IntelのSenior Vice Presidentで、Software and Services GroupのGeneral ManagerであるRenee James氏の基調講演では、ハードウェアとソフトウェアの最適な連携が、新たなユーザー体験を生み、それが新たな市場の拡大へと繋がるとし、開発者がIntelプラットフォームに参入するメリットが語られた。ニューストピックとしては、MeeGo搭載の最新タブレットが公開されたほか、Intel AppUp Centerの一般向け開設が発表された。

IntelのSenior Vice Presidentで、Software and Services GroupのGeneral ManagerであるRenee James氏

James氏の講演は主に、IDFに集まった世界中のモバイルデバイスの開発者に対し、Intel Architecture(IA)をベースとした製品開発の優位性を訴えるものであった。同氏はまず、市場拡大のために開発者に求められるのは、コンピュータの新たなユーザー体験を生み出し、市場に提案して行くことであると話す。同氏は、IAベースの開発が、最良のユーザー体験を生むための選択であるとアピールする。

AppleのApp Storeの成功で、開発者とユーザーとを繋ぐプラットフォームの構築が大きな注目を集めている。既に製品がユーザーに広く浸透し、これからの拡大にも意気込むIAベースのハードウェアを強みに、開発者への施策も強化することで彼らも取り込み、IAの世界に全てを囲い込んでしまいたいというのがIntelの目論見だろう。James氏は、「IAこそが、ここまでの大規模に市場展開できる唯一のプラットフォーム」とし、IAへの参加を終始呼びかけていた。

さて、James氏はまず、IntelがIAの環境強化のために、これまで何をしてきたのか、そして何ができるのかと、その取り組みを紹介した。Intelでは、IAの「Performance」「Visual Computing」「Connevted Devices」の3つのポイントに注力し、投資を行なってきたことを説明。Atomのマルチコアを有効に利用するため、パラレルコンピューティングの企業を買収した例や、Wind River買収で実現したネットワーク高速化のプラットフォームといった例が紹介された。また、先日のMcAfee買収で、この分野で重要視されるセキュリティの要求にも応えられるようになったことが語られた。なお、Intelは、McAfeeとは買収以前から協力関係にあったとし、先行して既にソリューション開発が進んでいることから、「2011年には最高のセキュリティの成果をお見せできる」(James氏)との発表もあった。

「Performance」「Visual Computing」「Connevted Devices」の3つのポイントに注力。企業の買収も含めた投資を行なってきた。IA開発者はこれらの技術を利用できる

Wind Riverの買収で実現したネットワーク高速化のプラットフォーム。パケット処理を並列処理にして高速化している

McAfee買収の成果も近日中に発表されるようだ。McAfeeのチームはIntelではJames氏のチームへと組み込まれている

そしてJames氏は、非常に重要な事柄として、Intelの取り組みは限られた市場だけにフォーカスしているわけではなく、IAベースの様々な機器の市場に向けてアプリケーションの開発ができるよう取り組んでいると説明する。既にIAベースのソフトウェア開発コミュニティが大規模に膨らんでいることをアピールしたほか、IAベースのAtomプロセッサが、小型のハンドヘルドから、ノートPCやタブレット、最近では"スマートTV"にも範囲をひろげるなどしていることから、開発にあたってハードウェアの区別をする必要がなくなっていくとする。また、同社らが推し進めるMeeGoに象徴されるオープンOSコミュニティへのアプローチや、共通のミドルウェア環境、SDKの無償提供などで、開発者はOSの違いに悩むことも少なくなるとしている。

James氏は、IAベースのアプリケーション開発の特徴として、開発や移植の容易さもあわせて強調した。具体的な例として、まずHavokの状況が紹介された。Havokは2007年にIntelに買収された後、製品数が2倍に増加。今では様々なプラットフォームで、同社の物理演算のミドルウェアを利用できるようになっている。現在HavokのチームはAtom向け製品にフォーカスしており、当日は同社最新の物理演算ソリューションのデモンストレーションが披露された後に、それらをAtom向けに最適化したSDKが、AppUp Centerにて無償で提供されることが発表された。続いて、既存のWindows向けゲームソフトを、AppUp Centerで公開するためにMeeGo Netbook向けへと移植した例も紹介された。このゲーム移植の作業は、MeeGoの充実した開発者フォーラムのアドバイスなどもあり、わずか1週間で終了したという。

HavokチームはAtom向け製品にフォーカスしているという。写真のデモは、女性のスカートの布の動きが物理演算処理されたものと、複数の怪物の装備品などの動きを物理演算処理し、かつ処理がマルチスレッドで各CPUスレッドに効率よく振り分けられているというもの。こういった処理をAtom上で実現できるSDKが無償提供される

もともとはWindows向けのサッカーゲームを、AppUp Centerで公開するためにMeeGo搭載Netbook向けへと移植した例。移植作業はわずか1週間で済んだという

こちらは、MeeGoを搭載した"スマートTV"向けに開発されたインタフェースのデモ。UIの開発期間は約6週間だそうで、IAベースの開発の容易さを示すものとされた

出口側となる"市場"の取り組みでも、IAのメリットが語られる。ご存知の通り、アプリケーションのインストール先となるIAベースのハードウェアは様々な市場に向けて数多く登場している。近年盛り上がるタブレット端末では、MeeGo OSを搭載する初のタブレットがドイツでついに製品化されたことが発表され、IAベースのタブレットの市場は今後も拡大するという見込みも語られた。そして、ネットブック用アプリケーションの販売経路として、AppUp Centerの一般公開の開始がアナウンスされた。

ドイツのNeofonie社が市場投入する世界初のMeeGo搭載タブレット「WeTab」

1989年に登場した世界で最初のタブレットも紹介され、現在の最新タブレットが如何に進化したデバイスであるかを強調

基調講演のステージ上には、IAであればハードウェアの区別は無いとして、MeeGoベースの様々なデバイスが紹介されていた

AppUp Centerの取り組みでは、サンフランシスコ市内にAppUp Centerを体験できる実店舗もオープンする。ほか、米BEST BUYなど大手量販店がAppUp Centerが初期導入されたネットブックを販売することや、台湾ASUSがAppUp Centerをカスタマイズしたアプリケーションを搭載するネットブックを今年後半に投入予定であることなどが発表された。さらに、AppUp Centerへの参入を表明しているデベロッパとして、ゲームやビジネス、SNS向けなどのアプリケーションを開発する多数の企業が紹介されたほか、当日は、SEGAがゲームソフトのAppUp Center向け移植に着手していることも発表された。

サンフランシスコ市内にAppUp Centerを体験できる実店舗もオープンする。講演中にテープカットがなされた

店舗内にはAppUp Centerが導入されたネットブックがずらりと並んでおり、使い勝手などを体験できるようになっている

AppUp Centerに参入するパートナー企業は増え続けているという。SEGAもゲームで参入することが発表された