フジクラ。一般にはあまりなじみがないかもしれないが、その従業員数はグループ全体で5万7,000人、自動車電装や情報通信など各種事業を展開し、光ファイバー・電線は国内外で高いシェアを誇る国内有数の企業である。

そんなフジクラの現場では、急速にAIの導入が進んでいるという。製造業の現場での活用法とはどんなものなのだろうか。「GTC Japan2017」に登壇したものづくり推進センター G-FPS推進室 i-FPSグループ長の黒澤公紀氏の話から紐解いていこう。

ものづくり革新を進めるフジクラ

黒澤氏によると、フジクラでは現在”ものづくり革新”が進められているという。これはIoTやAIを駆使して業務改善を図ると共に、これまでになかった新たな価値も生み出していこうという試みである。

フジクラ ものづくり推進センター G-FPS推進室 i-FPSグループ長の黒澤公紀氏

「これまでの業務改善では、人の処理速度が全体の改善速度に関係していました。これが『レベル0』です」

レベル0では人間の「感覚」や「勘」、「経験」などを根拠に改善を進めるしかなかった。同社はそこにIoTを加えることで、人の処理速度に依存しない業務改善を目指す。これが「革新レベル1」にあたると黒澤氏は言う。例えば、人の目でチェックしていたものをセンサーやカメラでデジタル化するといった具合である。

しかし、IoTにより大量のデータを取得しても、それだけでは不十分なことが多い。

「データをたくさん取ってはみたものの、使いこなせていないという声をよく聞きます」 その原因は、データの分析をやはり人の手で行っていたからだ。データの量に対して人の処理速度は遅すぎるため、対応しきれなくなってしまう。

そこでAIである。IoTに加えてAIを導入することで「改善スピードは異次元の効果を生み出す」(黒澤氏)のだ。

「IoTとAIは別々に語られることが多いのですが、私は補完関係に位置づけています」

IoTで取得した大量のデータをAIで分析・予測・シミュレーションする。その結果をさらにデータとして取得し、同じサイクルを繰り返すことで精度を高めていく。IoTとAIを組み合わせることで、このプロセスがスムーズに回り出すのだ。

こうした改善を行っていくことで、事業そのものにイノベーションを起こし、新サービスの創出にまでつなげられる可能性があると黒澤氏は言う。これが「革新レベル2」であり、フジクラが目指している段階だ。