キヤノンからフルサイズ撮像素子を搭載する「EOS 5D」の後継機、「EOS 5D Mark II」が発売された。フルサイズ撮像素子を採用するこの最新モデルが試用できたのでレポートしよう。価格はオープン、実勢価格はボディ単体が約28万円、EF24-105mm F4L IS USMが付属するレンズキットが約37万円となり、前モデルとなる5D登場時(ボディ単体で約40万円)に比べると、大幅に価格が下げられている(本文中も含め、価格は11月末日現在のマイコミジャーナル価格情報の平均価格)。なお、今回の試用したのは量産前のβ機であることをお断りしておく。

ミドルクラス5Dの3年ぶりのモデルチェンジ

キヤノンの一眼レフラインナップは、エントリークラス、ミドルクラス、プロ機の3クラスに分類されている。本物志向の初心者や写真愛好家、ハイアマチュアをターゲットにしたミドルクラスの頂点に今回の「EOS 5D Mark II」(以下、5D Mk2)が位置する。銀塩カメラ時代から中級、上級の写真愛好家からの評価の高かった「5」というナンバーを使用しているのもキヤノンの思い入れの強さなのだろう。

このクラスの他社ライバル機は、ニコン「D700」とソニーの「α900」が挙げられる。価格を比べると、D700が約29万2,000円、α900が約30万8,000円と、5D Mk2は両機種より少しだが安く設定されている。また、フルサイズ普及機としては唯一の2世代目ということで安心感もある。

EOS 5D Mark IIにレンズキットの「EF24-105mm F4L IS USM」を装着した状態

背面。5Dから比べピクチャースタイルボタンやライブビューボタンなどが追加されている

1Ds Mark IIIと同じCMOSセンサー、50Dと同じ画像エンジンを搭載

5D Mk2には、キヤノンのフラッグシップ機「EOS-1Ds Mark III」と同じCMOSセンサーが採用されており、画像エンジンは「EOS 50D」と同じ「DIGIC 4」だ。ISO感度の設定はISO 100~6400で、拡張設定を使用すればISO 50、ISO 25600相当も利用できる。50DはDIGIC 4採用により常用感度を2段向上したとしており、5D Mk2も5Dから比べて2段拡張されている。高感度画質が気になるところだ。

連写機能は、秒3.9コマでJPEG/ラージ・ファインで310枚、RAWで14枚、RAW+JPEGで8枚(UDMA対応CFカード使用時)の連写が可能だ。連写性能では、同じセンサーと「DIGIC 3」を2基搭載しているEOS-1Ds Mark III(最高秒5コマ)よりは若干劣るが、画素数と価格を考えれば妥当な性能といえるだろう。

ファインダー視野率は98%と、5Dの96%から向上した。AFポイントは従来通り菱形の9点で、AIサーボ専用に6点のアシストセンサーも備える。また、レンズごとにピントの位置を微調整する「AFマイクロアジャストメント機能」が搭載されている。

新しい機能としては、50Dにも搭載され、撮影モードの「全自動」をベースにピクチャースタイルやドライブモード、記録画素、背景をぼかす/クッキリさせる、などの項目を設定して自分の好みのモードとする「クリエイティブ全自動」が追加された。また、細かいところだが、バッテリーの残量表示が従来の4段階から「%」表示になった。ただし、それに伴い使用可能なバッテリーが「LP-E6」だけになってしまい、従来のEOSシリーズのバッテリーは使用できなくなったのが残念だ。

さらに、デジタル一眼レフ"初"という称号こそニコン「D90」に譲ってしまったが、35mmフルサイズセンサー搭載機として初めて動画機能を搭載し、フルHDのムービーが撮影できる。オートフォーカスにも対応した。また、動画機能の搭載に伴ってミニHDMI端子も追加されており、動画や静止画をハイビジョンテレビで鑑賞できる。

EOS-1Ds Mark IIIと同じ有効2110万画素35mmフルサイズのCMOSセンサー

記録メディアはコンパクトフラッシュ。バッテリーは新開発の「LP-E6」で、%刻みの残容量と劣化度が確認できる

映像出力端子にはHDMIが追加されている。これも最近のトレンドのひとつ