新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けてリモートワークが急速に普及したことで、仕事の評価や組織の在り方が再考されつつある。今後も続く激しい変化に対応し、組織として成果を出し続けるためには、働き方改革への取り組み方をステップアップする必要がある。
そうは言っても、どのように変わっていけばよいか、何に取り組むべきか、具体的にイメージできないという人も多いのではないだろうか。2月25日に開催された「マイナビニュースフォーラム 働き方改革Day 2021 Feb. ニューノーマルのマネジメント、変化を生き抜く個人と組織のあり方」では、クロスリバー 代表/キャスター Caster Anywhere 事業責任者 越川慎司氏と、サイバーエージェント 常務執行役員 CHO 曽山哲人氏が、変化に打ち勝つ強いチームをつくるために必要な3つの要素について対談した。
必要なのは「共通目標」「共通言語」「共通感情」
曽山氏は、サイバーエージェントのマネジメントノウハウや組織のコミュニケーションスキルを紹介するYouTubeチャンネル「ソヤマン - 人と組織のお悩み解決!!」を2020年12月より開始した。すでに30本を超える動画コンテンツがアップロードされているが、越川氏は特に「【上司必見】チーム作りで悩んでる人にぜひ見て欲しい。すごいチーム3つの共通項」という動画に着目する。
この動画では、成果を出し続けるチームが持っている共通項目が紹介されている。それが、次の3つだ。
- 共通目標
- 共通言語
- 共通感情
以下では、それぞれについての曽山氏と越川氏のディスカッションを見ていきたい。
組織共通の目標と個人の目標をつなげる
曽山氏が3つの要素のうち最も重要とするのが「共通目標」だ。共通目標は、「組織目標」とも言い換えることができ、その対極にあるのが「個人目標」だという。個人目標は通常の業務でも設定されているケースが多くわかりやすいが、組織目標は、「リモートワークになったことで特に見えにくくなった」と曽山氏は指摘する。
「個人の目標達成に向けては各々努力できるが、組織目標を明確にしていないと、『今月は個人の目標が達成できたからもういいや』という発想になってしまいます。組織目標と個人目標をつなげることで、各メンバーはチームのための動きができるようになります」(曽山氏)
特に昨今、注目を集めているジョブ型評価は、組織目標達成への意識を薄めてしまう可能性があるので注意が必要だ。「ジョブ型はトップパフォーマーの評価が高まり、業務が個人に依存してしまう面がある。チーム全体の評価を行うメンバーシップ型からの移行で悩んでいる人は多いのでは」と越川氏は説明する。
そこで、越川氏が提案するのが、ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッド的な考え方だ。個人の成果の重視度合いを縦軸、協力関係の良し悪しを横軸にとったマトリックス図のうち、理想的なチームは右上の象限にあたるという。縦軸はジョブ型の程度、横軸はメンバーシップ型の程度を表していると言える。
「ジョブ型を極めてしまうと、横の席の人がライバルになってしまい、組織目標が達成しづらくなります。しかし、これだけ変化が激しい時代には、1人で対応できる仕事は限られています。個人の成果を追うだけでなく、チームで解決するという意識を持たなければいけません」(越川氏)
では、どのようにして組織目標を設定していけばよいのだろうか。これに関して曽山氏は、サイバーエージェントの「プロレポ(プロジェクトレポート)」という取り組みを紹介する。半年に1回、チーム全員で組織目標を議論する機会を設け、その結果を冊子やポスターなど何らかのかたちでアウトプットし、役員会に提出するというものだ。プロレポの評価が高いチームは表彰され、賞金が贈られる。組織目標をチームで議論することで、チームメンバーの個人目標も自ずと見えてくるようになるという。
曽山氏は、「共通目標をディスカッションする文化は重要。言葉が決まりきらなくても、ディスカッションして文脈を共有すること自体がチームで働けるかどうかの分岐点となる」と、共通目標についてチーム全員が議論に参加し、自分ごととして捉えられるようになることの重要性を語った。