こんにちは。織田隼人です。

前回は「他人を動かす」をテーマに、男女の違いに基づいたビジネス上の会話術について解説しました。会話の技術を高めるためには経験も大切な一要素ですから、前回の内容を頭に入れた上で、どんどん実践で使ってみてください。

さっさと決めたほうが傷は浅くてすむ!?

さて、今回はこのコラムに残されたもうひとつのテーマ、「決める技術」について解説します。男女の違いに関係なく、仕事をしている以上、「決断」をしなければいけない場面は多いはずです。世の中に「決断」についてのハウツー本が多く出回っているのも、的確な決断をできるようになれば仕事の効率や成功率がぐっとアップするからです。

もちろん、「決断」というものは、常に社運を左右するようなものばかりではありません。中には「プレゼンに使う資料のフォントは何にしよう」というレベルの、たわいもない決断もあるでしょう。しかし、こういった小さな決断にもちゃんとノウハウはあるのです。今回は、そういった一見「ささいな」決断のために大切な考え方のプロセスについて紹介したいと思います。

「悩むこと」と「考えること」を区別しよう

あなたは取引先に向かっている途中、分岐点に出くわしました。どちらかの道が目的地に通じているらしいのですが、どちらが正解なのかについての手がかりはありません。時間にはまだ余裕があるから、じっくり考えることができる……。

このようなケースに遭遇したとき、あなたはどうしますか?

時間に余裕があるのですから、たとえ間違えたとしてもいったん引き返して別の道を選べる状況です。しかし、できるならそのような二度手間は避けたいと思うのではないでしょうか? とはいっても、満足な手がかりもないし、どちらの道も正解に見えてくる。悩ましいところです。

こう考えた人は、決断が苦手なタイプです。より具体的に言うと、決断をするにあたって「考える」時間と「悩む」時間を区別できていないために時間を浪費してしまう人です。

上記のような思考は、考えているのではなく悩んでいるにすぎません。「悩む」とは「結論を出せなくて困ったり苦しんだりすること」という意味です。逆に、しっかりと「考えて」いる人は、悩む時間をばっさりと切り捨てて、「結論を出すために情報収集をする」ことができます。上のケースで言えば、「携帯にGPS機能があったか調べてみる」「周辺の地理に詳しそうな人間を探してみる」という思考に移れる人間です。このケースでは、自分一人ではどちらの道が正しいのかまったくわからないのですから、悩んだところで結論は出ません。すなわち、決断にはつながらないのです。

決断をする際には、現在自分が悩んでいるのか考えているのか、常に意識して思考をすることをお勧めします。「自分は結論の出しようがない事柄に対して思考と時間というリソースを浪費していないだろうか」という疑問を持ち続けることによって、仕事の効率は大幅にアップします。

すばい決断のための3つの方法

では、先に挙げたケースで「決断」をするにはどうすればいいのでしょうか。どちらを選んでも支障がないような選択肢が発生した場合、悩むのではなく、下記のような方法でさっさと決めてしまうことが重要です。

  1. 完全にランダムで決める
  2. 直感で決めてみる
  3. ルールを作り、それに則って決める

先の事例に則して言えば、1は「ペンを倒して、倒れた方の道に行ってみる」、2は「なんとなくオフィスが多そうな方の道を選ぶ」、3は「このようなケースに遭遇したら、必ず左側を選ぶと決めておく」といったところでしょうか。手間をかけるような大した問題ではない場合には、これらの方法が効果的です。

もちろん、それぞれの方法にリスクがあることは折り込んでおきましょう。ランダムにせよ直感にせよルールにせよ、決断を誤る可能性は小さくありません。しかし、重要度の低い決断のためにあれこれと「悩んで」しまい、本当に大切な決断のための時間を奪われてしまっては本末転倒です。仮に決断を誤ったとしても、あれこれ悩んでいたはずの時間を使ってやり直せばいいのです。

資料を作る仕事をしていると、なんとなく「将来的に項目を書き換えて使うかもしれない表」が登場することがあります。これを前にしたとき、「将来使うとしたら項目を書き換え可能にしておいた方がいいけれど、そうすると少し手間だしなあ」と「悩む」ことをやめてみましょう。未来のことは予測不可能であり、悩んでも結論が出ない問題だからです。悩んでいる時間があれば、当座の資料を完成させたあとに、「よく使う表」としてもう1回表を作成し、保存しておくことができます。

「悩むこと」と「考えること」 - この2つをしっかりと区別して、仕事に余裕を持たせてみてはいかがでしょうか。

もちろんたとえ結果的にうまくいかなかったとしても、きちんと決断した上でのことであれば、反省点としてその後の行動に活かすことができる。「様子見」と称してぐずぐずと決断を先送りするような上司の下で働かされる部下はかなりツラい…

(イラスト ナバタメ・カズタカ)

執筆者プロフィール

織田隼人 (ODA Hayato)

心理コーディネーター&経営コンサルタント。心理についての解説の仕事をメインにしながら、経営のコンサルティング業務も行っている。元々は経営コンサルがメインで、マーケティングに関わりながら心理学を学んできた。心理の仕事では特に「男女の心理の違い」や「意思決定」を専門としている。男女の心理の違いを解説したブログに「男心と女心」があり、月間アクセス数は100万を超える。ほかにも心理学を学べるWebラジオやアニメーションも配信している。Webサイトはこちら → 知りたい! 相手の気持ち