「Re-Host(Lift & Shift)」実行時に使えるAzureのツール

【連載】

徹底研究! ハイブリッドクラウド

【第5回】「Re-Host(Lift & Shift)」実行時に使えるAzureのツール

[2018/09/12 09:00]津久井 智浩 ブックマーク ブックマーク

クラウド

前回、アプリケーションをクラウドへ移行するための4つのアプローチ手法に関してお伝えしました。

今回は、それらのうち、まず最初に取るアプローチである「Re-Host(Lift & Shift)」を進めるにあたって、Azureが提供するツールを紹介します。

Lift & Shiftの移行における基本的な流れ

ツールの紹介に入る前に、Lift & Shiftの移行における基本的な流れを「評価」「移行」「最適化」の3つのフェーズに分けて説明しておきましょう。

Lift & Shiftの移行における基本的な流れ

なお、クラウドベンダーによっては、事前準備・計画フェーズなど、より細分化して定義されているパターンもありますが、本連載ではMicrosoftが公開している「クラウド移行の基本: サーバーと仮想マシンの移行ガイド」に準じた内容で説明します。

評価フェーズ

評価フェーズは、移行のスコープを定義する上で重要なフェーズとなります。サーバやストレージなどの物理的なリソースに関しては、System CenterやVMware vCenterなど、既存の資産管理ツールを利用することによって検出可能ですが、アプリケーションレベルでプロセス分析やアプリケーション互換性、各種ワークロードの依存関係を洗い出していかなければなりません。

特に多数のサーバで構成されたシステムにおいては、依存関係を可視化して把握するためのマッピングツールが役立ちます。

移行フェーズ

移行フェーズは、実際にクラウドへ各種リソースを移行するステップです。クラウドへの移行に関しては、従来のようなオンプレミス間での移行とは異なるマインドが必要です。

オンプレミス間における移行アプローチでは、計画策定に時間的/金銭的なコストを費やしていましたが、クラウドを利用する最大のメリットは必要なときに必要なリソースを迅速に提供できることです。「Infrastructure as a Code(コーディングによってインフラ基盤を構築する手法)」に代表されるように、ワークロードの受け皿となるクラウド環境を数行のコマンドを実行するだけで環境を構築(ビルド)し、逆に環境を瞬時に解体(スクラップ)できます。

さらに、隔離された環境を作り出し、移行元のシステムに影響を与えずにテストを実施することが可能となり、「構築」→「移行」→「スクラップ」のテストサイクルを回すことができます。

最適化フェーズ

最適化フェーズでは、クラウドに移行した環境に対するパフォーマンスや監視といった運用管理部分にフォーカスし、ビジネスニーズに合ったパフォーマンスとコストの最適化を目指していきます。

特にLift & Shiftにおいては、データベースやWebアプリケーションなどのワークロードをPaaSに移行することでメリットが生まれる可能性があります。

PaaSによって、IaaSで必要だった管理レイヤーを全てクラウドに委ねることができるため、管理が必要な領域を大幅に削減し、障害に対するResiliency(回復性)を強化可能です。最適化フェーズは、クラウドを運用していく上で継続して実施するプロセスとなります。

3つのフェーズで利用するツール

これら3つのフェーズを円滑に進めるため、Azureでは数多くのツールを提供しています。以下に、各フェーズで利用するツールを簡単にまとめてみました。

フェーズ ツール名称 用途 移行対象レイヤー
評価 Azure Migrate
・サービスマップ
・Log Analytics
Azure Migrateは、オンプレミスのVMware環境を自動的に探索し、仮想マシンのサイズやOSの種類、依存関係などを発見/評価した上で、Microsoft Azureへの移行を支援する VMware上の仮想マシン(近い将来Hyper-V上の仮想マシンも対象に含まれる可能性大)
データベース移行アシスタント(Database Migration Assistant :DMA) 既存のSQL Serverのデータベース構造やデータベース間の参照構造などを解析して最新のSQL Server環境への移行を支援する。オンプレミスからAzureへの移行に限らず、オンプレミス間への移行シナリオにも幅広く対応する オンプレミス環境のSQL Server (SQL 2005以降)
Azure App Service Migration Azure App Service Migrationは、IISで構成されたWebサイトの構造を解析しAzure Web App への移行を支援する。また評価と移行フェーズに跨って利用可能なツール IISで構成されたWebサイト
移行 Azure Site Recovery オンプレミスの物理サーバおよびVMwareやHyper-V上の仮想マシンをAzureに移行する。または、カスタムレプリケーションタイミング、分離テスト、最終移行カットオーバーをサポートする ・オンプレミスの物理サーバ
・VMware 上の仮想マシン
・Hyper-V 上の仮想マシン
Azure SQL Database Migration 既存のSQLデータベースを仮想マシンのSQLインスタンス上、またはAzure SQL Database/Azure SQL Database Managed Instanceに移行する ・SQL Server
Azure Data Box オンプレミスに存在するHDDを物理的に配送する ・Azure IaaS
最適化 Azure Security Center ハイブリッドクラウドワークロード全体にわたる統合セキュリティ管理と高度な脅威保護を提供する ・Azure リソース全般
Azure Cost Management 使用量とコストを示すことによって傾向を追跡し、非効率性を検出して、アラートを生成する ・Azure リソース全般
・Azure 以外のクラウド(AWS、GCP)
Azure Monitor 最新の詳細なパフォーマンスと使用率のデータを取得したり、全てのAPI呼び出しを追跡するアクティビティログにアクセスしたり、Azure リソースの問題をデバッグするための診断ログを取得したりする ・Azure リソース全般
Log Analytics ハイブリッドIT環境をより詳細に把握でき、アドバンスドアナリティクスポータルを使って、ワンクリックでパフォーマンス問題を診断する ・Azure リソース全般

