寺院におけるさまざまな業務課題をITツールで改善しようという試みが広がっている。

6月12日、freeeが開催した「テラテク! お寺のIT活用を一緒に考えませんか?」もその一つだ。宗教法人やお寺、神社に勤める方、寺族の方などを対象にした同イベントには、元エンジニアの浄土宗善立寺 副住職 小路竜嗣氏や、ITベンチャーで開発を行っていた寳林寺 新堂 海野峻宏氏、税理士法人ゆびすいの赤田貴志氏が登壇。寺院におけるITツール導入のメリットや具体的なツール、事例などの紹介が行われた。会場には宗教を問わず寺院関係者が集い、寺院を取り巻く業務課題をITで解決する方法について熱心に耳を傾けていた。

知られざる「寺院における過重労働問題」

長野県塩尻市の浄土宗善立寺で副住職を務める小路竜嗣氏は、もともと一般家庭の生まれ。リコーのメカ系設計エンジニアとして働いた後、善立寺の一人娘であった女性と結婚。それを機に僧としての修行を積み、善立寺の副住職に就任したというユニークな経歴の持ち主だ。2016年からは寺院とIT企業をつなぐコネクター「寺院デジタル化エバンジェリスト」としても活躍している。

浄土宗善立寺 副住職であり、寺院デジタル化エバンジェリストとしても活躍する小路竜嗣氏

そんな小路氏が問題視しているのが、寺院における過重労働の問題だ。

「多くの寺院は1~2名で運営していますが、その仕事は膨大。24時間365日稼働で、はっきりとした休みがない状態です」

特に寺院の負担になっているのが事務仕事だという。書類の作成や申請、郵送、経理などの事務作業のほか、会議や研修などにも時間を割かなければならない。企業であれば経理や総務といった部署が行う仕事も、小規模な寺院では僧侶が全て行っているのが現状である。何と僧侶全体における過労死予備軍の割合は、激務で知られる教師や医師といった職業よりも多いそうだ。

こうした僧侶の労働環境を改善するために小路氏が提唱するのが、お寺(テラ)におけるテクノロジーの活用、すなわち「テラテク」である。

特に小規模な寺院では、法務以外の事務仕事の負担が非常に大きいという