不透明な時代の中で、企業・組織がさらに成長していくために注目すべきキーポイントはやはり「人」だ。2021年6月2日、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供する株式会社SmartHRの主催でWebセミナー「人事労務改革から始める『働きやすくサステナブルな組織』への変革のステップ」が開催された。
この時代に人事部門は何を考え、何をなすべきか。「SmartHR」を活用して人事労務管理を行うユーザー企業担当者や人材育成・活用に詳しい識者が、未来に向けて魅力的な組織づくり実現のヒントを提示した。
変化に対応し、強い組織をつくるために
Webセミナーは、元株式会社資生堂 代表取締役で昭和女子大学 客員教授の末川 久幸氏による基調講演からスタートした。新型コロナウイルスの感染拡大であらゆる企業が働き方改革を進めなければならない中、成長を実現していくために最も重要な経営資源はやはり「人」であり、その力を引き出していくことが経営にとって、また人事部門にとって大きな課題になると末川氏は語った。
コロナ禍の影響でリモートワークが広がったことで対面の機会が減り、多くの企業が職場内コミュニケーションに課題を感じている。末川氏は「チームのリーダーは従来のように上からの指示・命令の押し付けではなく、日々の対話による質の高いコミュニケーションを実践してメンバーを理解することが不可欠」と指摘。その上でリーダーとしてはビジョンを示し、問いかけによってメンバーの背中を押すリーダーシップが有効だと提起する。
「メンバーが本当にやりたいこと(Want to)を探し、そこを起点に“やらされ感”からの脱却につなげていくことが何よりも大切だと考える」と末川氏は語った。
ユーグレナが語る、SmartHR活用法と新たな取り組みとは
続いて、導入事例セッション「SmartHR活用で実現するリソース確保と人事データの一元管理」に移った。SmartHRを導入した株式会社ユーグレナ 管理部 人事課の服部 和正氏と岸本 真氏が登場。株式会社SmartHR執行役員・SmartHR 人事労務 研究所 所長の副島 智子氏がモデレーターを務め、ユーグレナの労務環境と課題、そして取り組みを紹介していった。
同社がSmartHRを導入したのは2017年のこと。同年新卒入社の岸本氏は、それ以前の人事労務管理について「導入前は社員から情報を紙で受け取り、人事でその情報を手入力して、押印、郵送といった手続きを行っていました」と語る。この時代の課題については「業務が属人化しており、経験がある人だけできる業務という位置づけでした」と服部氏も振り返った。そこで同社は、業務の効率化に加えて業務知識・経験のないスタッフでも作業ができるように、業務平準化を目指してSmartHRを導入した。
SmartHR導入によって手入力がなくなり、紙に頼っていた作業が効率化されただけでなく、SmartHRのAPI連携を活用して勤怠や給与システムに同じ情報を重複して入力する手間をなくした。
「SmartHRでこれほどまでに時間の使い方が変わるんだと実感しました。空いた時間を業務の可視化など他の仕事に回せるようになりました」と岸本氏。資格取得・喪失や育児休業給付金、賞与などの手続きについてもSmartHRの機能で電子申請を実現したことで、業務改善が一気に進んだという。また業務平準化の点でも、SmartHRの操作さえ覚えれば業務ができるようになったと服部氏は評価した。
さらには2020年10月から、SmartHRを活用した新たな取り組みも進めている。
「それまではグループ各社が独自に一部業務をアウトソースしていました。ある会社では給与計算を外部に委託・社会保険手続きは自社対応、別の会社は給与計算・社保手続きともに外部委託、また別の会社はすべてを自社対応といったように、とにかくバラバラでした。そこで、グループ全体で給与計算・社保手続きのいずれもアウトソース先を統一し、一元管理しました」(岸本氏)
そもそもアウトソースは、専門業者に委託することで法改正にタイムリーに対応する、業務の正確性を確保する、属人化を解消する、正社員をコア業務にシフトするといったことが目的だった。
「個々のグループ会社でアウトソースを実施しても、メリットはそれほど大きくありません。その点、グループ全体で統一すればメリットがより大きくなり、ペーパーレス化、環境対応といったサステナビリティやコスト観点でも効果が顕著になる考えがあり、この施策を始めました」と服部氏は経緯を説明した。