※ 上記は執筆時(2018年8月)時点の情報となります。

上記にまとめたツールのうち、主なものに関してもう少し補足しておきましょう。

Azure Migrate

「Azure Migrate」は、オンプレミスのVMware上で稼働するシステムリソースを探索し、仮想マシンのサイズやOSの種類、依存関係などを発見/評価した上で、Microsoft Azureへの移行を支援するツールです。

Azure Migrateでは、オンプレミスの仮想マシン上で情報収集用のエージェント(Microsoft Monitoring Agent)を介して情報を収集します。バックグラウンドで「Log Analytics(ログ分析)」と「Service Map」というサービスが連携して動作する仕組みです。これらのサービスは、いずれもAzureの運用管理ソリューションである「Operations Management Suite (OMS)」に含まれています。

エージェントを介して収集された情報はLog Analyticsによって分析され、仮想マシンの数、サイズ、アプリケーションごとにグループ化し、Service Mapによってサーバやアプリケーションの依存関係をマップ形式で可視化できます。

サービスマップの例

VMware環境のアセスメントだけでなく、アセスメント結果の一覧から移行対象毎に個別の移行タスクを呼び出したり、Azure移行後のコストを試算する機能も備えています。Azure Migrateに関する詳細情報については、チュートリアルを参照してください。また、実際に触ってみたいという方は、ハンズオンラボで試すことができます。

Azure Site Recovery

Azure Site Recoveryは、オンプレミスの物理サーバおよびVMwareやHyper-V上の仮想マシンをAzureに移行するツールです。また、任意のレプリケーションタイミング、分離テスト、最終移行カットオーバーをサポートします。なお、移行元のシステムによっては移行ワークロードを管理するサーバをオンプレミスに配置する必要があります。

Azure SQL Database Migration

Azure SQL Database Migrationは、既存のSQLデータベースを仮想マシンのSQLインスタンス上、または Azure SQL Database/Azure SQL Database Managed Instanceに移行します。

また、2018年8月における最新アップデートでは、SQL Serverに加えてMySQLの移行においても利用可能となりました。

Azure Security Center

Azure Security Centerは、ハイブリッドクラウドワークロード全体にわたる統合セキュリティ管理と高度な脅威保護を提供します。

IDやアプリケーションレベルのアクセス制御など、クラウドに移行したサーバ、アプリケーションを保護し、かつセキュリティインシデント対応に必要なツールを提供します。

Azure Cost Management

Azure Cost Managementでは、Azure上の各種リソースの使用量とコストを表示し、コストの消費トレンドや負荷状況を検出して、アラートを通知することなどが可能です。

最近リリースされたAzure Reserved Instance(予約インスタンス)の最適化にも大いに役立ちます。さらに、AWSやGCPといったAzure以外のクラウド環境も一元的に管理できるようになっています。

Azure Monitor

Azure Monitorは、最新の詳細なパフォーマンスと使用率のデータを取得したり、全てのAPI呼び出しを追跡するアクティビティログにアクセスしたり、Azureリソースの問題をデバッグするための診断ログを取得したりします。

Azure Security Centerと連携してSIEMイベントログなどを統合することも可能です。

Azure Log Analytics

Log Analyticsは、Azureを管理、運用していく上で重要な役割を果たすツールです。Azure上のさまざまなワークロードで生じるアクティビティログを収集し、収集したデータから分析情報を得る手段としてクエリ言語や分析エンジンを備えています。

Log Analyticsによって得られた洞察は、管理者がAzure上のリソースやアプリケーションの運用改善を行っていく上で大いに役立ちます。

* * *

このように、AzureではAzure Migrateをはじめとして、各フェーズで利用可能なツールを数多く提供しています。これらのツールを活用して最適な移行計画を検討するとよいでしょう。

次回は若干趣向を変え、2018年8月31日に開催された日本マイクロソフト主催のパートナー向け年次イベント「Japan Partner Conference 2018」において、ハイブリッドクラウド研究会がブース出展した際のお話と、今後予定されている研究会の活動をお伝えしたいと思います。

著者紹介

株式会社ネットワールド
Microsoft ソリューション プリセールスエンジニア
津久井 智浩(つくい ともひろ)

ソリューションディストリビューターであるネットワールドの一員として、お客様に付加価値を提供するというミッションの下、Microsoft製品を中心にオンプレミスからクラウドまで幅広く提案~導入を担当。
趣味はバイク。昼散歩が日課。最近は自分よりもカミさんの働き方改革を何とかしたいと苦悩し、マインクラフトを通して子供と一緒にプログラミングを学びたいと願う40代。3児(2女、1男)の父。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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