ガートナージャパンは3月14日~15日、企業のアプリケーション戦略やアーキテクチャ戦略をテーマにしたイベント「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット 2016」を開催した。「デジタル・ビジネスを推進するアプリケーション戦略の実践」をテーマに掲げた本イベントで、最終日を飾ったクロージング基調講演には、ガートナージャパン リサーチ ディレクター 飯島公彦氏が登壇。「デジタル・ビジネスの実践:ビジネスの変容を推進するアプリケーション戦略の実行」と題し、企業がデジタル・ビジネスを実践するために必要なアプリケーション戦略について、総括した。
“攻めのビジネス”に向けた取り組みが始まる!
モバイル/ソーシャル/クラウド/アナリティクス/IoTなど、デジタルビジネスを実現するためのテクノロジーが普及し始め、企業のビジネスやアプリケーションのあり方が大きく変わりつつある。飯島氏はそうした状況について、「これまではビジネスを推進するためにITを利用していましたが、デジタルビジネスではITそのものがビジネスになります。そしてIT部門とビジネス部門には、アプリケーションをどのように実装し、実践していくかが問われているのです」と指摘した。
ガートナージャパン リサーチ ディレクター 飯島公彦氏 |
そうしたデジタルビジネスのトレンドに適応するために、アプリケーションの領域では実際にどのような変化が生じているのだろうか。飯島氏はまず、注目すべきトレンドの1つとしてオープン・アーキテクチャを挙げた。オープン・アーキテクチャは、市場のスピードに追いつくために、社外との連携を強め、イノベーションを引き起こそうというものだ。従来型のクローズド・アーキテクチャに代わるものとして、2000年代初頭から企業での取り組みが進んだが、その動きはアナログの世界に留まっていた。それがいよいよ、デジタルの世界でも起こり始めたという。
もう1つは、ビジネスの継続的デリバリである。継続的デリバリは、アプリケーション開発の世界では「DevOps」などとして注目が集まっている。市場からのフィードバックを早く受けることで、アプリケーション開発の改善サイクルを素早く回していこうという取り組みだ。デジタルビジネスの世界では、アプリケーション開発とビジネスの関係がより近いものとなる。そこでガートナーでは、「BizOps」というキーワードを使って、ビジネスそのものの改善サイクルを回す必要性を訴えている。
また、飯島氏によれば「エコシステムの変化」というトレンドにも注目しておくべきだという。昨今、ビジネスを展開するためのエコシステムが、社内や企業グループに留まらず社外に拡大し、それがダイナミックに変化するようになった。実際、サービス提供のためのリソースの調達先や実行方法、施策のあり方、ターゲットとする顧客などはその時々で変わる。この変化に遅れることなく対応するには、スピードだけでなく、スケーラビリティも必要だ。
こうしたトレンドは、アプリケーション領域にも大きな影響を与えている。まず、ビジネス・アプリケーションはクラウド指向が強まり、オープンWeb APIベースの組み合わせが主流になりつつある。開発の現場では、アジャイル開発での継続的デリバリが取り入れられ、ウォーターフォール型開発と組み合わせたプロジェクトが増加している。コンテナ技術やマイクロサービスといったアーキテクチャが注目され、PaaS環境を使った開発やモバイルとクラウド、オンプレミスを統合するケースが増えているのも、1つの傾向と言えるだろう。
「簡単に言えば、バイモーダルのうち、攻めのITと言うべき”モード2”への取り組みが増えてきたということです。こうした取り組みによって、市場の変化にスピーディーかつ動的に対応しようという企業は、3年後には60%を超えると見ています。現在、ビジネス・アプリケーションのハイブリッド化は半数を超えています。ただし、それはバイモーダルに向けた取り組みではありません。攻めのビジネスに向けた取り組みは、いよいよこれからです」(飯島氏)