運転席と助手席がそれぞれ独立した近未来的なスタイルが目を引く「アズテック」は、ジウジアーロの作品の中でも独特な雰囲気を持つ伝説的なクルマだ。生産台数はたったの18台で、希少性も相当なものである。
ドライブ中の会話はどうする?
1988年の「トリノモーターショー」に登場した「アズテック」。最大の特徴は、運転席と助手席がそれぞれ独立した「ツインキャノピー」というスタイルを採用していることだ。それぞれの乗員は、ヘッドホンとインカムを使用して会話するシステムになっている。
アルミ製のボディサイドにコントロールパネルを備えているのもユニークな点。そこに記された3桁のコードを入力することで、車高のレベル調整や懐中電灯など、特定の機能を作動させることができる。12Vのソケットやベンチレータースイッチ、アナログメーターなども同じ場所に配されている。
ミッドシップに横置き搭載するエンジンはアウディ製の直列5気筒ターボ。側面のパネルには、赤い文字で最高出力250HPと記されている。駆動方式はランチア「HFインテグラーレ」から流用したフルタイム4WDだ。
日本に現存するのはたったの1台?
イタルデザインの共同創設者である宮川秀之氏が独占販売権を取得し、50台を生産。日本でも販売する予定だったが、エンジンのクーリング問題に時間がかかったこと、価格の高騰、バブル崩壊などが重なり、計画は頓挫した。結局、生産されたのは18台で、日本にも1台が現存している。展示車の右フロントウインドーに緑の車検証が貼られているのがその証拠だ。
市販車としては成功しなかったアズテックだが、前衛的で未来感のあるそのデザインはインパクトがあり、伝説的存在になっている。