「35歳以下のクルマ好き」が集まるイベント「YOKOHAMA Car Session 2~若者たちのカーライフ~」には、1980年代に日産自動車が送り出した個性的なパーソナルカー「エクサ」のオーナーがいた。いまや希少車だが、選んだ理由は? 維持するうえでの苦労なども聞いてみた。
リアのパーツは変更可能! 2つのスタイルを実現
1980年代の日本では、バブル景気の後押しもあり、各メーカーが個性的なクルマをいろいろと送り出していた。そのひとつが、トヨタ自動車「カローラ」のライバルとして日産が「サニー」とともに販売していた「パルサー」のバリエーションだ。
パルサーは日産初の前輪駆動車だった「チェリー」の後継車として誕生。初代は3ドアと5ドアのハッチバックおよび3ドアクーペがあったが、2代目では4ドアセダンの追加とともに、クーペが「エクサ」のサブネームを持つ車種に切り替わった。
「パルサーエクサ」はそれまでのハッチバッククーペではなく、垂直に近い角度のリアウインドーを持ち、リトラクタブルヘッドランプの採用もあって、ミッドシップのスポーツカーを思わせるフォルムだった。100台限定でコンバーチブルも作られた。
今回紹介するエクサは2代目で、3代目パルサーのクーペ版として生まれたが、パルサーの名はつかず、独立した車種になった。特徴は復活したリアゲートで、「クーペ」とスポーツワゴン風の「キャノピー」の2種類を用意していた。
しかも、国内向けはどちらかを選ぶ形だったが、北米ではこの部分を付け替えることが法律上可能で、クーペとワゴンの2つのスタイルが楽しめる二刀流だった。
加えてエクサにはTバールーフが標準装備されていた。当時のスポーツカー「フェアレディZ」にも装備されており、前席頭上のルーフが左右2分割で脱着可能で、ボディ剛性を保つために中央部にフレームを残したものだ。
運転免許を取る2年前に初の愛車として購入
地元神奈川県に住む22歳の大塚さんは、エクサが初めての愛車だという。
「父親が乗っていたことがあって、そのときの写真を見たりしているうちに、自分でも乗りたくなりました。今から6年前、まだ運転免許を取る前だったのですが、親に頭を下げて、『アルバイトでお金を自分で稼ぐから家の前に置かせてほしい』と言って、買うことを認めてもらいました」
生産終了から20年近く経っていたこともあって、なかなか見つからなかったそうだが、カーセンサーに群馬県のお店が出している個体を発見。雑誌の発売日にすぐに電話して見に行き、購入を決めたという。価格は60万円だったそうだ。
購入時の走行距離は10万kmで、その後4万kmを上乗せした。運転免許を取ったのが4年前なので、年間1万kmは走っていることになる。ただし、順調に距離を重ねているとは言えないようだ。
「トラブルとしてはタイミングベルト切れ、パワーステアリングやエアコンの不調などがありました。部品はないですし、直してくれるところもありません。自動車整備の専門学校に行って、今は自動車関係の仕事に就いていますし、去年までは学生でお金がなかったので、自分で直したりしています」
Tバールーフからの雨漏りもあるそうで、養生テープを貼ってやり過ごし、次の日に全開にして乾かしたりもしているとのことだった。
意外に便利なキャノピースタイル
それでも乗り続けているのは、気に入っているからだろう。今後、どうしようもない故障を起こしたら乗り換えを考えるかもしれないが、いまのところ、新しいクルマにはあまり興味がないとのことだった。以前、ガソリンスタンドのアルバイトをしていたときに、いろいろなクルマに触れることができたけれど、旧いほうが自分に合っていると感じたという。
そしてもうひとつ、乗り続けている理由として、他車ではおそらく体験できないであろう、キャノピータイプのリアゲートならではの使い勝手があるようだ。
「けっこう便利です。荷物はめちゃめちゃ載るし、車検証では4人乗りなので、リアシートは狭いけれど、我慢して後部座席に乗ってもらったりもしています。自分にとっては足代わりなので、これで学校に行ったし、今も買い物に使ったりします。遠出もしていて、名古屋まで足を伸ばしたことがあります」
エクサといえば、最初のほうで書いたように、ボディは共通でリアゲートのパーツを替えることにより、クーペとキャノピーの2つのスタイルを実現していた。
実は大塚さん、クーペのパーツも持っているという。インターネットのオークションで手に入れたそうだ。お父さんが乗っていたのはクーペだそうで、ご本人もどちらかというとクーペのほうが欲しかったそうだが、ビジュアル的には他にはないスタイルのキャノピーが気に入っているとのことだった。