これまでさまざまなテーマで開催してきたIT Search+スペシャルセミナーが、11月29日で第100回を迎えることになった。記念すべき100回目の講師は、これまでにGoogleアナリティクス関連のセミナーで何度もご講演いただいているHAPPY ANALYTICS 代表取締役社長 小川卓氏だ。

データ解析のプロフェッショナルとして、全国各地での講演やコンサルティング、執筆など多岐に渡って活躍する小川氏のセミナーは常に超満員。その丁寧な解説とわかりやすさには定評があり、短い時間で専門的な知識を習得できることから、参加者の満足度も高い。

そんな小川氏は、いかにして現在のような”データ解析の達人”になったのか。通算500回を超えるという講演や勉強会の実施によって、何を目指しているのか。今回IT Search+では、第100回スペシャルセミナーの会場でもある新宿ミライナタワーにてお話を伺った。

セミナー概要

IT Search+ スペシャルセミナー 第100回
『データ解析の達人に学ぶ!
 Google アナリティクス「運用レポート」作成講座』

  • 開催日 :2018年11月29日(木) 13:00~15:00
  • 開催会場 : JR新宿ミライナタワー 12F マイナビルームA (JR新宿駅直結)

ツールの運用/サポートから積み重ねた「経験」

――現在に至るまでのキャリアを教えてください。

小川氏:どこからお話しましょうか。学生時代は英国の大学にいまして、卒業後は日本に戻り、大学院で化学を専攻していました。

――もともとの専門は、ITではなく化学だったのですね。

小川氏:そうなんです。ただ、並行して趣味でWebサイトを作ったりもしていました。そこからITが面白くなったんですね。卒業後、日本マイクロソフトに入社して1年ほど働いた後、ウェブマネー社に入り、ここでWeb解析を担当しました。そこで使っていたツールは「ビジョナリスト」という、当時デジタルフォレスト社(現在はNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション)が提供していたアクセス解析ツールでしたね。

2006年にリクルートに転職し、ビジョナリストの運用/サポートや社内へのツールの浸透/教育を担当することになりました。アクセス解析を本格的に学び始めたのはこの時期です。

HAPPY ANALYTICS 代表取締役社長 小川卓氏

その後、リクルートではツールをリプレイスすることになり、「Adobe Analytics」(当時は「SiteCatalyst」)を2年かけて導入したのですが、私はこのツールの社内問い合わせの窓口とサポート業務を担当していました。何しろ当時、既に600名ものユーザーがいたので、1カ月に150件以上の質問が来るんです。

――それは大変ですね!

小川氏:ちなみに一番頻繁に来る質問って何だと思いますか? 答えは「IDとパスワードを忘れた」です(笑)。

――(笑)。

小川氏:そのうち、何度も同じような質問に答えるのがしんどくなってきたので、社内向けのポータルサイトを立ち上げて対応するようになりました。

さらに2008年くらいからはデータ解析に関するブログ「Real Analytics」を始めて、そこで情報発信も行っていました。Webサイトの運営は90年代からやっていましたし、実はゲーム系メディアのライターをやっていた経験もあるので書くのは好きでしたね。

――ブログにはどんな情報を?

小川氏:当時はまだ日本語の情報も少なかったので、データ分析の用語解説や、分析のなかで得た気付きなどを日々書いていました。そのブログがきっかけでアナリティクスアソシエーション(a2i)というアナリティクス団体からお声がけもいただき、講演活動につながっていったのです。

――各メディアでのご活躍が始まったのもその頃ですよね。

小川氏:ネットでの連載は翔泳社の「MarkeZine」が最初で、それもブログを書いていたからいただけたお仕事です。最初の書籍を出させていただいたのは2010年のこと。これもブログ経由でお話をいただきました。

情報を発信することで、どんどん仕事が雪だるま式に広がっていったのです。本当にインターネットのおかげですね。

――その時期はまだリクルートに勤めていらしたんですよね。

小川氏:ええ。先ほど言ったようにリクルートでの最初の2年はビジョナリストのサポート、次の2年でAdobe Analyticsの導入を担当して、最後の2年はSUUMO事業部でWebアナリストとして働きました。

SUUMOではいろいろと貴重な経験をさせていただきました。外から分析しているだけではわからなかった現場の感覚が身に付きましたし、事業の当事者になったことで継続して数字を追いかけることができたのも大きかったです。

SUUMOは事業の性質上、ページの修正1つとっても影響範囲が大きいので、そうした事情も考慮して進めないといけません。「相手がいるからこその難しさ」というのも、そのときに知ることができましたね。

また、「意外と営業マンの勘は当たるんだ」ということもわかりました。クライアントをよく知っているからこそのノウハウを彼らは持っており、それは時としてデータより正解であることも多いのです。

チャレンジできる環境だったのも良かったですね。オウンドメディアやアプリなども積極的に立ち上げるなど、新しいことはまずやってみようという風土がありました。