新年あけましておめでとうございます。
ITSearch+では「2017年新春インタビュー」と題し、大手パブリッククラウド3社に2017年のクラウド活用の在り方、価値について伺いました。初めは「Microsoft Azure」です。

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日本マイクロソフトのクラウドビジネスである「Microsoft Azure」。日本マイクロソフトのサーバープラットフォームビジネス本部長 業務執行役員 佐藤久氏によると、2017年は技術的に、さらに企業の利用環境も新しい方向へと突き進むという見立てがあるそうだ。

日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部長 業務執行役員 佐藤久氏

IT部門が真剣にクラウドに取り組み始めた

「2016年はエンタープライズクラウドへの取り組みが本格化した年だった。本当の意味でのクラウドシフトが始まった。これはマイクロソフト1社がそう感じているのではなく、クラウドに取り組む事業者全てが感じる大きな変化ではないか」

佐藤氏はここ1年のクラウド市場の変化をこう振り返る。

企業のクラウド活用はもはや当たり前の世界だが、以前は「これまでの”クラウド活用”がトラディショナルな、IT以外の領域でクラウドを活用するケースが多かった」(佐藤氏)。一方で昨年からの流れは「このクラウドが一過性の流行ではなく、企業が本格的に取り組むものだと認識されたことで、トラディショナルなITのクラウド化が始まった」と分析する。

さらに企業は、トラディショナルなITをクラウドシフトしなければならない「事情」もあるようだ。

「ある製造業のCIOと話したのだが、事業部からIT部門に対しては、『もっと堅牢化して欲しい』という要求があがっている。これだけセキュリティ被害事件が報道されていれば、これは当然の要求。そこでIT予算の50%がセキュリティに振り分けられることになり、IT強化に使えるのは残った予算のみとなる。限られた予算で取り組むためには、トラディショナルなITのワークロードをどこかでクラウドへトランスフォーメーションしなければならない」(佐藤氏)

限られた予算を有効活用する手立てとして、企業はこれまで対応せずにいた「トラディショナルIT」に関してもクラウド化を進めなければならなくなった。それを示すように、Azure事業は金額で3桁、サブスクリプションでいえばそれ以上の成長を実現しているという。「巨大企業のクラウド利用が増加しているため、導入企業数よりも金額が大きく伸びている」(佐藤氏)。

トラディショナルITのクラウド移行増の端的な例が「SAP導入検討企業の増加」で、基幹システムのクラウド化が急増している。

「SAP自身もクラウドサービスを提供しているが、企業がSAPを利用する場合、周囲には『10倍のシステムがある』と言われている。そこで、SAPのクラウドサービスではなくAzureでSAPを動かし、周囲のシステムも一緒にクラウド化することを検討する企業が増えている」(佐藤氏)

日本マイクロソフトに寄せられる最近の超大型案件のほとんどがSAP関連となっており、PaaSではなくIaaSにSAPを載せ、トランザクションが大きくても対応できるようにメモリを大量に載せる事例も登場している。また、日本だけでなく、世界各国に拠点を持つ企業の利用、これまでのオンプレミスと同様にActive Directoryを利用するなど、マイクロソフトの強みを活かした内容となっている。

業種別に目を移すと金融業の導入が増えているが、その象徴が「三井住友銀行」の事例となる。同行は2015年12月より住宅ローン自動審査アプリの提供を開始。WindowsタブレットとiPadの両対応を図るためにXamarinを利用し、クロスプラットフォーム開発環境でのアプリ開発を実現した。このアプリによって、従来は3日間かかっていたローン審査が数時間に短縮されるなど、大きな効果をあげているという。

それだけでなく、10月末には「The Microsoft Toolkit」を使った対話型自動応答システムの開発に着手したこともアナウンスされた。「金融はコンサバティブで新技術の活用には消極的とされがちだが、顧客接点が多いため、こうした技術の活用によってさまざまなシーンでビジネスへの波及効果が生まれる使い方ができる。それを象徴した事例だと考えている」(佐藤氏)。