「Mobile Content Management(MCM)」は、業務に必要なコンテンツだけを管理するサービスです。パソコンはもちろん、スマートデバイス内のMCMに対応したアプリやブラウザーから企業のファイルサーバーにアクセスし、コンテンツの閲覧・編集が可能になります。これによってユーザーは社外でも作業でき、利便性の向上や業務効率化につながります。

第8回のMAMでは、対象のアプリケーションとアプリケーションで作成したデータを管理できますが、MCMではデータのみを管理するので、MAMよりも管理対象範囲をかなり制限できます。

MCMの位置付け

活用シーンは?

ここまでの説明ではMCMの利用シーンが想定しづらいでしょう。

例えば、自社サービスの紹介資料(コンテンツ)を商談相手に提示する際に、MCMアプリから企業のファイルサーバーへアクセスし、瞬時にコンテンツを用意して閲覧できます。もし顧客が関連サービスにも興味を持った場合は、ほかの資料にも簡単にアクセスできますから、スムーズに商談を進めることができるでしょう。

MCM製品の中には、コンテンツにアクセスした情報をログとして収集する機能を提供するものもあり、いつ、どこで、誰が、どのコンテンツを利用したかを把握できます。一般的に「行動監視目的」ばかりが強調されるユーザーの利用データですが、例えばトップセールスマンの行動を分析・共有することで、業務改革ツールにもなり得るのです。

また、MCMを利用するアカウントに対しては、閲覧制限などのアクセス制御を設定できます。例えば、特定のデバイスのみのアクセス制限や、ファイルを閲覧できても編集・複製は禁止するといったセキュリティ保護についても対応しています。

これに加え、MDM機能と組み合わせた紛失対策として、MCM配下にあるコンテンツのみワイプする設定によって情報漏えいを防ぎ、ユーザーの個人データを保護できます。このように、MCMは便利な機能とセキュアなモバイルデバイス環境を提供することができるサービスとして、注目を集めています。さらにMDMと組み合わせることで、より強力なセキュリティツールとして利用できるのです。

ちなみに、単にMCMと言っても2種類に分けられます。

クラウドサービス型

管理者はクラウド上でコンテンツを管理します。クラウド上でコンテンツ制作やアクセス制御を行うため、サーバー調達などの新たな投資を抑えられます。

オンプレミス型

企業内にファイルサーバーを構築し、デバイスに専用アプリケーションをインストールすることで、ファイルサーバーへのアクセスが可能となります。

MCM導入に当たって

サービス導入を検討する際に重要なポイントは、スマートデバイスで利用させる機能・コンテンツをどこまで管理させるかを明確にすることです。MDMは「デバイス紛失時の情報漏えいを防止したい」というセキュリティの観点から、必ず導入しなければならないという企業も多いでしょう。

一方のMCMはコンテンツのみの管理で、デバイス情報や位置情報を管理しません。そのため、プライバシーを保護しつつも、利便性の向上や業務効率化につながります。自社の課題や状況に応じて、最適なサービスを選択してください。

著者紹介


林 佑太(はやし・ゆうた)
ソフトバンク 法人事業統括 ICTイノベーション本部 クラウドサービス統括部 プロダクト企画部

ソフトバンクの法人向け端末管理サービス「ビジネス・コンシェル デバイスマネジメント」を担当