ガートナー ジャパンは5月23日~24日、「ガートナー データ&アナリティクス サミット 2017」を開催した。ここでは、2日目に行われたバイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏によるセッション「人工知能のリアリティ」の内容をレポートする。
企業がAIを評価する際、目安となるのは何なのか?
ガートナージャパンは昨年12月、人工知能(AI)に関する10の「よくある誤解」を発表した。このレポートの背景には、その2カ月前に発表した「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2016年」において、AIが「過度な期待」のピーク期に位置していることがある。
亦賀氏のセッションは、10の誤解を取りまとめた立場から「人工知能のリアリティ」はいったいどこにあるのか、企業はAIにどう取り組むべきかなどをあらためて解説するものとなった。
亦賀氏はまず、人口知能は定義が曖昧であり、現時点では「人間の脳に相当する、もしくはそれを超えるレベルのテクノロジー、考え方、方法論および進化論」といった捉え方をするのがよいと説明。また、現在は、AIの将来や効果を過度に宣伝する「AIラッシュ」が起こっており、ピークを過ぎれば短期的に幻滅期が始まると指摘した。
亦賀氏は「10の誤解」においても、「2020年までに人工知能に関する誤解を継続する企業の90%が、デジタルビジネスの推進で頓挫する」と警告している。重要なのは「AIの中長期的なインパクトは大きく、非常に重要なテクノロジーです。冷静な判断で、本物と偽物を見分ける必要があります」(同氏)ということだ。
例えば、チャットボットのなかにはAIを使わずに決められたテキストを返すだけの往年の「人工無能」のようなものも存在する。AI搭載をうたう家電のなかにも、かつての「ニューロファジー」のような仕組みにすぎないものも多い。
一方で、画像認識の世界ではいまだに競争が続いており、著名な画像認識のチャレンジ「ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge(ILSVR) 2016」でも優勝者がその都度、入れ替わっている状況だ。
亦賀氏は、「短期的なAIへの取り組みは、小さく始めて事例作りで終わるような『スモールスタート・スモールエンド』になりがちです。その一方で、中長期的戦略の下地道な努力を続ける企業もあり、コネクテッドカーの開発に見られるように『F1レースのような成果』を得ているケースもあります」と語り、こうしたギャップの発生を理解することが大切だと強調した。
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ガートナー ジャパン バイスプレジデント兼最上級アナリスト 亦賀忠明氏 |
では、企業がAIを評価していくために目安となるのは何なのか。その1つとして亦賀氏が挙げるのが、将来的な発展を見据えながら、さまざまな角度から分類・評価していくことだ。
インパクトで分類すると、AIは、弱いAIと強いAIに大別できる。弱いAIは、機械学習や深層学習といった「特定目的の機械知能(SPMI: Special Purpose Machine Intelligence)」で、強いAIは「汎用型の機械知能(GPMI: General Purpose Machine Intelligence)」となる。これらはまだ発展途上で、GPMIは今後、人間並みの「汎用人工知能(AGI: Artificial General Intelligence)」になる可能性や、人間を超えシンギュラリテイを引き起こすような「人工超知能(ASI: Artificial Super Intelligence)」へと発展する可能性がある。ただし、それも15年から30年後の話だ。
「本物のインパクトはこれからです。今のAIは赤ちゃんのような状態にすぎません。赤ちゃんを入社させても儲けることはできないように、AIのテクノロジーを導入しても儲けることはできません。『使える大人』にするためには、導入するだけではなく、これからどう育てていくかが重要なのです」(亦賀氏)
また、AIを学習方法によって分類すると、「教師あり学習」「教師なし学習」「半教師あり学習」「強化学習」に分けられる。しばしば「教師なしが良い」という意見が出るが、それは誤解だという。用途に応じて学習方法を選択する必要があるのだ。
分類としてはこのほかにも、深層学習の層の数や、アルゴリズムによる分類がある。層の数が多ければよいというわけではなく、「いちばん良いアルゴリズム」があるわけでもない。いずれの場合も、分析の用途に応じて、最適な層やアルゴリズムを選択していくことがポイントだ。むしろ、どのようなアルゴリズムが最適なのかは、一度試行してみなければわからないものだ。
※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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