12月3日、4日に開催された「マイナビニュースフォーラム 2020 Winter for データ活用」では、「ニューノーマルに備えるデータ戦略」をテーマに掲げ、不確実な時代に柔軟かつ迅速に意思決定を下すために必要なデータ活用の在り方について多数のセッションが実施された。

12月4日の特別講演には、日本最大級のコスメ/美容の総合情報サイト「@cosme(アットコスメ)」を運営するアイスタイルのビューティーサービス領域 事業責任者であり、化粧品専門店「@cosme STORE」を運営するコスメネクスト 代表取締役社長を務める遠藤宗氏が登壇。「なぜ国内No.1コスメサイト『@cosme』が、巨大な実店舗をつくったのか」と題し、ネットビジネス起点のアイスタイルだからこそできる、新しい実店舗のかたちが示された。

成熟産業ながら複雑で特殊な化粧品業界

現在、日本の化粧品市場は2.2兆円という市場規模を保ちながら推移しており、ある意味成熟産業と言える。しかしながら、化粧品業界は非常に複雑だ。百貨店や専門店にはじまり、ドラッグストア、バラエティショップ、コンビニ、さらには100均、ECサイトと販売チャネルが多岐にわたる上、その価格帯も幅広い。

「そこに各化粧品の成分や、対象となる肌質、部位、年代、さらには嗜好性なども掛け合わさってくるので極めて複雑。各チャネルごとのブランド展開も一般的に行われ、チャネル別のブランド戦略が強く存在している」と、遠藤氏は説明する。

遠藤宗氏

コスメネクスト 代表取締役社長 遠藤宗氏

そんな複雑性の高い業界だけに、広告は非常に重要な要素でもあり、化粧品市場の広告費約2,700億円は全業種の10%にも達する。だが一方で、化粧品のEC化率は他業種より低い5.3%(2017年)に留まっており、11.5%がEC化されているファッションの半分にも満たないのである。

その理由について遠藤氏は、「いろいろと考えられるが、1つには『実際に試してから使いたい』というニーズが高いことが挙げられる。当面はEC展開しないとしている有力な化粧品ブランドもあり、まだまだリアルマーケットが引っ張っている業界となっている」と語る。

こうした化粧品業界の特徴についてまとめた遠藤氏は、「ただし、この数年はチャネルの概念が崩れてきている感もある。確かに成熟市場ではあるが、生活者ニーズが強くビジネスチャンスの大きな業界だと言えるだろう」と見解を示した。

データ活用から”データベース活用”へ

アイスタイルの経営理念(ビジョン)は、「”生活者中心の市場”の創造」であり、生活者からのニーズを反映した口コミや商品データベースを中心に、ネットとリアルが融合したデータベースプラットフォームの構築をビジネスの主眼に置いている。

化粧品ECサイト「@cosme SHOPPING」は取り扱いブランド数1,900、取り扱い商品数42,000(2020年11月時点)に及び、全国に23店舗を展開する@cosme STOREは「日本の化粧品専門店で売上規模はトップクラス」(遠藤氏)だという。

そんなアイスタイルにおけるかつてのデータ活用は、@cosmeのデータを店舗で活用する一方、ネットの発想で店舗を運営するというもの。早い段階から将来に備えてシングルIDで商品データベース連携を図り、ユーザーIDや商品データはつながっている状態にあった。だが、当初は@cosmeのデータを広告サービスやECサイト、店舗がただ使っているだけで、データを活用してはいるものの、集合体であるデータベースをうまく活用できていなかったという。

遠藤氏曰く、これは「まず各事業が強くなるのを優先していたから」であり、結果的にそれぞれの事業は順調に成長を遂げた。そして現在のアイスタイルのデータ活用戦略では、@cosmeを「見る、知る場所」だけではなく、それにプラスして「アクションをしてもらう場所」だと考え、ECサイトや店舗についても、単に「売る場所」ではなく「アクションしてもらう場所」となることを目指しているという。

「それぞれの事業の魅力から、質の高いデータがたくさん集まり、それらを事業間で活かせるというのがアイスタイルの強みになっています。今はデータベースを基にしたマーケティングサービスを提供する会社へと変革するべく、取り組んでいるところです」(遠藤氏)