コロプラがVRへの取り組みを強化している。コロプラ自身はコンテンツの開発が中心となるが、その投資子会社であるコロプラネクストがVR専門ファンドとして「Colopl VR Fund」を設立し、VR関連の投資を行っている。

Colopl VR Fundの現状について、コロプラネクスト代表取締役の山上愼太郎氏と、Colopl VR Fundチーム インベストメント・アソシエイトの浅井良氏に話を聞いた。

コロプラネクスト代表取締役 山上愼太郎氏(左)とColopl VR Fundチーム インベストメント・アソシエイト 浅井良氏

最大5000万ドルの投資ファンド

Colopl VR Fund(コロプラネクスト2号ファンド投資事業組合)は1月に設立。最大5000万ドルを出資する予定で、VR専門ファンドとしては世界最大級となる。VR関連ベンチャーに投資を行うだけでなく、コロプラやグループ企業の360Channelによる技術サポートなども行う。

コロプラ本体は、ゲーム会社という立場からVR向けにゲームを制作している。一方の360ChannelではVR動画コンテンツを制作しているが、「ゲームと動画以外にVR関連事業(を社内リソースだけで立ち上げること)は難しかったため、『投資を行えばいいのではないか』という話からColopl VR Fundは始まった」と山上氏は振り返る。

まだ、一般的に利用できるVR専用のハードウェアが市場に出回っていなかった2015年秋頃に山上氏らは、今後のVR市場が「金額的にもかなりのサイズになる」と予測。それは、2016年にOculus RiftやHTC Vive、PlayStation VRなどの大手3社の製品が登場することによる「市場の立ち上がり、VR元年」(山上氏)に合わせて、先手を打つファンド設立へと繋がった。

投資の判断基準は?

山上氏は「最初の数年は手探りだと思うが、まずはゲームがコアのキラーコンテンツになる」と前置きした上で、その後は映画フィルムのような映像コンテンツや、ゲームとフィルムの中間のようなコンテンツ、そして「VRならではの楽しみ方ができる”新しいもの”」が出てくると期待感を口にする。

もちろん、ゲーム以外にも産業用やエンタープライズ向け、ヘルスケア、教育といったコンテンツも広がっていくというのが山上氏の見立てだ。

こうした幅広い活用シーンが想定できるVRの市場拡大を目指すのが、ファンド設立の目的の1つだ。HTCは、スタートアップ支援プログラム「Vive X」を用意するが、こうした取り組みとも連携。「いい会社と情報を共有して連携する方が、業界の進展に繋がる」と山上氏。HTCによる投資ファンドの連合組織「VRVCA(Virtual Reality Venture Capital Alliance)」は「ゆるい連合体」(山上氏)であり、ファンド同士の協力によりVR関連の優秀な会社をどんどん育てていくと意気込みを話す。

ファンド同士が有力企業を取り合う構図はよく見るが、ファンド間の連携はそう多くはない。山上氏は、市場の立ち上げ期の現在、競争するよりも小さな会社に各ファンドが少しずつ投資し、「薄くシェアしてリスクヘッジしつつ、協力して関連企業の育成に注力した方がいい」とする。まずは市場を作って順調に成長させたあとで、ファンド同士の競争に繋げていくという目標だ。

具体的には、日本円で1000万円前後をファンド4~5社が出資し、総額5000万円の案件にするといったもので、500万円規模~5億円まで、さまざまな案件が進んでいる状況だと浅井氏は説明する。

山上氏によれば、調達規模の多寡は「すでにコンテンツなどをリリースしているか、初動の反応がいいか」あたりが判断基準になるという。B2Bですでに売上の立っている企業も調達しやすいほか、最初は無料で利用でき、さらにコンテンツを利用したい場合には課金する「フリーミアムモデル」であっても、ユーザー数の見通しが立っている企業であれば調達も容易だという。

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