――プログラミングにはパソコンが必須ですが、子どもに使わせるとしたら、どのようなものを選ぶべきですか?

たにぐち氏:どれを選ぶかの前にひとつ覚えておいてほしいのは、「パソコンは消費するものであり、数年ごとに買い替えるものだ」ということです。

たとえば今20万円で売っているマシンと同じ性能のものが、2年後には10万円で買えたりと、パソコンの性能はどんどん上がります。ですから、子どものうちには数十万円もするような高価なマシンは不要で、スキルアップに合わせて適切なパソコンを与えてあげた方がよいでしょう。

また、「親子兼用で1台」という考え方もありますが、子どもが使いたいときに使えないという状況が発生してしまうと、それがストレスになる。学習という側面から見ても、やはり子ども専用のパソコンがあった方が良いと考えます。

――学校だけでなく、家庭でもコンピューターのことを教えるべきでしょうか?

たにぐち氏:それは絶対にやってあげてほしいですね。保護者の方にもプログラミングのことを知ってもらいたいですが、私としては子ども達にその知識自体を教えようとするのは、先の興味を長続きさせるという意味では、うまく行かないように思います。それよりも、子ども達がプログラミングを学ぶ過程で疑問を抱いたとき、コンピューターの“中身”のことを教えてあげられるようにすると良いと思います。

「パソコンの中にはCPUやメモリがある」といったハードウェアの話や、「プログラミングで変数に値を持たせると、いったんメモリに保管され、それをHDDやSSDに保存する」といった仕組みを勉強しておくと、すんなり答えられるようになると思います。こうして、子ども達の疑問を解消することで、コンピューターというもの自体を理解させる。それは、その子の将来にとって、プログラミング以外にもロボット、自動車や宇宙工学など、あらゆる分野に応用できる知識を身につけさせると思いますね。

ただし、保護者の方もしっかりと勉強する必要はありません。大人向けの分かりやすい書籍もたくさん出ているので、そうしたものを活用する。そして、子どもとコミュニケーションを取り、一緒に楽しみながら学んでみるのがオススメです。

たとえばマウスコンピューターでは、毎年夏に親子向けのパソコンの組み立て教室や、BTOマシンを実際に工場で組み立てるワークショップなどもやっていると聞きました。そういったイベントに親子で参加してみるのも楽しいと思いますよ。

私は自作パソコンが流行った時代を経験しているので、自分で組み立てることによって、コンピューターへの理解がとても深まったと感じています。そうした知識があれば、BTO(受注生産のこと。自分好みにカスタマイズできるのが特徴)でパーツを変えるとき、どれを選ぶとどれだけパワーアップできるか理解したうえで注文ができますから、コンピューターの仕組みに詳しくなるメリットは大きいと思います。

――最後になりますが、子どもたちがコンピューターについて見識を深めていくことで、将来何が変わると思いますか?

たにぐち氏:プログラミング教育が導入されるからといって、全員がエンジニアになるということではないと思いますし、その必要性もないでしょう。しかし、たとえばグラフィックデザイナーになりたいと思っている人がいたとして、コンピューターのことを何も知らないでデザインするのと、ディスプレイの解像度やグラフィックスのRGBなど、仕組みを理解しているのとでは雲泥の差が出るはずです。

これからの時代はすべての職業にコンピューターが関わってくると思いますから、この理解がとても重要になります。すでにシリコンバレーでは、子どものころからプログラミングの仕組みを理解していた若い起業家が成功を収め、世界を席巻している。そうした例は、日本ではまだまだ少ないですが、子どもたちがコンピューターへの理解を深めることで、世界を変えるサービスを生み出してくれるかもしれません。そう考えると、子どもたちのこれからの成長がますます楽しみですね。

――素敵な未来がきっと来ると信じましょう。ありがとうございました!