27日に米Appleから「iPad」が発表され世間を賑わせているが、それは何もユーザーに限った話ではなく、同じIT業界の関係各社にもいえる。あるときは最良のパートナーであり、また別のときはいがみ合うライバルという複雑な関係になる米Adobe Systemsもその1つだ。

Adobe Flash Platform Blog

iPadの正式発表直後、Adobeは同社のFlash技術Blogに3つのエントリを掲載し、話題の新製品への感想、そして自社のFlash技術との関係について記している。1つ目が「Building iPad Applications with Flash」で、これはFlash技術を利用したiPadアプリ開発についての解説だ。

同社は昨年10月に米カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されたAdobe MAX 2009で、間もなく登場するFlash Pro CS5の新機能としてActionScriptで作成したアプリケーションのiPhone / iPod touch形式での書き出しサポートを発表しており、iPhoneアプリがすべてそのまま動作するiPadでも流用可能だという。だが、このままでは単純にiPadに搭載された「x2」機能でiPhoneアプリの画面を2倍に拡大しただけで、iPadが本来備えるXGAのスクリーンサイズを活用できていない。そこで、同社Christian Cantrell氏が示している方法でマルチサイズのスクリーンをサポートすることで、同一アプリでのiPhoneとiPadのような異種デバイスに適した画面出力を実現できるようになるという。

iPadのFlashサポート

2つ目がFlashサポートだ。スペシャルイベントでApple CEOのSteve Jobs氏はiPadによる数々のデモを披露したが、その中にはメールに貼付されたPDFファイルの拡大表示や、目玉の新機能「iBooks」でのEPUBサポートなど、Adobe自慢の技術の数々が利用されていた。

その一方でFlash技術には冷たいようで、Mobile Safariを使ったNew York Timesサイトの閲覧デモでは、ページのところどころにリンク切れを起こしている様子が散見できた。これはFlashプラグインを要求するアイコンで、本来そこに表示されるべき動画プレイヤーが表示されていなかったのだ。Jobs氏はiPhone OSへのFlash搭載を頑なに拒否する一方で、動画表示をサポートしたHTML5の導入には熱心だといわれる。

しかし既存サイトではFlash技術を利用した動画配信を行っていることが少なくなく、ユーザーに不便を強いていることは確かだ。「Apple's iPad -- a broken link?」のエントリでは、この件について触れている。