JR東日本とNTTドコモが開催した、山手線に設置しているビーコンを活用した「アイデア・アプリコンテスト」。2月20日に、コンテストの上位進出者のプレゼンテーションと、審査が行われた。

コンテストの内容は「ポケモンGOで注目集める”位置情報” - ドコモとJR東が「山手線」を開放する理由」に説明を譲るが、アプリに必要な要件は「山手線の車両位置の特定データ(何両目か)」と「列車走行位置情報(どの駅付近にいるか)」であり、これらを存分に活用した新しいアイデアを盛り込んだものが求められた。なお、この日の発表会に駒を進めたアプリは下記の通り(括弧内は開発企業)。

  1. とれぽん(インテリジェンスビジネスソリューションズ)
  2. 山手線デパート(スピリテック)
  3. KINOWA(ORBITALLINK)
  4. ママの手(ミツエーリンクス)
  5. 黒猫誘拐事件(QOLP)

アプリの審査は、東日本旅客鉄道 常務執行役員でIT・Suica事業本部長の野口 忍氏、NTTドコモ 取締役常務執行役員でスマートライフビジネス本部長の村上 享司氏、ジェイアール東日本企画 常務取締役で交通媒体本部長の橘 修氏、特別ゲストには「プログラムできる女優」として著名な池澤あやかさんが審査員として判定を行った。

クーポン配布のとれぽん

とれぽんのインテリジェンス ビジネスソリューションズは、モバイルPOSアプリ「POS+(ポスタス)」などを手がける企業で、ビーコンを活用したホットスポット分析や回遊情報分析サービスも提供している。この知見を活かす形で製作したアプリが「とれぽん」で、列車の走行位置情報を活かして、接近した駅近くの店舗のレコメンドとクーポンをリアルタイムで配信する。

クーポン一覧画面

列車の走行位置情報こそ利用していたが、車両位置情報を利用できなかった点は悔やまれるところだ

ただ、JR東日本の野口氏に「次の駅のクーポンがレコメンドされたところで、普段の利用駅とは異なる駅にすぐ降りるとは限らない」、NTTドコモの村上氏に「車両位置情報は使わないのか」という指摘を受けるなど、アプリ設計にもうひと工夫が求められる結果となった。

広告連動のECアプリ「山手線デパート」

スピリテックが提案した「山手線デパート」は、山手線内の広告、駅広告と連動したECアプリで、広告をそのまま広告主の物販に繋げたものだ。山手線などに設置されている車内ディスプレイで放映されているCM、または中吊り広告を乗客のおよそ半数が閲覧しており、購入意欲を持つ乗客もその半数に達するという(JR東日本企画の媒体資料より)。これを最大限に活かしつつ、広告主の商品販売に直接繋げることで、リードタイムの短縮を図り、考える余地を与えないようにUX設計を行った。

池澤さんに「デザインが良い」と評価された山手線デパートアプリ。広告物を全面に表示することで、ビジュアルのインパクトは絶大だった

このアプリに対して池澤さんは「デザインが良い」と評価しつつ、「アプリを利用することになれば、広告を見る機会が減るのではないか」という指摘を行った。これに対してスピリテックは「山手線の乗車時間は短いはずで、スマホに集中するということは恐らくない」と回答した。また、JR東日本企画の橘氏は「山手線デパートという名称だと、ECの商品ボリュームを充実させないと難しい。広告主に対するセールスポイントはないか」という質問を行ったが、これに対してはスピリテックは、アプリ内で駅広告と同一の広告を表示させ、それをタップして購買に繋げる一連のユーザー行動を収集できるメリットが、広告主に対して訴求ポイントになると語った。

独特の世界観「KINOWA」

KINOWA

ORBITALLINKは、コミュニケーション取らないメッセージアプリ「KINOWA」を提案した。車両位置情報を使い、「同じ車両にいる誰かわからない人のメッセージを受け取れる」というもので、そのメッセージを見ることで「誰が何を投稿しているのか楽しむ、”想像力を楽しむ”アプリ」(ORBITALLINK)だという。マネタイズは有料課金アイテムとレコメンド広告、投稿ワードのデータベース販売で考えており、課金アイテムは「メッセージを車両の外でも見られるカゴ」を想定している。

このアプリに対して池澤さんは「ひとりぼっち惑星と呼ばれるアプリが一部で流行したように、実際に知らない人からメッセージが来るニーズはある」と評価。一方で「同じ車両内にいる人にしかメッセージを送れないメリットは?」という質問を投げかけた。これに対してORBITALLINKは、「いつもの通勤・通学時間にいつも同じ車両に乗ってる人がいる。そうした環境で来たメッセージを開いて『あの人が書いたんだろうか』というワクワクを、想像力を掻き立てるアプリにした」と回答していた。

お母さんの悩みを解決「ママの手」

ミツエーリンクスのママの手は、ベビーカーなどを利用する”ママ”が電車内で困るケースが散見される点に着目。簡単に乗降できる車両位置や、駅構内のトイレ位置の案内サポートするアプリを開発した。あわせてチェックインクーポンも用意することで、若いお母さんにターゲティングしたい広告主からの出稿も狙う。

ママの手アプリ

ドコモの村上氏は「交通弱者の困り事解決、素晴らしいと思った」と評価。課題となりそうな駅構内の最短距離経路の把握、通知について質問を投げかけたが、ミツエーリンクスは「JR東日本が東京駅などでやっていたビーコンによる屋内測位技術を応用できれば」と回答していた。また、池澤さんは「社会的意義がある上に、アプリも可愛い。ただ、画面フローが分かりにくい点は改良の余地があるのでは」とコメントしていた。

山手線ならではのゲームを「黒猫誘拐事件」

QOLPの「黒猫誘拐事件」は、ミステリースマホゲームで、山手線の列車位置情報+車両位置情報、季節や時刻に合わせたストーリー分岐を行い、その一瞬でしか体験できないシナリオを売りにした。

JR東日本企画の橘氏が「乗車時間は何分を想定しているのか」と尋ねると、QOLPは「時間で区切るわけではなく、降車したら中断、再び乗車したら再開できるようにする。連続性があるようにストーリーの組み合わせを担保する。音波ビーコンで乗降を判別できるようにしている」と回答した。

JR東日本の野口氏にターゲットユーザーについて問われると、学生やサラリーマン、観光客がメインとQOLP。また、ストーリーの分岐が多数に渡る点について池澤さんに問われると、「固有の駅に紐付けたイベントはもちろんだが、『2駅進んだら◯◯イベントが発動』といった条件で考えている。通学する人たちもターゲットにする上で、同じ駅から同じ駅の繰り返しになるし、そうした発動条件でマンネリをクリアできる。もちろん、固有イベントも用意することで、『あの駅まで行きたい』という誘客に繋がる仕組みも用意したい」と話した。

最優秀チームに選ばれたのは…?

なお、アプリコンテストの最終結果は優秀チームが「KINOWA」のORBITALLINKと、「ママの手」のミツエーリンクスが選ばれた。