日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会で1日に計5台の電気自動車(BEV)に乗ったクルママニアの安東弘樹さん。エレトレRやG580などの個性あふれるBEVを次々に試乗したあと、最後に乗ったのがボルボ「EX40」でした。2024年に復活したツインモーターAWDモデルを安東さんはどう見る?
ボルボ・カー・ジャパンは2024年9月、BEV「XC40 Recharge」の名称を「EX40」に変更し、オンラインで販売を開始しました。「XC40 Recharge」はコンパクトSUV「XC40」をベースにしたBEVで、2022年に日本で発売となったクルマです。
EX40への名称変更に合わせて、前後にモーターを搭載する「ツインモーター」のAWD(全輪駆動)が日本に再導入となりました。安東さんが乗ったのはこのモデルです。
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「EX40」にはシングルモーターRWD(後輪駆動)の「EX40 Plus Single Motor」(679万円)、「EX40 Uitra Single Motor」(719万円)とツインモーターAWDの「EX40 Ultra Twin Motor」(789万円)という3つのタイプがあります。安東さんが乗ったのは「EX40 Ultra Twin Motor」です
強力なリアモーターが真価を発揮? 上り坂が楽!
――このボディカラー、おしゃれですね!
安東さん:アースカラーが流行っていますね。
――EX40にはどうして試乗してみようと思ったんですか?
安東さん:ボルボのBEVは「C40」「EX30」と乗ってきたんですけど、ツインモーターのモデルはまだ乗ったことがなかったので、試してみたいと思いました。
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「EX40」のボディサイズは全長4,440mm、全幅1,875mm、全高1,650mm、ホイールベースは2,700mm。車両重量は2,160kg。ボディカラーは名称変更時に新たに加わった「サンドデューン」です
――さすがにツインモーターだけあって、ハイパワーな印象ですね。
安東さん:そうですね。まずまずの加速です。
――このクルマはEX40の上級グレード「Ultra」のツインモーターで、価格は789万円です。
安東さん:まあまあ、しますね。
――バッテリーの総電力量が78kWh。
安東さん:これも、BEVの中では中堅って感じですね。
――フル充電での航続距離が560kmです。
安東さん:電費がいいんですね。
――性能は最高出力がフロントモーター150PS、リアモーター258PS、最大トルクが前252Nm、後420Nmだそうです。
安東さん:リアモーターの方が強力なんですね。トルクも大したものです。先ほど乗った「マカン4」(ポルシェ)並みと言えますね。
――単純に前後で足し算をして大丈夫であれば、マカン4を凌駕するほどの性能ということになりますね。
安東さん:スピードが200km/hまでしかメーターに刻まれていません。このあたりは控えめですね(笑)。
――ボルボは安全上の理由から世界中のボルボ車の最高速度を180km/hに制限しているらしく、それでスピードメーターも200km/hまでしか表示していないそうですね。
安東さん:現在、メーターの表示がバッテリー残量75%、残りの航続距離が280kmとなっています。これは……そんなによくないですね。
安東さん:ツインモーターだけあって、力強い走りです。
――それってオーバースペックですか? それとも、このくらいパワーがあったほうが運転しやすいですか?
安東さん:やはり、このくらいパワーがあったほうが嬉しいですね。運転していて危なくないと言いますか、危険回避にも役立ちますし、高速道路への合流もしやすいですから。高速道路での追い越しにしても、加速がいいとすばやく済ませることができます。
それと、ツインモーターは上り坂が圧倒的に楽に感じます。上り坂での「軽さ」は、今日乗ったクルマの中でEX40が一番だと思います。パワーで登っているというよりも、軽やかに登っていく感じです。
加速のよさはマカンと遜色ないですね。ただ、車内の作りはマカンよりもさらにシンプルだと感じます。
――シンプルかつクリーンで好き、という方もいらっしゃるんでしょうけど……。
安東さん:色気みたいなものは、あまり感じませんね。ただ、車内が妙にゴテゴテしていないので、身の丈に合った感じがすると言いますか、乗っていて安心感があります。そこまで豪華ではないけど、リラックスできるという感じです。
安東さん:回生ブレーキの強さは「オート」という表示です。前にクルマがいると、回生ブレーキの効きが強くなるモードですね。下り坂に差し掛かったのですが、今のところ全く回生ブレーキが効いていないようです。
――前にクルマがいないから、自動的にコースティング状態になっているんですね。
安東さん:こういう時は、やっぱり手動で回生ブレーキの効き目を調節できた方がいいと思います。
――回生しながら坂道をくだっていきたいのに、それができないというのはもどかしいですね。
安東さん:コースティングだと制限速度をオーバーする可能性もありますしね。逆に、前にクルマがいると、けっこう減速します。やはり、勝手に回生ブレーキの強さを調節されるよりも、自分でコントロールできた方が、私は好きです。前走車を捉えたときの減速の制御はしっかりとしたものですが、自分の感覚として、もっと前から減速したい場合もありますから。
――前のクルマがコーナーで視界から消えると回生が弱まる、みたいなことが起きると、けっこう怖いですしね。
安東さん:クルマに任せてもいいシーンも、あるにはあると思うんですが……。やはり、自分でやりたいです。
あえてツインモーターを選ぶ意義はある?
安東さん:オッケーグーグル。シートヒーターを消して。
――EX40(Google搭載)の音声アシスタント:はい、運転席のシートヒーターをオフにします。
安東さん:音声認識は圧倒的に優秀です。これなら、何にも困りませんね。すばらしい。
――安東さんは普段から、スマホで調べ物をするにも音声入力を活用していらっしゃるようですね。クルマとスマホだと、音声認識の能力にかなりの差がありますよね。
安東さん:スマホの場合は精度がいいので、あまりストレスを感じたことがないですね。
――その点、ボルボのクルマは基本的にGoogle搭載ですから、音声による操作のしやすさは群を抜いていますね。
安東さん:Googleマップなので、ナビも使いやすいです。検索窓に履歴が出るのが便利ですね。もっと多くの自動車メーカーがGoogleを採用すればいいと思うのですが、なぜそうならないんでしょうね。
――私もインフォテインメント周りはGoogle搭載車が圧倒的に使いやすいと思います。Googleに支払う利用料が高い、とかいうような事情でもあるんですかね? それでも、自前で開発するよりは安く済みそうな感じがしますが……。
――EX40にはシングルモーターもあって、そちらで十分なのではとの見方もあると思うのですが、試乗してみて、ツインモーターを選ぶ意義はあると思われましたか?
安東さん:あると思います。もともと私は、エンジン車であっても、車高が高くて重心が高いSUVのようなクルマは絶対に四輪駆動であるべきだと考えています。走りの安定感が増すからです。EX40にツインモーターのAWDが加わった意味は大きいと思います。