ロボットを活用して運営するホテル「変なホテル」の2号店「変なホテル舞浜 東京ベイ」が3月15日、千葉県浦安市の舞浜駅近くにオープンした。

手掛けたのは、「ロボットを活用して世界一の生産性を目指す」と謳うH.I.S.ホテルホールディングス。変なホテル舞浜 東京ベイでは、100の客室を7人の従業員で運営し、従来は人件費に割いていたコストを「快適性」「寝心地」「安全」「楽しさ」向けのサービス拡充に振り向け、宿泊が最大の目的となるようなホテルを目指す。

また、H.I.S.ホテルホールディングスでは、5年間で100軒のホテルを自社運営するほか、システムとロボットをセットで提供するフランチャイズ展開も準備中。システムの外販も予定しており、今後5年で1000件という目標を立てている。

テープカットセレモニーの様子

ビジネスユース向け変なホテルも準備中

H.I.S.ホテルホールディングスは、昨年10月にエイチ・アイ・エスの100%子会社として設立された企業。ハウステンボスが運営する「変なホテル1号店」のノウハウとインフラを横展開するなどして、新規ホテルの開業を進めている。

今回の変なホテル舞浜 東京ベイに続いて、今年8月には、愛知県蒲郡市のラグーナテンボスに3号店を開業予定。また、北海道や長崎県のホテルの運営会社も傘下に置いており、設立から半年ですでに13軒のホテルを保有する。

ブランドとしては、すでに「変なホテル」と「ウォーターマークホテル」の2つがあるが、今後は、「ビジネスユース向け変なホテル」も提供を予定している。こちらは、変なホテルのエンターテイメント要素を減らして効率化を追求。都市部にローコストホテルとして開業していく計画だ。

なお、ホテル名の「変」とは、「変化」を意味している。常に進化し、変わり続けるホテルを志して命名されたという。

H.I.S.ホテルホールディングスが準備している3つのブランド

また、事業としては、新規開業のみならず、ホテルマネジメントの受託やM&Aも進める予定。すべて合わせて、2021年には70~100軒のホテル運営を見込む。国内だけでなく、中国や台湾、東南アジア、オセアニアでも事業を展開していく意向だ。

5年で100店舗の自社ホテル運営を目指す

さらに同社は、変なホテル1号店の運営で磨いてきた、システム/ノウハウを他社に販売していくことも公表。システムの販売に関しては、冒頭で触れたとおり、5年で1000件という大きな目標を掲げている。

5年でシステム導入1000件が目標

運営コストは1/5~1/8、人員削減しつつも最後は人の目で確認

では、変なホテルの生産効率はどれほどのものなのか。

H.I.S.ホテルホールディングス 代表取締役の平林 朗 氏は、運営コストについて、「通常のホテルの1/5~1/8程度」と説明する。

変なホテル舞浜 東京ベイでは、9種類140体のロボットが稼動し、客室数100に対して1日に働く従業員は7人。交代制の勤務体系なので、同時に働くのは、1~3人程度だ。

フロント業務などを担当するのがロボットのため、24時間営業も支障がない。さらに、外国人宿泊者に対する言語の問題もシステム側で吸収できる。通常、深夜勤務や特殊な言語への対応などは、従業員に対して相応の手当てを払うことになるが、ロボットであればそれが不要。将来的に経済環境が変わり新たな対応が必要になっても、会社も従業員も体力を浪費せずに済む。安定経営につながる大きな利点だ。

フロントの様子。恐竜ロボット2頭がお出迎え

平林氏は、予約をWebサイトで済ませ、セルフサービスでチェックインできるシステムに触れ、「特にインバウンド向けの需要にマッチするはず」とコメント。訪日外国人旅行者増を追い風にシステム販売にも力を入れ、「ホテル業界のゲームチェンジャーになりたい」と抱負を述べた。

フロントのシステムは日本語、英語、中国語、韓国語の4ヶ国語に対応。セルフサービスでチェックインすると、恐竜ロボットが歓迎してくれる

端末の左にマイクがあり、手入力だけでなく音声入力も選べる

最小人員で臨む従業員の役割は、ロボットで対応できない部分のフォローが中心になる。具体的には、ITやロボットの扱いが苦手な年配宿泊者のサポート、通勤通学者の多い時間帯の注意喚起、緊急事態への対応など。接客に加えて、ロボットやITを扱うスキルも求められるのは、一般的なホテルと異なる点だろう。

将来的には、さらにロボットの生産性を高め、1日に働く従業員を6人にまで減らす予定。ただし、ロボットで代替できる作業が増えたとしても、「最後の確認は人の目でやる必要がある」(変なホテル舞浜 東京ベイマネージャー 長井 超生[ゆきお] 氏)と、サービスの品質の維持/向上には最大限配慮している。