日本データマネジメント・コンソーシアムは3月7日、今年で7回目を迎えるカンファレンスイベント「データマネジメント2018 ~データが拓く無限の可能性~」を開催した。

その中から本記事では、アシスト 東日本技術本部 情報基盤技術統括部 技術2部 部長の花井正樹氏が登壇したセッション「デジタル時代にExcelユーザがデータを料理し、活用する方法とは?」の内容を紹介する。

貯め込んだデータからどのように価値創造するか

アシスト 東日本技術本部 情報基盤技術統括部 技術2部 部長の花井正樹氏

花井氏はセッションの冒頭で、「自動運転や音声アシスタントなど、技術革新によって社会のデジタル化が進んでいる現在、そのデータの大半はクラウドに保存されています。また、近年では企業のクラウド活用も加速しており、データ量は増加の一途をたどっています。しかし、ただデータを貯め込んでいるだけでは意味がありません。セルフサービスや自動化によって生産性の向上を図るなど、方法論のアプローチは数多く出てきていますが、企業にとってより重要なのは『データからどのように価値創造するか』という、具体的なデータマネジメントの方法です」と語る。

基幹システム・業務システムから製品・サービス関連、顧客へのアンケート結果に至るまで、企業が取り扱うデータは実に多種多様だ。これらをアクションにつながる情報へと変えるには、”欠落がなくて完全”“揺れがない”“クリーン”“精査されている”“消費可能な形になっている”といった条件が求められる。

しかし、この「データ」を「情報」に変えるという作業自体が、大きな課題になっている企業も多い。たとえば、ITツールに詳しいIT部門ではデータの意味が把握できておらず、その詳細をユーザー部門に問い合わせる必要がある。

一方のユーザー部門では、難しいITツールを使いこなせないため未だにExcelへの依存度が高いなど、いずれも結果として手間や時間ばかりかかってしまうわけだ。

花井氏は「このように企業では、手作業やコーディングへの依存、IT部門にフォーカスしたテクノロジなどにより、データ準備工程だけで全作業の80%が費やされている状況です。これが皆さんの感じている『データ』を『情報』に変える難しさです」と語る。

ここで花井氏は、同社が2017年9月に実施したアンケート結果を公開。「新しいデータを準備する際に苦労することは?」という問いに対して、一番多かったのは「データの変換や修正、整形、名寄せ」(184件)で、以下「データ同士の紐付け、結合」(149件)、「データの理解(ビジネスや業務の理解)」(98件)と続く。

また「分析用データはどう準備するのが望ましい?」という問いには、全体の8割近くが「セルフサービスBIと同じ感覚で、データも自分で簡単に準備したい」と回答している。

企業に求められる新たなデータ・マネジメント・フレームワーク

多種多様かつ膨大なデータを有する企業では、これらデータの源泉をデータ連携(ETL/EAI)ツールで”つなぎ”、データウェアハウスやデータレイクに”貯め”、必要に応じてデータ・プレパレーションでの”準備”やディシジョン・オートメーションによる”判断”を実施。そしてエンタープライズBIやセルフサービスBI、フィードバック先で”活かす”というデータ・マネジメント・フレームワークが今後求められるという。

「データ・プレパレーションとは、企業内外に存在する多様なデータを、IT部門だけでなくユーザー部門自らが加工し、消費可能な情報に変えることです。これまではデータの準備に多くの手間と時間が必要でしたが、データ・プレパレーション・プラットフォームを使えば、分析に必要なデータを素早く準備することができます」と花井氏は話す。

これからの企業に求められるデータ・マネジメント・フレームワーク

ここで花井氏は、データ・プレパレーションの有効性を示すべく、同社の「Paxata」によるデモンストレーションを実施。デモシナリオとして用意されたのは、マーケティング部門の担当者が「Paxata」を使い、企業のデータライブラリにある購買履歴トランザクションと会員情報、そしてオープンデータの人口統計情報を”現場で使える情報”に統合。それをセルフサービス型のデータ分析プラットフォーム「Qlik Sense」で可視化するというシチュエーションだ。

花井氏は、「Paxata」のハイライトやフィルタリング、ピボット処理など各種機能で手早くデータを最適な形に整形・統合。僅かな時間のうちに、「Qlik Sense」でエリアごとの人口と売上の関係性をグラフィカルに示して見せた。

デモンストレーションの様子。「Paxata」では、データごとに異なるカテゴリ分類や表記方法も簡単に統一できる

「Qlik Sense」でエリアごとの人口と売上の関係性をグラフィカルに表示

さまざまな業種で新たな価値を創造するデータ・プレパレーション

データ・プレパレーションは、さまざまな業種で新たな価値を創造できる。例えばエンタテインメント関連では、新旧入り混じるプラットフォームのデータをユーザー部門がコーディングなしで加工。オムニチャネルにおけるカスタマージャーニーの可視化に効果を発揮する。

また、ネットショッピングではWebオーダーと委託先の出荷データを統合し、顧客へのデリバリータイム分析に活用が可能だ。小売・流通においては、複数システムの従業員データを統合することで顧客対応品質が分かり、サービスレベルの向上を図ることができる。

デジタル時代に求められるITフレームワーク

花井氏は、現在の日本企業では、ユーザー部門におけるExcelを使った目視・手作業でのデータ加工、IT部門の負担となるワンタイム分析のためのデータ加工依頼、機械学習のための良質なインプットデータ作成という、データ準備に関する3つの大きな課題があると説明。これらを解決するのが、「Paxata」などを活用したデータ・プレパレーションだという。

「コーディングスキルが要らず、すべてデータを高速に処理でき、なおかつセルフサービスとガバナンスの両立が可能な『Paxata』は、これまでExcelに依存してきたユーザー部門でも簡単かつスピーディーにデータ加工が行えます。また、多様化するフロントエンドのツールに対応できる基盤としても、今後より重要な役割を担っていくはずです」と語り、セッションを締めくくった。