自治体の持続的な自走を支援する! 「ふるさとチョイス」のトラストバンク

【連載】

ミッションステートメント ~企業が込めた想い~

【第11回】自治体の持続的な自走を支援する! 「ふるさとチョイス」のトラストバンク

[2019/10/30 08:00]周藤瞳美 ブックマーク ブックマーク

ソリューション

応援したい自治体を選び寄附をすると税金の優遇措置が受けられるだけでなく、地域の特産品などを返礼品として受け取ることができる「ふるさと納税」制度。

そのふるさと納税用ポータルサイトにおいて日本最大級の規模を誇るのが「ふるさとチョイス」である。同サイトは、ふるさと納税市場が爆発的に伸びる以前の2012年に立ち上がり、現在では全国1788自治体・21万点以上(2019年10月時点)の返礼品を扱っている、いわば、ふるさと納税関連サービスの先駆者だ。

運営元であるトラストバンクのミッションは、創業時から一貫して「地域とシニアをICTで元気に」。このミッションのもと、ふるさとチョイスの拡大はもちろん、さらなる事業展開を見据えている。

トラストバンク 代表取締役 須永珠代氏

今回は、トラストバンク 代表取締役 須永珠代氏に、会社およびサイト立ち上げの経緯から今後の展望までを聞いた。

<Mission>
ICTで地域とシニアを元気に
(元気にするとは「ヒト、モノ、お金、情報」が循環している状態です。)

<Vision>
自立した持続可能な地域をつくる
(自治体が自らの力で持続的に自立・自走できる状態です。)

ビジネスのアイデアがない状態で起業、行き着いた先は「ふるさと納税」

資本金50万円、オフィスは自宅マンションの一室、従業員は自分一人——30代のうちに起業することを決めていたという須永氏は、事業内容を明確に定めないまま会社を立ち上げた。

もともとWebデザイナーとして働いていた経験があったため、ICT領域で事業を展開していくことは決めていたというが、当時はWeb上にどんなコンテンツを載せるべきか、商品や販路はどうするべきかというアイデアもなく手探りの状態だった。

須永氏は群馬県伊勢崎市の出身。トラストバンクのミッションは、帰省した際に父親から怒られたときの言葉が元になっているという。

「実家の電気製品が壊れたので、私は大手インターネット通販サイトで購入しようとしたんです。すると父親に『近くの電気屋さんで買ってきなさい。そうしないと地元にお金が落ちない』と怒られました。インターネット通販のほうがずっと安いし、重いものを持ち運ぶ必要もなく便利なのに、父親は何を言っているんだろう? と、そのときはあまりピンと来ませんでした。しかし、後日改めて考えてみたときに、首都圏に集まりすぎたお金を地域に流して循環させることの重要性に気づいたんです」(須永氏)

その後、須永氏は、IT×地域という軸でビジネスアイデアを模索。自身が作ったマインドマップの端に記載されていたのが、「ふるさと納税」だ。

都心にいながらも地方自治体に事実上の納税ができる同制度は、まさに首都圏から地域へお金を流したいという須永氏のアイデアを実現しているものだった。創業から5カ月後、須永氏はふるさと納税のポータルサイトをオープンした。

当初のふるさとチョイスは各自治体のWebサイト内にあるふるさと納税ページをまとめたリンク集だったというが、寄付者からの申し込みフォームを設置し、クレジットカードなどで、ふるさとチョイスから直接自治体への寄付を申し込めるようにした。

FAXか郵送でしか受け付けられず、思うように申し込みを伸ばせずにいた自治体から引き合いがあり、設立から2年目には契約自治体数100を超えた。そこからはふるさと納税の市場規模拡大に伴い、ふるさとチョイスの流通額やページビュー数も順調に伸びてきた。

自治体の担当者までもが口にする、創業時から一貫したミッション

冒頭に挙げた経営理念のうち、ビジョンを決定したのは2017年頃だというが、ミッションは創業時から一貫している。

社員からは「ミッションがこんなに明確な会社で働いたことはこれまでになかった。どこに向かっていけばよいかが明確で仕事をしやすい」という意見が出るなど好評だ。

また、須永氏によると「トラストバンクのミッションは”ICTで地域とシニアを元気に”でしたよね」と自治体の担当者からコメントをもらえることもあるという。取引先やユーザーに覚えてもらいやすいことも、このミッションの特徴だ。

「何のために寄付を集めるのか?」というユーザーや自治体の疑問に答えられるものになっているのがその理由だろう。

一方、ビジョンに対しては「共感性の強い自治体と弱い自治体がある」と須永氏。そして「トラストバンクが思い描いている世界に共感していただける自治体と一緒に成長していきたいですね」と続ける。つまり、ビジョンは外部に向けたメッセージという意味合いが強いものになっている。

「ふるさと納税のお金が地域にただ流れていくだけでは意味がありません。そのお金をどう活用するかが何より大事なんです。何も考えずに使っていれば、東京の企業や団体にすぐに戻っていく可能性が高い。でも、工夫して使えば、持続可能な地域をつくっていくことができるかもしれません。ビジョンには、そうした気概のある地域と一緒にやっていきたいというメッセージを込めました」(須永氏)

さらなる事業展開で、地域にヒト・モノ・カネが循環する流れを

トラストバンクは2018年、ITコンサルティングなどを手掛けるチェンジの傘下に入った。

この意図について須永氏は「ふるさとチョイスのビジネスは、クラウド型のITツールを自治体へ導入した事例という見方もできます。他のITサービスも同じように自治体に対して展開していきたいと考えたときに、自治体向けクラウド事業のノウハウを持つチェンジと連携することで、スピード感をもって取り組んでいけると考えました。今後は協働して行政の業務改善を支援するパブリテック事業を進めていきます」と説明する。

地域にヒト・モノ・おカネ・情報が循環する流れをつくり、自治体が自立・自走できるようにするため、ふるさとチョイスの拡大やパブリテック事業はもちろん、地域通貨や電力といった事業を展開するなど、地域経済循環の実現に向けてさまざまな取り組みを進めていく考えだ。

ふるさとチョイスは、来年にも累計流通総額1兆円を超える。同サイトを通じて、これまで地域に1兆円ものお金が流れているということだ。

「多額の手数料などをとるビジネスではないので、私たちにお金が溜まっているわけではありません。私たちを通してお金が地域に循環しているという状況が生まれていることが何より大切なのです。そうすることでお金は貯まらなくても、『信頼』が貯まると考えています。信頼が貯まれば社会に貢献できることが増えていくはず。会社名の由来は、そこにあります」(須永氏)

自治体と積み重ねてきた「信頼」を軸に、トラストバンクはこれからも地域に貢献するサービスを提供してくれるだろう。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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