世界の民生ドローン市場でトップシェアを誇るDJI。そのDJIが初めて、撮影、測量、点検以外の用途に特化したドローンを国内市場に投入した。

発表したのは、農業用ドローン「DJI AGRAS MG-1」。農薬散布を目的としたもので、最大約10Kgの薬剤を搭載可能。噴霧量を自動で調整する機能なども組み込まれている。

価格も約180万円と、既存の農業用ヘリコプターなどに比べて安価に抑えられており、一般的な農家でも購入を検討できる範囲と言える。ITを駆使した先進機能も搭載しており、大幅な効率化を実現。トラクタータイプの農薬散布機に比べて作業後のメンテナンスが楽など、メリットは大きい。

農業用ドローン「DJI AGRAS MG-1」※ クリックで拡大(以下同様)

ドローンとの相性が良い農業分野で先鞭を付けるかたちとなった同機について、DJIのコメントを交えながら紹介する。

[お知らせ] 4月下旬、ドローン特集スタート

IT Search+では今月下旬に、『ドローンのポテンシャル - メーカー、キャリア、ユーザー企業はこう見る』と題した特集を掲載予定です。管轄官庁の国土交通省や業界団体を含む9企業/団体にインタビュー。ドローンのビジネス活用について、それぞれの立場から近未来の展望を語っていただいております。そちらもお楽しみに。

世界のドローン市場を牽引するDJI

まずは製造元のDJIについて、ご存じない方のためにご紹介しよう。

同社は、空撮などの民生ドローンでシェア70%と言われるリーディングカンパニーだ。

創業者のフランク・ワン・タオ氏は、父親に買ってもらった日本製ラジコンヘリコプターが墜落して悲しい想いをしたことから、安定飛行のできるフライトコントローラの開発を志したという。2006年に中国で創業された企業だが、現在はワールドワイドで8,000人を超える従業員を抱えている。

日本法人は、DJI JAPANとして2013年に設立。空撮用ドローンや撮影用途の手持ちジンバルなどの映像機器を中心に提供するほか、ドローン操縦者の技能認定プログラムである「DJI CAMP」も開催している。昨年には、東京都あきる野市およびスカイシーカーと提携。閉校した戸倉小学校を改修した滞在可能な体験研修センター「戸倉しろやまテラス」を活用し、操縦者の育成を目的としたプログラムを実施している。

閉校した戸倉小学校を改修した体験研修センター「戸倉しろやまテラス」

戸倉しろやまテラスの食堂

自動追尾/自動帰還は当たり前、iPadで航路指定も

ドローンベンダーとして飛躍的な成長を遂げている同社の製品は、先進的な機能が満載だ。

例えば、個人向け空撮機の上位モデル「Phantom 4 Pro」は、撮影用カメラのほかに、前方、後方、下方に3組のビジョンシステムを搭載。さらに、赤外線検知システム、GPS/GLONASS、下方の超音波距離計、IMU(Inertial Measurement Unit)、コンパスを備え、それらの情報を専用のプロセッサで処理する。「FlightAutonomy」と呼ばれるシステムにより、現在地と周囲の状況を認識し、障害物があれば自動で回避しながら安定飛行を継続することが可能だ。

Phantom 4 Pro

またドローンを操縦する送信機に関しても、ジョイスティックによる機体操作のほかに、高輝度ディスプレイを備えたモデルもあり、撮影風景が映った画面上を指でなぞって航路を指定することが可能。画面上で被写体を指定すると、被写体の動きに合わせてドローンが自動追尾する機能も備えている。

iPad向けの操縦アプリ「GSPro(Grand Station Pro)」も提供しており、こちらを利用すると、地図画面から航路を指定できるほか、ジオフェンスのように航空範囲を仮想的に区切ることも可能なため、操縦ミスをしても範囲外には飛び出すことがなく、安全な飛行を実現している。

加えて、被写体のジェスチャーを認識して自動でシャッターを切る機能や、送信機からの通信が途絶えた際に周囲の障害物を回避しながら航路を引き返す機能なども搭載。着陸時には、離陸時に記録した風景と現在の風景を比較し、水溜りや障害物があれば送信機にアラートを送ってホバリングする仕様になっている。

折りたたみドローンに、安定撮影機能も

そのほか、昨年10月には、500mlペットボトル程度の大きさまで折りたたみ収納可能な「MAVIC PRO」を発売。こちらは、上記のような自動追尾や自動障害回避の機能に加えて、専用ヘッドマウントディスプレイ「DJI GOGGLES」に対応しており(4月12日現在、日本未発表)、空撮の映像を自分の視界のように楽しむことができる。

折りたたみ可能なMAVIC PRO

プロフェッショナル向け機種「Inspire 2」では、360度回転式ジンバルを搭載。カメラの向きを自由に変えて安定撮影できる。センサーやバッテリーも冗長構成になっており、有事の際も撮影を継続できる設計だ。

360度回転式ジンバルを搭載。冗長構成で可用性を高めたInspire 2

また、ドローンに搭載しているジンバルをハンドスティック型に応用したスタビライザーを「OSMO」シリーズというブランド名で別途製品化しており、自転車などに装着して楽しむカメラ一体型のものや、自撮り棒のようにスマートフォンを取り付けて安定撮影できるものなども提供されている。

産業用途を意識して開発された最上位機種「Matrice 600」に関しては、カメラを専用ボックスに付け替えて物資搬送などに活用することも可能。あきる野市の防災訓練では、緊急時の救援物資を自律飛行で運搬する訓練なども行われている。雪山での遭難者捜索時に、携帯電話の中継装置を入れて飛行させ、遭難者が雪に埋もれた場合も発信電波で場所を掴むといった運用も想定されている。

救援物資の運搬などを想定したMatrice 600。ドローン下部に黒い箱が付いている