AIや機械学習がビジネスの在り方を変えるのは、すでにそう遠くはない未来だろう。「第4次産業革命」とも呼ばれるこの大きな変革が動き始めた今、我々はどのように仕事に向き合うべきなのか。

10月4日~7日にかけて行われた「CEATEC JAPAN 2016」の3日目には、この第4次産業革命にフォーカスしたセッション「データの民主化による第4次産業革命」が行われ、リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology 推進室室長 石山洸氏、および米データロボットのCEO ジェレミー・アシン氏が登壇。変化をチャンスに変えるために、企業が今なすべきことについて解説した。

「データの民主化」が30兆円を創出する!?

Recruit Institute of Technologyは、2015年4月に設立されたリクルートの人工知能研究所だ。昨年11月には米Google Research出身のアロン・ハレヴィ氏をトップに起用し、汎用機械学習プラットフォームを提供するベンチャー企業、米データロボットとの事業提携を発表している。

リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology 推進室室長 石山洸氏

同研究所を率いる石山氏はまず、今後世界のビジネスを変革する「第4次産業革命」のベースとなっているのは「デジタルがマス化、技術がダウンサイジングして、さまざまな人がテクノロジーを使えるようになったこと」だと説明し、これを「テクノロジーの民主化」と呼んだ。

一方、日本における第4次産業革命の状況はどうか。

政府は第4次産業革命に向けた「官民戦略プロジェクト10」に取り組んでおり、IoTやビッグデータ、AI、ロボットなどを活用して2020年までに30兆円の付加価値を創出することを目標としている。

そのための施策として、新たな規制・制度改革やメカニズムの導入、中堅中小企業へのデータ利活用プロジェクトの導入支援、イノベーションや人材の創出などを掲げているが、30兆円の創出はそう簡単な話ではない。

石山氏は「各産業セクターで5%分の付加価値創出ができれば、30兆円を作ることができます」と説明する。しかし、それには「いかに既存のビジネスに人工知能や機械学習などを導入するか」が重要だ。

この導入において重要なキーワードとなるのが「データの民主化」である。

石山氏によれば、データの民主化とは「全ての従業員が機械学習を操れる状態になっていること」。少人数のデータサイエンティストしかデータを扱えない企業に比べて、従業員全員がデータを扱える企業のほうがはるかにビジネスを進める上で有利になるからだ。

この「誰もがデータサイエンティストになれる」状態を、石山氏は「レンジでチンする機械学習」と呼び、そのためのインフラとしてデータロボットを開発している。これを使うことで、誰もが予測モデルを作れるようになるという。

例えば、人材ビジネスではAIをどのように活用できるのか。

石山氏によると、SPIや面接データなどの結果から5年後の給与を80%の確率で当てられたり、直近2週間のライフログから体調を予測したりできるようになり、うつ病予防などにも効果があるという。

こうしたデータロボットによる予測モデル数は昨年11月から今年の6月までで約3,000件。同じような予測モデルの作成を外部に発注すると1件300万円程度はかかるため、およそ90億円ものコストダウンにもつながっているのだ。

>> 人はAIや機械学習とどう向き合うべきか?