生前贈与の持ち戻し期間が7年へ延長されたことで、「もう相続対策は難しい」と感じる人も少なくありません。しかし、国が用意している非課税特例を活用すれば、相続発生直前であっても持ち戻しの対象とならない方法があります。ここでは、期限付きで利用できる2つの特例と、生命保険を組み合わせた資産移転の考え方を紹介します。
「2大特例」を活用して手堅く資産移転
――7年という長い持ち戻し期間が設けられた今、法定相続人だけでなく孫や曾孫も含めた資産移転が重要になると思います。現時点で推奨できる、手堅い資産移転の方法を教えてください。
岩永氏:ご指摘のとおり、7年という長い持ち戻しリスクに過度に怯える必要はありません。国が用意している特定の「贈与の特例」を賢く活用すれば、相続発生の直前であっても持ち戻しの対象とならず、一度にまとまった資産を相続財産から切り離すことが可能です。
残念ながら「教育資金の一括贈与の特例」の新規受付は終了しました。そこで現在、準富裕層以上の一族に最優先でおすすめしているのが、次の2つの特例です。
特例1 住宅取得等資金の贈与の特例【2026年12月末まで】
子や孫・曾孫がマイホームの購入や新築、リフォームを予定しているなら、この特例が最優先の選択肢になります。
メリット
直系尊属(父母や祖父母)から住宅取得資金の贈与を受ける場合、省エネ等住宅であれば最大1,000万円まで贈与税が非課税となります。
この非課税枠で贈与された資金は、生前贈与加算(7年)の対象外です。
注意点
現行制度では2026年12月31日までの贈与が対象となります。また、「贈与を受けた年の翌年3月15日までに入居・申告すること」が必須条件です。
今年中に住宅購入や着工を予定している子や孫・曾孫がいる家庭では、相続税対策として短期間で大きな効果を期待できる制度といえます。
特例2 結婚・子育て資金の一括贈与の特例【2027年3月末まで】
孫や曾孫がこれから結婚や出産、子育てを迎える世代であれば、この制度も有力な選択肢です。
メリット
18歳以上50歳未満の子や孫に対し、結婚・子育て資金を信託などの専用口座へ一括贈与できる制度です。
結婚資金は300万円まで、子育て資金を含めると最大1,000万円まで贈与税が非課税となり、この非課税枠も生前贈与加算(7年)の対象外です。
注意点
制度の新規受付は2027年3月31日まで延長されています。
なお、贈与者が亡くなった時点で使い切れていない残高は相続税の対象となるため、資金計画を踏まえた活用が重要です。
「特例による一括移転」と「生命保険」を組み合わせる
――2つの特例を活用した後は、どのような資産移転が望ましいのでしょうか。
岩永氏:これらの特例を活用しつつ、私たちが推奨するのは「生命保険契約による資金ロック」と組み合わせる方法です。
ライフイベントが近い場合は特例を優先
住宅購入や結婚・出産など、近い将来に資金が必要な場合は、「住宅取得資金の特例」や「結婚・子育て資金の特例」を最大限活用します。
国が認めた非課税制度を利用することで、まとまった資金を一度に次世代へ移転できます。
すぐに使う予定がない場合は生命保険を活用
一方、当面使い道がない場合や、贈与した資金を浪費してしまうことが心配な場合は、生前贈与加算の対象外となる孫・曾孫へ暦年贈与を行い、その資金を「孫・曾孫自身が契約者兼保険料負担者となる生命保険」の保険料に充てる方法が有効です。
現金を口座に置いたままにせず、将来のための資産として管理しながら引き継ぐことができます。
時代が変われば、資産防衛のルールも変わります。
「どの特例がいつまで利用できるのか」という期限を正確に把握し、「特例による一括移転」と「生命保険による継続的な資産管理」を一族全体で組み合わせることが、これからの相続対策の新常識になるでしょう。


