国内では、人材リソースの不足に対する解決策として、定型業務を自動化するRPA(Robotic Process Automation)ソリューションが注目を集めている。7月4日、東京国際フォーラムで開催された「RPA DIGITAL WORLD 2018」では、複数のRPAの国内導入事例が紹介された。

本稿では、同イベントにおける講演「『やりたくない』が動機?双日が取り組むデジタルレイバーの姿」で、双日 ビジネスイノベーション室 石井俊樹氏が語った英Blue Prismの製品導入事例の成果を取り上げる。

4つの要件を基に「Blue Prism」を採用

講演の進行は、石井氏が率いる双日のRPAチームにパートナーとして参画した日商エレクトロニクス デジタライゼーション本部 デジタルレイバー推進室 部長 青木俊氏が務めた。

日商エレクトロニクス デジタライゼーション本部 デジタルレイバー推進室 部長 青木俊氏

双日 ビジネスイノベーション室 石井俊樹氏

青木氏は、「国内ではRPAを検討する企業が増えているが、導入に成功している企業には、経営陣からのトップダウンより現場の強いリーダーシップの存在がある」と説明する。

では、現在も進行中だという双日のRPA導入はどんなものか。青木氏の紹介で登壇した石井氏は、RPAの存在を知った2017年の夏から、全社的に取り組む上で、仲間を増やすことを意識しながら、実際にロボットを作り、試してみようと考えたと話す。その年の秋に社内説明会を実施し、翌年の2018年1月から3月にかけてトライアルロボットを製作/運用、4月の経営会議での決定を経て、現在は関係会社を含むグループ全体での導入を進めている最中だ。導入したRPA製品は「Blue Prism」。ツール選定にあたっては、次の4つの要素を重視した。

  • 会社単位ではなくグループ全体で利用できること
  • ロボットの管理や実行履歴ログが残り、動作状態が追跡できること
  • 内部統制に準拠し、個人での無秩序なロボット開発・実行ができないこと
  • 技術的なサポートが得られやすいこと

特にBlue Prismの評価が高かったポイントは、部品化が容易で再利用がしやすい点にあった。単純な機能を実行する部品としてロボットを開発しておけば、ロボットを作れば作るほど、開発時間を減らすことができると期待したのだ。

双日は、パイロットプロジェクトとして、石炭/鉄鉱石部向け「輸入L/C作成」、基礎化学品部向け「契約伝票作成」、交通/社会インフラ事業部向け「プロジェクトオフィス経費精算」、双日インシュランス向け「ドキュメント管理」の4つを選択した。いずれも基幹システムへの入力を伴うことが共通する業務である。

輸入L/C作成業務を90分から3分に短縮!

石井氏は、石炭/鉄鉱石部という輸出入部門向け「輸入L/C作成」の業務を例に、説明を進めた。L/Cとは「Letter of Credit」の略で、顧客との貿易決済を円滑に進めるための信用状のことを指す。これまでは条件交渉が終わり、Wordで作成したドラフトの内容が確定したら、手作業で基幹システムにデータ入力を行っていた。信用状に頻出する「%」などの文字がエラーになるシステム仕様であったため、手作業での入力が必要だったという。そのため、入力の際は「%」を「PCT」に置き換える必要があり、転記ミスがないよう入力するには、1件あたり90分を要していた。

新しい業務フローは次のようになる。まず、輸入L/Cを所定のフォルダーに保存する。監視ロボットは15分おきにフォルダーにファイルが入っていないかどうかを確認する。フォルダーにファイルがあることを確認したら、監視ロボットは入力ロボットに通知を送る。入力ロボットは、通知を受け取ると基幹システムに入力を行い、終わったらユーザーに完了報告をメールで送り、最終確認を促す。

ロボット2台を使った輸入L/C作成の業務フロー/出典:双日

ロボットの作業時間はおよそ3分で、当初の90分と比べると大幅な短縮を達成できた格好だ。人間の作業は実質ゼロと見ることもできる。転記ミスがなくなる分、確認作業はかなり楽になったという。