24時間・365日にわたって災害や通信障害情報を届ける一方で、携帯電話の新機種発表に合わせ、Webサイトを大胆に刷新する通信キャリアの公式ホームページ。前回に引き続き、20周年を迎えたNTTドコモ コーポレートサイトの裏側を同社マーケティング部 山川 聡氏と藤原 直人氏に訊いた。2回目となる今回は災害などの際の情報発信についてレポートする。
緊急告知はリモートで自宅からも対応
通信障害が起こった場合や、大規模災害があった時にはキャリアサイトに告知情報が表示される。7月中旬、九州地方を襲った豪雨の際にも、災害用伝言板や災害用音声お届けサービスの案内がコーポレートサイトのトップに掲載された。
このような更新は、どのように行われているのだろうか。深夜時間帯に災害や障害が発生した場合でも即座に更新されるが、サイト管理のチームが3交代で詰めているというのは、企業のコーポレートサイトとしては、あまり現実的ではないだろう。実際の運用を訊くと、NTTドコモの場合には山川氏や藤原氏を始めとするマーケティング部のメンバーが対応しているとのことだった。
「トップページの一部など、緊急告知を行う時に変更したい部分だけを切り離した作りになっています。Webサイトの多くの部分は、協力会社が制作して計画的に公開するのですが、このような緊急告知用の一部だけはリモートで我々が更新できるようになっています」と山川氏。深夜に緊急に対応する必要が生じた場合には、電話で連絡が入り、対応するという。
大規模災害発生時に災害用伝言板サービスが稼働すると、これらのサービスの利用方法といった説明も行うことになる。これについてはトップページへ掲載し、詳細は用意されている既存の案内ページへリンク先を設置することで対応する。一般的な告知も、ある程度文言が決まっているためリモートでの初動対応は十分可能だ。
しかし、技術的に対応可能であることと、実際にそれで十分な対応が続けられることはイコールではないようにも思える。特に2012年は通信障害が多発した時期もあり、対応が大変だったはずだ。
「深夜における対応は大変ですが、東日本大震災を境に意識が少し変わったようにも思います」と山川氏は語る。
東日本大震災で痛感した携帯キャリアの存在意義
災害時における携帯キャリアの動きが目立ったのは、やはり東日本大震災だろう。通話不能地域の告知やサービス復旧への取り組み、移動アンテナ車の配備や充電スポットの設置といった取り組みが行われた。また、音声通話が比較的早い段階で通じにくくなったのに対して、インターネットなどデータアクセスは使い続けられたという事実から、災害時に効果的な携帯電話の使い方を考える契機ともなった。
地震発生直後からある程度落ち着くまでのさまざまな逸話に、携帯電話を使っての通話やメール、インターネット利用というものがよく登場する。本当にギリギリの瞬間までメールのやりとりをしていたという例も多いようだ。それほど、今日本人の生活には携帯電話が密着している。
多くの人が使っていることはわかっていても、人の生死に関わる"物"だという認識まではなかったのかもしれない。それまでにも台風といった災害時には一部で通信不能になることもあったが、極端な荒天時には仕方がないものだと我々ユーザー側の多くも考えていただろう。
しかし東日本大震災の後、さまざまなシーンで携帯電話が取り上げられた。音声通話が通じにくくなったのは確かだが、一方でスマートフォンから利用するTwitterが有効な情報収集手段だったという報告も多くあった。携帯電話のカメラとSNSを利用して、避難所の情報をまとめる取り組みなども行われた。携帯電話が単なる"便利ツール"ではなく、"重要なインフラ"であることが再確認された事例でもあった。
「あれ以来、意識が変わりましたね。ここまで大勢が使っているものは、もっと何か考えなければならないと思うようになりました。会社側も告知を出す速度や内容など、以前よりも充実を図るようになっています。ごく短時間の通信障害でも告知を出すようになり、対応の回数も増えました」と山川氏。
キャリア間での競争で情報が充実
災害用伝言板サービスの提供開始は総務省から伝達され、主要3キャリアが相互に連絡をとって実施するのが通例だという。キャリア同士はビジネス上のライバルではあるが、このような際に協力しあうのは当然であろう。
とはいえ、"より迅速により分かりやすい情報を伝える"というあくまで利用者視点から、お互いに競いあっている部分もある。緊急対応に関してもそうした動きがあるという。
「たとえば、通信障害が出ている地域の告知は、以前は地名をテキスト表示するだけだったのですが、地図で表示するようになりました。他社がやっているからにはうちも、またその逆もとお互いによりよいサービス提供を目指すわけです」と山川氏。
各キャリアの担当者が顔を合わせる機会があると、「そちらが頑張りすぎるから、こっちが大変になった」と冗談交じりに会話することもあるという。ユーザーが想像するよりもサイト運営に関してはキャリア間でのコミュニケーションがあるようだ。キャリア間で競いあうことで、有用な情報がより迅速に、わかりやすい形で提供されるようになるのは、ユーザーにとってもよいことだろう。
「緊急時はもちろん、普段からお客様が必要とする情報を提供するのがキャリアサイトの役割です。上手な発信方法などを考えて行きたいですね」と山川氏は語った。
今回はキャリアからの情報発信を中心に取り上げたが、次回はソーシャルメディアなどを活用した利用者との双方向の繋がりやその課題について取りあげる。
NTTドコモのWeb担当者に訊く
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