6月8日から3日間にわたり、幕張メッセで開催された「Interop Tokyo 2016」。初日の基調講演には、グーグル デベロッパー アドボケイトの松内良介氏が「モバイルアプリの成功を支える最新技術トレンド」と題して登壇。モバイルアプリを取り巻く環境の変化と、それを踏まえたGoogleの最新サービスなどについて言及した。

今、アプリの世界で注目されるトレンドとは?

グーグル デベロッパー アドボケイトの松内良介氏

グーグル デベロッパー アドボケイトの松内良介氏

松内氏のミッションは、Google Playに登録されるアプリの審査や品質評価、Googleが提供するさまざまな技術をアプリケーション開発者などに使ってもらうためのアドバイスを行うことだ。

数多くのアプリに接し続けている同氏は、「利用者の期待値が年々変わっているのを強く感じます。とりわけ、SNSやゲームアプリの世界では、『次に価値を生み出す技術』が変化するスピードが、ものすごく速くなっています」と語る。

ただし、めまぐるしく移り変わるアプリの世界にも、いくつかのトレンドがあるという。なかでも大きなトレンドとなっているのが、2014年からGoogleが提唱しているコンセプト「マテリアル・デザイン」である。同コンセプトは、より優れたユーザーエクスペリエンスを実現するために、新しいテクノロジーと理想的なデザインを組み合わせようというものだ。

なぜ今、マテリアル・デザインが重要なのか。松内氏は次のように説明する。

「どんなプラットフォームでも、利用者が美しいと感じられるアプリケーションのほうが、売上、インストール数、PV数など全てにおいて成績が良いからです。『アプリケーションの見た目が美しいかどうか』というのは、ここに来て非常に重要な指針となっています」

どんなに機能が優れたアプリケーションでも、デザインが美しくなければ人々に受け入れられない可能性があるというわけだ。アプリケーションを提供する側は、そうした現実を知っておく必要があるだろう。松内氏は、「Andoroidに限らず、WindowsでもiOSでも、最も推奨されているデザインの導入を強くお勧めしたい」と強調した。

境界がなくなりつつあるアプリとWebサイトの世界

Googleに限らず、アプリケーションやWebサイトを提供する多くの企業が今、力を入れているのが、「ユーザーがパスワードを入力する手間をいかに減らせるか」という点だ。セキュリティ的な観点から言えば、サービスごとにIDとパスワードを変えるのがベストだということは誰もが知っているが、アカウント管理が煩雑になるのを嫌って同じIDとパスワードを使い回してしまっている人も多いだろう。その隙を突いたパスワードリスト攻撃のような脅威も高まっている。

「もはや、ユーザーの手でIDとパスワードを管理することが現実的ではないというのは、皆が気づいているはずです」と松内氏は指摘する。

そこでGoogleが出した答えの1つが、アプリケーションやWebサイトのパスワードを管理するパスワードマネージャ機能「Google Smart Lock for Passwords」だ。これは、ChromeブラウザやAndroidデバイスで使用するアプリケーション・Webサイトのパスワードを、Googleアカウントと紐付けるサービスである。

「IDとパスワードは依然として必要ではありますが、ユーザーが何かしようとするたびにいちいち入れ直すという行為をなるべく減らしていきたいと思っています」(松内氏)

また、これまでは別物とされていたアプリケーションとWebサイトだが、技術の進歩により、その境界線はどんどん曖昧になって来ている。アプリケーションはインストールの手間が不要な方向に、一方のWebサイトはアプリケーション同様のユーザビリティを実現できるようにと、どちらも急速に進化を続けているのである。

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