンター窓口とはひと味違うサポートが受けられるのです。
ノートンライフロック社側からすると一見コストがかかる業務ですが、真っ先に専門家が未知のリスクの情報を入手できる機会にもなり得ます。実は、上手にWin-Winを実現できる仕組みなのかもしれませんね。
今風のプラスαな機能群
加えて、ノートン 360では以下の今風のセキュリティ機能が利用できます。
- 独自VPN
- より細かい設定が可能なペアレンタルコントロール
独自VPNを利用することで、通信経路の安全性向上が図れます。特にFree Wi-Fi利用のシーンでは重要度が非常に高い機能と言えるでしょう。
また、ノートンにはさら一歩に踏み込んだ形式のペアレンタルコントロール機能が実装されています。子どものインターネット利用状況をチェックし、よりきめ細かな見守りを実現できます。
ノートン 360のプランと料金
ノートン 360シリーズにはいくつかのエディションがありますので、その種類と料金体系をまとめていきたいと思います。
最近では珍しい複数エディション構成
ノートン 360は、機能と利用可能台数の違いで、大きく以下の3つのエディションに分類できます。
ノートン 360デラックス
ノートン 360のフル機能を持ち3台まで利用可能な「ノートン 360デラックス」。こちらの製品がベースとなっています。
ノートン 360スタンダード
ペアレンタルコントロール機能を省き利用可能な台数を少ない設定に変更。加えてクラウドバックアップの容量を10GBに制限したのが「ノートン 360スタンダード」です。
ノートン 360プレミアム
デラックスから利用可能台数を5台に増し、クラウドバックアップの容量を50GBに増強したのが「ノートン 360プレミアム」です。こちら、機能面ではデラックス版と一緒になります。
価格
それぞれのエディションの価格構成です。
【スタンダード(税込)】
1年 | 1台 | 4,780円 |
2台 | 6,080円 |
【デラックス(税込)】
1年 | 3台 | 7,680円 |
3年 | 3台 | 14,480円 |
【プレミアム(税込)】
1年 | 5台 | 7,980円 |
3年 | 5台 | 15,980円 |
利用期間が長く利用台数が多いプランほど購入価格は高額ですが、デバイス1台1年あたりの単価は大幅にお得になります。
例えば、ノートン 360プレミアムの3年5台ライセンスは15,980円(税込)ですので、1台あたり年間1,065円(税込)ほどで利用できる計算です。
ノートン 360のメリット・デメリット
ここで改めて、ノートン 360の特徴について、メリット・デメリットという観点から整理し直していきたいと思います。
メリット
まずは、メリットからです。他の製品にはないノートン 360ならではのメリットとして、次の2点が挙げられます。
重要データの独自クラウドストレージへのバックアップ
仮にランサムウェアに感染して攻撃の被害を受けたとしても、手元のデバイスから切り離されたクラウドストレージにバックアップを持っておけば重要なデータは保護できます。
ノートン 360なら、どのエディションでも独自クラウドストレージを活用するバックアップ機能が利用可能。最重要データを、自動的に守ってもらえます。
個人情報のダークウェブへの流出を監視可能
現在は、多くの人がネットの各種サービスなしで生活することが考えられない状況になってきています。サービス提供側も各種攻撃に対する備えは十分に行なっているはずですが、攻撃側も常に攻撃方法を進化させ続けるイタチごっこの様相はいつまで経っても変化しません。
そのため、何らかの事故で大切な個人情報が流出してしまう可能性は、常に頭に置いておかないといけないと思います。
ノートン 360のダークウェブモニタリング機能があれば、そういう事故にいち早く対応可能です。
ちなみに著者がアカウント情報流出事故の知らせを受けたときには、真っ先にすべてのネットサービスのアカウントの見直しを行ないました。そして、利用可能なところは基本的にすべて「二要素認証」の設定を行うようにしています。
もっと早くノートン 360をインストールしていれば、もっと早くに手を打てたと思っています。
デメリット
かつては、ノートンの弱点として「誤検出」の多さを挙げるユーザーが多くいました。実際、著者も何度かそれ由来のトラブルに悩まされました。
ですが、最近のバージョンではその点も改善されています。ノートン 360はAV-TESTのユーザービリティテストでも満点を挙げ続けており、非常に穴の少ない製品になっています。
そんなノートン 360のデメリットをあえて挙げるとすれば、以下の2点となるでしょうか。
消費メモリ量がやや多い
最新のノートン 360の動作感は非常に良く、エントリークラスのノートPCもごく普通に使える軽さがあります。ですが、わずかですがWindows セキュリティよりも消費メモリ量が多めの感触があります。
メインメモリが少ないPCの場合、メモリ不足が由来の性能ダウンが起こる可能性もありえるのではないでしょうか。
2つあるダッシュボード
ノートン 360にはセキュリティソフトの機能を呼び出す入り口となるダッシュボードに、「マイノートン」と「ノートン 360」の2つがあるように見える構成になっています。
どの機能にはどちらの画面からアクセスしたらいいかなど、この二つの画面の使い分けが少し分りにくい印象です。
ノートン 360はこんな方におすすめ
ノートン 360は、基本的にどんなユーザーにもおすすめできる製品に仕上がっています。
通常は特別な設定をしなくても必要な防護は得られる作りになっていますから、OSやセキュリティソフトの使い方に詳しくないユーザーでも「お任せ」で十分なリスク回避が行えるでしょう。
独自VPN機能やパスワードマネージャー機能など、ネットを幅広いシーンで利用するうえで重要になってきたプラスαの機能も標準で搭載していますので、各種ネットサービスへの依存度が高いユーザーにも幅広い安心感を提供してくれるはずです。
また、独自クラウドストレージをフル活用したバックアップにより重要データをより強固に守ることができるため、ビジネス用途でデバイスをフル活用するユーザーにもおすすめできます。
こんな方には向いてないかも
パワーが低いデバイスで利用する場合、メモリ消費が若干多めなのが気になるポイントです。
エントリークラスのデバイスで無理なタスクを実行させるユーザーは多くはないと思いますが、例えばメインメモリが4GB以下のWindows PCなどでは空きメモリの確保が厳しくなるケースが出てくる可能性が高いでしょう。
PCのスペックがギリギリのユーザーには、あまり向いていないかもしれません。
まとめ
久々にノートンを使用して、真っ先にアクセスするダッシュボードの洗練度合いにまず驚きました。他ではあまり見ない使い勝手ですが、分りやすくシンプルでキレイにまとめられたUIです。
試用した範囲では操作感も上々でトラブルも全くなく、色々な悪評は通常は過去のものに感じます。第三者機関による高評価は、伊達ではないことが理解できました。
どなたにも安心しておすすめできるセキュリティソフトという印象です。
刷新されたUIの中にも「ノートンらしさ」はしっかり残っていて、久々のノートン先生にはどこか懐かしさも感じられるレビューになりました。