「AIは現場の課題解決手段」- 創業100年の老舗食堂がAI導入に成功したワケ

[2018/08/27 08:00]周藤瞳美 ブックマーク ブックマーク

ソリューション

AIコンサルティングを手がけるベンチャー企業のレッジは7月26日、六本木アカデミーヒルズにてAIカンファレンス「The AI 2018 2nd」を開催した。本稿では、日本マイクロソフトによる講演「日本の事業価値を(再)創造するマイクロソフトAI」の様子をレポートする。

同講演では、日本マイクロソフト シニアプロダクトマネージャー 横井羽衣子氏が登壇。飲食店のAI活用事例について紹介した。

日本マイクロソフト シニアプロダクトマネージャー 横井羽衣子氏

創業100年の老舗食堂は、知る人ぞ知るIoT企業!?

昨今のAIブームの背景には、多様でかつ膨大なデータが蓄積されるようになったこと、またクラウドによる計算能力の向上により事業規模に関わらず個人でもAIを活用できるようになってきたことなどがある。

ただし、現状のAIが示すものは相関関係であって、因果関係ではない。データから得られた結果に意味をあたえるのは、我々人間の仕事だ。

横井氏は「AIが人間の仕事を奪ってしまうかもしれないという話もあるが、今は人間の判断なくしてAIは活かせないし、何も生まれない」と強調する。

横井氏は、AI活用の成功事例として、三重県・伊勢市で食堂や商店などを営む創業100年の老舗企業「ゑびや」を取り上げる。

中小規模の飲食・小売店は経験に基づく”勘”によって運営されていることが多いが、ゑびやはAIとビッグデータを活用して劇的な経営改革を実現している「知る人ぞ知るIoT企業」(横井氏)だ。

ゑびやが運営する「ゑびや大食堂」では、長方形のブロックを倒すだけで顧客の要望が店員のウェアラブルデバイスに通知されるシステムやタブレットでのオーダーシステムを導入することで、完全ペーパーレスを実現している。

同食堂ではもともといくつかの課題を抱えていた。たとえば、伊勢神宮の参拝者をターゲットにしているため、11-15時という限られた時間のなかで営業しなければならない。

またメニューが23種類と多様かつ複雑であるため、配膳に手間取ってしまっていた。さらに、ツアー客などが一気に来店することも多くあり、ピークタイムが読みづらく適切な人員配置ができていないことや、生鮮品を扱っているため食材の廃棄ロスが生まれてしまうことなども課題であった。

AIで飲食店の課題解決! 売り上げ4倍を実現

そこでゑびやは、これらの課題をAIとBIを組み合わせることによって解決しようと考えた。

現在は、Microsoft Azureを利用した画像解析サービス「アロバビューコーロ」によって得られた顧客の性別や年齢、新規客/リピーターなどの情報に加え、Webスクレイピングにより取得した気象データや飲食店口コミサイトのアクセス数などのデータをもとに機械学習を行い、PowerBIで解析するというシステムを導入している。

システム導入後は、1時間ごとのピークタイムが把握できるようになったため、人員配置が最適化された。またメニュー単位での注文数予測が可能となり、できるところまであらかじめ料理を仕込んでおくことで提供時間の短縮も実現。

週単位および日単位での来客予測をすることで廃棄ロスが少なくなるよう仕入れ量を調整できるようになった。

これにより、料理の提供時間1/3、顧客からのクレーム数0、売り上げ4倍、利益率12倍という成果がでている。

「分析によってピークタイムは13時からの1時間だけということがわかった。介護中の人など1時間だけ働きたいというニーズもある。オペレーションが最適化できるだけでなく、地域の人材活用への貢献にもつながる」(横井氏)といった、経営以外の面での効果も見られたようだ。

AI導入の結果

経営層と現場が知りたい数字は異なる

しかし、ただやみくもにAIを導入するだけで成果が出るというわけではない。AI活用の注意点として横井氏は「AIのアウトプットは誰のためのものなのかよく考えなければならない。経営層が知りたい数字と現場が知りたい数字は異なる。また同じ数字を見る場合にも、立場によって違う見方が必要なケースもある」と説明する。

たとえばゑびや大食堂のケースで考えると、経営側が知りたいことは予測される日別客数や客単価、売り上げだが、現場のスタッフとしては、それがわかったところで業務の効率化にはつながらない。

業務効率化には、時間別来客数や各メニューの注文数、座席の回転数などの予測値が必要となる。

横井氏は、キヤノン名誉会長 御手洗冨士夫氏の「数字なき物語も、物語なき数字も意味はない」という言葉を取り上げ、「物語=ビジネスの目的がはっきりしていなければ、AIによって得られた数字を活用することはできない。誰のため、何のためにAIを使うのか見失わないようにしてほしい。ゑびやの場合は、現場向けのAIであることを明確にしたため成功した」とゑびやの成功事例について分析している。

たとえば飲食店であれば、注文を受け付けて、調理をして、配膳を行って……というビジネスの導線がある。AIの導入は、こうしたビジネスの導線に関わる人たちすべてが繋がって初めて成功する。

1部門の要望だけを聞いたり、トップダウンで進めたりするのではなく、全体として課題を解決するためにAIを導入するという意識でなければならない。

さらに、そもそも本当にAIを導入すべきなのかどうかについても検討する必要があると横井氏は指摘する。

「AIは現場の課題解決手段として考えるべき。課題によってはExcel分析のほうが適しているケースもある。課題解決に適したものは何かをまず検討したうえで、AI導入後はタスクフォースを形成し、それぞれのステークホルダーがどこまで関わるかを決めて、現場レベルで訓練をしていくという流れが自然。AIは、現場が支えて初めて意味のあるテクノロジーになる」と語り、講演を締めくくった。

AIでビジネスを成功させるための「キモ」

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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