ここ10年ほどの間に皮膚科の新しい検査方法ダーモスコピー(dermoscopy)が現場に浸透してきた。ダーモスコープ(dermoscope)と呼ばれる診断用の特別な拡大鏡を使い、病患部に光を当てて、明るく見やすくしたり、血管などの組織の見え方を変えたりすることで、医師が診断しやすくする技術。
このダーモスコピーによる診療の仕方は大学の医学部で教わるものではなく、現役の医師達が試行錯誤して情報交換しながら磨き上げてきた。そのノウハウを日本の皮膚科の権威とされる先生方の協力の下、クラウドベースで効率よく学べるようにしたのが、カシオが運営する「D'z IMAGE(旧名:CeMDS)」だ。
今回は信州大学を訪れ、医員として研鑽を積んでいる白井先生と諏訪先生にインタビューし、D'z IMAGEが現場でどのように活用されているのか取材を行った。
白井先生は信州大学に来て3年目、諏訪先生は1年目。二人とも普段は病棟と外来で診療処置などを行っており、週に1回は手術日で執刀や手術の手伝いなどに従事している。月曜日と木曜日には病院のカンファレンスがあり、その準備をしたり、そこでプレゼンテーションすることもあるとのこと。
そんな忙しそうな二人の先生に、ここ10年ほどの間に浸透してきた皮膚科の新しい検査方法ダーモスコピー(dermoscopy)に対する考えや、ダーモスコピー学習ツール「D'z IMAGE」を普段どのように活用しているのか伺った。
――まずはダーモスコピーの必要性について、どのように捉えているか教えてください。
白井先生:「ダーモスコープ(dermoscope:ダーモスコピー診断用の拡大鏡)は外来で使うことが多いです。色素斑や結節を見る時には欠かせません。
例えば疾患に特異的な構築や色素のパターン、分布などがあっても、肉眼ではなかなか見えません。ダーモスコープを使えばこれらがしっかり見えますので確認には大変重宝します」
諏訪先生:「私の場合も基本的な使い方は白井先生と同じです。脂漏性角化症、色素性母斑、疣贅(ユウゼイ:イボのこと)などに利用します。基底細胞がんなどの判別にとても役立つので、皮膚科の現場に必須のツールだと思います」
――ダーモスコープでメラノーマを見たことはありますか?
白井先生:「初診では経験ありません」
諏訪先生:「メラノーマは10万人に1~2人の疾患なので、自分が初診で見つけるかどうかはほとんど出遭いの問題です」
白井先生:「もちろん、大学病院に紹介で来る患者さんは、多くは皮膚科の開業医に先に診断されていて、そこでメラノーマの可能性が高いから紹介されて来るので、そうした方に限定すると確率はずっと上がります。
ただ、外勤など他の病院でホクロが気になって来院した方を診察していて、『これはメラノーマだ』と思ったことはないです」
諏訪先生:「私も外勤で見たことはありません。信州大学に紹介で来られた患者さんを確認するときだけです」
――実際にダーモスコープでメラノーマを見たときに、D'z IMAGEで勉強したことが役立っていますか?
白井:「はい。役立ちます。とはいえ、D'z IMAGEだけでなく、書物や診療のカンファレンスでも写真や資料は見ていますので、どこで得た知識が役立ったかという振り返りはあまり意識しないですね。
どちらかと言うと、見た後でD'z IMAGEで確認していて分かりやすいと感じたことがあります」
■丸暗記ではなく自然と記憶に残る
――どんなところが分かりやすいと感じましたか?
白井先生:「D'z IMAGEでは組織と一緒に対比させていますよね。これは分かりやすくて良いと思っています。あとは佐藤先生の学習コンテンツなど見ていますが、これも分かりやすいコンテンツですね。
教科書の説明だと、写真と解説が載っていても書いてあるまま受け取れないことがあります。『こう見えるけれど、こうも見えるじゃないか』という感じですね。例えばドーム型に少し盛り上がったホクロは、基底細胞癌と似ているんですよ。でも、教科書だと『何と似ている』とまではなかなか書いてありません。
佐藤先生のコンテンツだと『鑑別に迷う』などと、正直に書かれています。こういう記述は同感できますし、分かりやすいですよ。『あ、ここで迷っていいんだ』と安心します」
諏訪先生:「私が使う時は問題を解くことが多いのですが、解答の解説で『そう見える理由』が一緒に書かれているのが良いです。『なぜそう見えるのか』『なぜ間違いやすいのか』といった理由が書かれていると、所見が書いてあって覚えるだけの学習よりも忘れにくいです。
丸暗記でも良いのですが、何かと関連付けて覚えたほうが記憶に残りますからね。丸暗記はどうしても抜けていきやすいので」
白井先生:「あとは、写真やイラストなどのビジュアルの見せ方も分かりやすいです。最初に説明文を読んでから見るとさらに分かりやすい。
教科書などでは患部の写真が載っていても、患部がその写真のどこなのか、あるいはどこからどこまでなのか分かりにくいことがあります。丸で囲んだり、矢印を引っ張ったりして『ここが患部だよ』と明示してあるものは分かりやすいです」
■医師ひとりひとりにあったペースで学習可能
――どのくらいの頻度でD'zIMAGEを使っていますか?
諏訪先生:「毎日決まった時間に使うのではなく、時間があるときにまとめて見ています。毎日少しずつは私の生活スタイルだと難しいですね。その点、D'z IMAGEは自分のペースで利用できるので助かります。利用時間は、平均すると週に30分くらいでしょうか」
白井先生:「私もそのくらいです。使うときは自宅のパソコンではなく、病院のパソコンですね。ウェブブラウザのお気に入りに登録してあって、押せばすぐに開くようになっています」
諏訪先生:「私も病院のパソコンだけです。自宅ではあまり仕事に関することにパソコンを使わないので」
白井先生:「自分で開いて参照するだけでなく、誰かが開いているときに一緒に見ることもあります。誰かが『これどう思う?』と画面を指して話題になれば、しばらく2、3人で意見交換しながら問題を解いたりします」
――テストの点数を競うツールではないので、何人かで相談しながら正解を探すのも印象に残って良い使い方ですね。コンテンツは腫瘍以外もあったほうが良いですか?
白井先生:「腫瘍以外にもダーモスコピーを積極的に使っていきたいです。皮膚科は皮膚がんなどの腫瘍の診察より、水虫や虫刺され、火傷、蕁麻疹などの診察が多いです。しかし、それらの見分けはそれほど難しくないので、典型的な事例よりも見分けづらい事例についてコンテンツを充実して欲しいですね。
例えば、湿疹や、酒渣(シュサ)などとの見え方の違いなどはもっと説明してあると嬉しい。以前、そういう説明の出ていたコンテンツも見た覚えがあるのですが、もっと多くあって良いと思います」
――最後に皮膚科医を目指す、より若手の先生や学生達に向けて、D'z IMAGEの使い方をアドバイスしてください。
諏訪先生:「ダーモスコピーは入り口が難しいんです。なので、まずはD'z IMAGEを使ってみてください。使ってみるとどうしてこのツールが現場で使われているのか分かると思います。例えば、自分でダーモスコープで患者を見た時に、それを所見でどう表現するか。これが意外と難しい。ダーモスコピーは表現しづらいんです。表現を学ぶためにもD'z IMAGEは活用できますね」
白井先生:「先程も少し触れましたが、D'z IMAGEは解説が組織と対比して書かれているので分かりやすいはずです。病理との対比をじっくり見て学んで欲しいです」
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