デジタルトランスフォーメーションの実現に向けて機械学習を活用するプロジェクトが増えている一方で、思ったように成果が出ず失敗に終わっているケースも少なくない。

日本マイクロソフトが6月17日~7月17日に開催している開発者向けオンラインイベント「de:code 2020」では、同社 デジタルトランスフォーメーション事業本部 クラウドソリューションアーキテクトの望月美由紀氏が「さくっとプチ成功する機械学習プロジェクトのコツ」と題し、機械学習プロジェクトの心得や進め方、必要なチーム体制などについて解説した。

日本マイクロソフト デジタルトランスフォーメーション事業本部 クラウドソリューションアーキテクト 望月美由紀氏

機械学習プロジェクトの進め方とチーム体制

望月氏は、機械学習プロジェクトの成功を「精度の高い予測モデルを作ることではなく、分析結果をビジネス課題に活かせてこそ」と定義する。

しかし、いきなり機械学習モデルの業務適用を目指そうとすると、高精度なモデルが要求されたり、業務現場の反発にあったりなど、さまざまな問題が発生してしまう。そこで望月氏は、「ビジネス課題に機械学習を活かすことを意識しつつも、いきなり完璧なゴールを目指そうとするのではなく、機械学習で何ができて何ができないのかを確認し、関係者へ報告して認知度/理解度を上げ、段階的に業務適用を目指すのが良い」と、機械学習プロジェクトの進め方について助言する。

また、機械学習プロジェクトにおいては、どんなデータや環境が必要か、どのデータをどう加工するか、どの分析手法を選択すべきか、結果をどう解釈すればよいかなど、各フェーズで人による判断を下す必要があり、チーム体制の構築も重要なポイントとなる。キーとなる存在が、データサイエンティストだ。

望月氏によると、Pythonコードが書けたり機械学習ツールが使えたりするだけでなく、ビジネス視点で分析結果を可視化して報告し、具体的な施策に落とし込める人が真のデータサイエンティストであるという。とはいえ、1人でこれら全てのスキルを兼ね備えているような人材を確保することは難しいため、各スキルをバランス良く補うことができる人材を集めてチームを編成することが重要となる。

特にビジネスをよく理解している人材は、機械学習プロジェクトのチームにおいて必須となる。望月氏は、「データ分析ツールは充実しているので、ITリテラシーがさほど高くなくてもビジネス理解が高い人がチームに居ると重宝される。顧客の事例を見ても、ビジネス部門を巻き込んでいるチームのほうがうまくいっているケースが多い」と説明する。

理想的な機械学習プロジェクトチームの体制