統一の効果について岸本氏はこう語る。
「1つはグループ管理コストの軽減。グループを統括する立場としてユーグレナが全体を見ることになり、人員配置の効率化・集中化でも効果を期待できます。また、委託先の統一で業務が平準化するので、グループ内交流もしやすくなるでしょう。さらにはいま取り組みを進めているグループ全体の人材データベース作成にも役立ちます」
人材データベースの取り組みはスタートしたばかりだが、SmartHRで社員情報を自動集計できるため、すでにかなりの効率化を実感しているとのことだ。
最後に、今後の人事労務への期待について岸本氏はこう話した。 「私の場合は労務からキャリアをスタートしましたが、業務をSmartHRに集約したことで、労務の知識をつけながら人事制度や採用、教育などへ人事キャリアを広げられると考えています。実際、私自身がいまキャリア拡大にチャレンジしているところです」
ユーグレナとSmartHRの組織づくりにまつわる取り組みとは
セミナーの最後に用意されたのは「魅力的な組織づくりへの歩み」と題したパネルディスカッションだ。ユーグレナとSmartHR社が人事の取り組みを複数あげ、視聴者からどの制度について詳しく聞きたいか募った結果、投票数が多かったものについて両社担当者からの解説が繰り広げられた。
ユーグレナで最多票を集めたのは「コロナ禍の新人研修」。同社管理部 人事課 課長の永井 慎也氏は次のように説明した。
「当社はリアルコミュニケーションを大事にしており、現在も週2日のオフィス出社体制を維持しています。その中でどうしても研修と現場が乖離しやすいため、より実践的な研修を通し、大切なことや仕事の進め方を学んでもらう形を始めました。以前は現場での営業研修を実施していましたが、難しくなったので、コロナ禍で発生しているコミュニケーション不足などを始めとするさまざまな課題に対して解決策を考えてもらうなど、オフラインにオンラインを絡めた研修に切り替えました」
入社時からリモートワークが多い状況では、社員の顔と名前を一致させるのが難しく、会社の雰囲気もなかなか体感できない。この研修ではオンラインで知識のインプットを行う一方、リアルの場で社員にインタビューすることなどを通じて、仲間と会社を理解し、仕事の学びにもつながっていると永井氏は成果を強調した。現在は拠点間移動もままならない状況であるため、研修のプロセスで拠点の様子を動画に撮り、体感できるバーチャルツアーを作成。その活用がいま新人研修以外にも広がっているという。
一方、SmartHR社で1位となったのは「組織サーベイ」。同社では毎月、SmartHRの機能を利用して従業員サーベイを行っている。同社執行役員の薮田孝仁氏が解説する。
「毎月15問程度の質問に回答してもらい、その内容を人事部門で分析してレポートにまとめ、フィードバックしています。結果を見て全体傾向を社員に説明するだけでなく、マネージャーの課題改善にも活用しています」
人事部門としてはレポートを毎月作成するため決して楽な作業ではないが、マネージャーからはチーム運営に役立っているとの声があるほか、コロナ禍でリモートワークが増えた現在は重要性をより強く感じているという。
このあと、ユーグレナで投票2位の「株式報酬制度」、SmartHR社で2位の「手当に対する考え方」についても両社から説明が行われた。ユーグレナの「株式報酬制度」は希望する社員が報酬の一部を現金ではなく自社株で受け取れる制度。これは社員が経営者目線で仕事に臨むようになるという効果を期待したものだ。対してSmartHR社の取り組みは、役職手当や結婚祝い金は「ない」というもの。役職手当を支給しないのはキャリアチェンジをしやすくするためであるなど、ポリシーを社員にきっちり説明したうえで制度の改廃を行っているという。
最後に、基調講演を行った末川氏が「企業にとってこれからも人という経営資源が最も大事だということは変わりません。どんな時代になっても、あるいは対面・リモートとツールは変わっても、その先にいるのは必ず人。人のパフォーマンスを最大化できる会社になっていただきたいと思います」と語り、今回のセミナーを締めた。
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