ガートナー ジャパンは6月14~15日、年次カンファレンス「ガートナー データ & アナリティクス サミット 2018」を都内にて開催した。本稿では、同カンファレンス内で実施されたバイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏による講演「AIトレンド2018」の模様をお届けする。

チャットボット市場は”カオス”

企業のデジタル化にとって重要なコア・テクノロジであるAI(人工知能)。だが、亦賀氏は「いまだに多くの誤解や”神話”が見られ、混乱が続いている」と話す。AIをビジネスの現場に生かすためにはどう捉えればいいのか。亦賀氏は、AIの主要なトレンドを整理しつつ、日本のユーザー企業へのアドバイスを行っていった。

ガートナー ジャパン バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏

「AIはハイプサイクルで『過度な期待』のピークに位置します。2017年は、特にチャットボットに関する質問が多かった。短期的には幻滅しますが、中長期のインパクトは大きく、企業にとっても非常に重要です。今は、可能性を探る、試すというフェーズであり、自分で運転を開始して、スキルを高める努力が不可欠です」(亦賀氏)

亦賀氏はまず、昨年問い合わせが多かったというチャットボットの動向から話を始めた。チャットボットの多くは、決まった答えを返すだけのいわゆる「人工無能」で実際にはAIとは呼べないものだ。ただ、ビジネスにおいては現実的かつ実用的だという。

むしろ、チャットボットで用いられている「人工知能」に対しては「過度な期待をしないこと」が求められる。AI的な会話こそできるが、ビジネスで利用するには不十分な点が多く、まだ研究の領域に留まっている段階だ。

「『AIチャットボット』という言葉が生まれるなど、何がAIなのかがわからなくなっています。ほとんどの人は、そんなことは関係なくとにかく導入したがっている。市場はカオス状態であり、まずは、どのようなものがあるかを理解することが大切です」(亦賀氏)

チャットボットの国内提供ベンダーは、大きく、IBM Watson系、ベンチャー・スタートアップ・中小企業系、大手ベンダー系、API系に分けられる。このうち、IBM Watson系とAPI系で提供されているもので比較的知られているサービスとしては「IBM Watson Conversation Service」「Google Dialogflow」「Microsoft Bot Framework」「Amazon Lex」などが挙げられる。

チャットボット提供ベンダーのおおよその区分/出典:ガートナー(2018年6月)

「それなりに使えるものもありますが、まだ初期の段階です。今後に備えるために、まずは使ってみること。評価するというよりも、むしろ『自分で運転する』スキルを獲得する一環と考えることがポイントです。デジタル時代の『破壊』に備えるためには、API系にチャレンジする。実績づくりと言うなら、ベンチャー系のなかには数千円から使えるサービスもあるので、すぐに始めてみて、ダメならやめるという意識が必要です」(亦賀氏)