Apps MarketplaceのWebアプリ例

さて、ここからはGoogle Apps Marketplaceで提供されているWebアプリから、何点かピックアップしてご紹介する(サイト開設時点で50社以上のパートナーがいるとのこと)。Google Apps Marketplaceの全体的な雰囲気が掴めるのではないだろうか。

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Zohoのプロジェクト管理ツール

名称 Zoho Projects

Zohoは元々Googleの認証システムに対応していたこともあって、プロジェクト管理に限らずCRMなど多数のWebアプリをGoogle Appsに対応させている。プロジェクト管理ツールである『Zoho Projects』は、カレンダーやドキュメント、表計算などにアクセスするようになっている。Zoho Projectsは「Microsoft Project」からインポートできるなど優秀なプロジェクト管理ツールなので、ぜひとも試したいWebアプリだ。なお、ひとつのプロジェクト限定で無償利用でき、それ以上の場合は月額12ドルの使用料が必要。

オンラインプロジェクト管理「Zoho Project」。日本語ローカライズされている

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ミーティングの日程調整に便利

名称 TimeBridge Meeting Manager

TimeBridge Meeting Manager』は先述のとおり、ミーティング時間の調整アプリになる。複数人の予定を考慮してミーティング日時を調整するというものだ。

ミーティングの調整に便利な「TimeBridge」

最初のひとりが複数のミーティング候補日をリストアップし、参加予定メンバーに対してメールで提案する(外部の人も利用可能)。受信者がTimeBridgeにアクセスして希望日時を登録すると、各自の返答を考慮してミーティング日が決定され、メールで送信される。そしてカレンダー情報としてMicrosoft OutlookやGoogleカレンダー向けのフォーマットでTimeBridgeからダウンロードできる。また、ガジェット機能を提供しており、Googleカレンダーの脇に表示することが可能だ。

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ドキュメント作成と画像編集を連携

名称 Aviary Design Suite (Free)

Aviary Design Suite (Free)』は、Webブラウザ上で画像編集やベクターツールを提供しているサービス。Googleドキュメント内に画像を埋め込むことができる(埋め込み後は元画像に対する編集が反映されないようだ)。

画像の編集や音楽の編集までこなせるWebアプリケーション

このサービスの仕組みを使えば、画像に限らずさまざまなオブジェクトが埋め込めるようになりそうだ。たとえば、Webサイトのサムネイルも容易に登録できるようになるかもしれない。

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ここに紹介したもの以外にも、実に多岐のジャンルに渡るWebアプリが用意されている。マインドマッピング/ ワークフロー管理/ CRM/ アクセス解析(Google Analytics連携)/ ドキュメント管理/ バックアップなど──。また、日本でも知られたサービスのGoogle Apps版、ストレージサービス「Box.net」、タイムトラッキングサービス「FreshBooks」、プレゼンツール「SlideRocket」なども登録されている。今後さらに増えていくだろう。

デベロッパーにとっての可能性

Google Apps Marketplaceには大きく見て3つのメリットがある。

敵が味方になったこと──。たとえば、これまではちょっと便利なカレンダーツールを作ったとしても、常にGoogleカレンダーがライバルになってしまい、シェアを伸ばすことはできなかった。このライバルと伍するには、提供機能を絞りたくても、周辺機能まで実装する必要があったり……。だが、Google Apps Marketplaceで考えれば、主たる機能はGoogleが提供することで、サードパーティはその補助的な機能の提供に専念できる、ということになる。利用者にとっても、Google Appsに感じていた"ちょっとした物足りなさ感"を埋めるのに、サードパーティ製Webアプリはきっと役立つはずだ。

専門的な機能を調達しやすい──。既存のグループウェアや社内ポータルなどでは、ひとつのソフトウェアですべての機能を提供する傾向がある。このケースでは、主機能は使えるものの、それ以外の機能は専門的なWebアプリに劣る……という話も少なくない。Google Apps Marketplaceの場合、Google自身がすべての機能を提供するのではなく、多くのサードパーティから多数のWebアプリが提供される。CRMや会計システム、プロジェクト管理など、専門化され、高い操作性と高度な機能を持ったWebアプリたちだ。専門的な機能をGoogle Apps内ですぐに調達できる点は大きなメリットになるだろう。

B2Bのアプリケーションマーケットである──。これはもっとも重要なポイントだ。Webアプリを提供する上で、コンシューマが相手では課金することは非常に難しい。しかし、企業に対する課金であれば、提供Webアプリが企業のコストメリットに見合うものであれば購入されやすい。実際、Google Apps Marketplaceの登録Webアプリの多くが、月額または年額課金の形態をとっている。これは自社サービスを収益化する中で見逃せないメリットになるだろう。

「Google Apps Marketplace」の魅力とは?

現状のGoogle Apps MarketplaceのUI自体は、海外製Webアプリが多いこともあり、日本のユーザにとっては必ずしも使い勝手はいいとは言えない。その点は今後改善されていくだろう。個々のWebアプリについては、日本のASP(今風に言えばSaaS)事業者の参入が増え、ビジネスチャンスを見いだしていく展開が理想的だ。そうすれば利用者にとっては選択肢が広がり、Google Appsの標準アプリ(メール/ ドキュメント/ カレンダー/ サイト/ トーク)だけでなく、サードパーティ製Webアプリの利用促進につながるだろう。

Webアプリの導入しやすさという点では、インストール時に管理者権限が必要なくらいで作業自体はとても簡単だ。導入から利用開始まで短時間で済む。Webアプリごとのユーザ登録や共有設定、課金の設定……などの手間はまったくかからない。その機能を必要としているユーザが自身で選定し、必要なものだけをすぐに使える──それがGoogle Apps Marketplaceの魅力と言える。

著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)

1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。