問題をおさらい!
正解はこちら!
【答え】いすゞ自動車「フローリアン」
答えは、いすゞ自動車の「フローリアン」(Florian)です。
フローリアンは1967年に誕生した上級4ドアセダンです。それでも、サイズとしては5ナンバー車でした。当時は今日ほど3ナンバー車が多くない時代でしたが、その中でも大衆車や小型車、中型の上級車といった区別がありました。
フローリアンの競合といえるのはトヨタ自動車「コロナ・マークⅡ」や日産自動車「ローレル」などでしょう。ただ、当時の国内市場はトヨタと日産が2強で、いすゞは「ベレット」などの個性的な小型車や「117クーペ」といったスペシャリティカーで存在感を放っていたものの、量産販売ではそれほど中心的な存在ではありませんでした。
それでも、フローリアンが名を成した背景には、イタリアのカロッツェリア(車体の設計やデザイン、製造を専門とする会社)である「ギア」の手による造形を採用した点があります。いすゞは117クーペや「ピアッツァ」でデザインを「イタルデザイン」(ジョルジェット・ジウジアーロのカロッツェリア)に依頼するなど、欧州車の風合いや魅力を重視していました。
「6ライト」(片側のサイドウィンドウが3つあり、左右あわせると6つの明りとりになる)と呼ばれる横から見た姿は、当時の他社ではあまり見られない造形で、フローリアンを独特の存在にしました。
室内は後輪駆動でありながら他車に比べて広く、居住性のよさが売りのひとつでした。
室内のダッシュボードのメーターは楕円形の縁取りで、ダッシュボード上に取り付けた時計も楕円形であるなど、車内の雰囲気づくりに洒落た趣がありました。
機能面ではフルリクライニングのシートを採用していました。前席の背もたれを後へ平らになるまで倒せば、後席の座面と一体になり、くつろぎの空間が出現するという仕組みでした。今日でいうハイトワゴン車やミニバンのような、座席の多様さを備えていたのです。
エンジンは「ベレットGT」の高性能仕様をベースに上級車種に適合させたものを搭載。車体寸法は上級でありながら、軽く仕上げた車両重量(1トン以下)に十分な性能をもたらしました。ベレットで評判を得た走りのよさが、フローリアンのもうひとつの魅力でした。
フローリアンという車名は、当時も一般にはなじみの薄い名でしたが、由来はオーストリア皇帝の愛馬(白馬)だといいます。
当初は排気量1.6リッターの直列4気筒ガソリンエンジンでしたが、のちに1.8リッターに排気量を拡大。最終的にはディーゼルエンジン搭載車も登場したりしましたが、タクシーなど業務用はあまり想定しておらず、個人向けのみでの販売には限度があり、1982年に製造を終えることになりました。それでも、15年の長寿です。
当初のフローリアンは四角い2灯式ヘッドライトであり、写真のクルマは1970年のマイナーチェンジによる丸形4灯のものと思われます。
フローリアンの後継として1983年に登場したのが「アスカでした。
それでは、次回をお楽しみに!